第1期叡王戦決勝三番勝負/第2局「決着戦は必然のドラマ」 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

第1期叡王戦決勝三番勝負/第2局「決着戦は必然のドラマ」

第1期叡王戦公式サイト

本戦トーナメント表


今回は昨日、決着をみました

注目の第1期叡王戦決勝三番勝負

「郷田真隆王将-山崎隆之八段」の第2局を

振り返らせていただきます。。



熱戦



決勝三番勝負/第2局・柔らかいプレビュー



決戦の舞台となりましたのは、京都国立博物館。

だだっ広い空間での対局は集中力を削がれそうですが

タイトルの懸かった大一番ということで、両者の気迫が

見る者の視線をも盤上へと没頭させます。。



2


2手目△3四歩。


上図での持ち駒


▲郷田王将: なし

△山崎八段: なし


先手は郷田王将。

開幕戦を落としカド番で迎えた本局の

初手は角道を開ける▲7六歩から。。


山崎八段も2手目に同じく

△3四歩おt角道を開けて対局はスタート。。



6


6手目△8五歩。


上図での持ち駒


▲郷田王将: なし

△山崎八段: なし


次に両者は息を合わせて

飛車先を決め合い、山崎八段が誘導する形で

「横歩取り」を目指す出だしとなりました。。



15


15手目▲3四飛。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩3

△山崎八段: 歩2


そのまま定跡手順の進行となり

上図15手目に郷田王将が2筋に浮いた飛車で

お隣り3筋の歩をかすめとり、戦型は「横歩取り」。


次に山崎八段は先手の飛車先を角で受け

現代「横歩取り」の基本となる「△3三角戦法」を

まずは採用しました。。



24


24手目△7二銀。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩2

△山崎八段: 歩2


飛車を8四の地点に引いた(18手目)

山崎八段は玉を立ててから、自陣の右側に

「美濃囲い」を築く最新形を投入。。



25


25手目▲3八金。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩2

△山崎八段: 歩2


一方、同じく玉を立てた(23手目▲5八玉)

郷田王将はオーソドックスに「金開き」に構え

最近よくみる流行の模様が描かれて行きます。



28

28手目△2四飛。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩2

△山崎八段: 歩2



△3三銀の上がりを待ってから

飛車をぶつけるパターンも多いですが

山崎八段は上図の局面で早くも飛車を2筋に回し

先手に飛車交換を要求しました。。


次に先手は

▲同飛、あるいは▲3三角成と仕掛ける展開も

十分に考えられますが。。



29


29手目▲2五歩。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 歩2


本局の郷田王将は

直接対峙する飛車の間に歩を打ち込み

このタイミングでの飛車交換を拒否。。


上図から、以下

△8四飛~▲3六歩~△8六歩~▲同歩~△同飛に

▲3五歩~下図36手目△8二飛と進行。。



36


36手目△8二飛。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩2

△山崎八段: 歩2



先手の意向を受け入れ

力戦上等の山崎八段も飛車を自陣に収め

互いに敵の大駒をけん制しながら、しばし

間合いを計り合います。。



47


47手目▲7七桂。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 歩2


再び山崎飛車も戦場に姿を現し

そろそろ開戦の機運が高まった上図から次に。。



48


48手目△6六角成。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 角、歩2


山崎八段は見切り良く角交換を敢行し

開戦の口火切りました。。


61


61手目▲3四角。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 歩3



しかし、郷田王将は後手の攻勢を食い止め

うまく手番を握ると、角を3筋に迫り出し王手。。

すかさず反撃に転じました。。


この手に対して

山崎八段が玉を6筋に逃がすと。。

(62手目△6二玉)



63


63手目▲6一角成。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 金、歩

△山崎八段: 歩3


無頼な剣豪・郷田王将は、ズバッと

角切りの王手で踏み込みます。。


山崎八段が△同銀(64手目)と払って、以下

▲5五金~△5二銀~▲7五歩~△9四歩~

▲7四歩~△同歩~▲7二歩~△同玉をみて

下図73手目▲5四金と進行。。



73


73手目▲5四金。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 角

△山崎八段: 角、歩5


郷田王将は

ひと暴れして後手の陣形を乱してから

金との交換で角を取り返しました。。



80


80手目△7五桂。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 金

△山崎八段: 角、歩5


郷田王将はさらに駒を回転しながら

後手陣で馬を作り、着々と形を作りますが

上図の局面で、ここまで冷静に受けに回った

山崎八段が手持ちの桂馬を投入し、反撃開始。。


上図から、以下

▲8六金~△5五角~▲7六飛に

下図84手目△8八角成。。



84


84手目△8八角成。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 金

△山崎八段: 歩5


山崎八段も機敏に敵陣で馬を作り

均衡を保ったまま終盤戦へと投入します。。



88


88手目△7八馬。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 銀、歩5


混迷と興奮を極めた終盤戦。。

上図で山崎八段は銀を捕獲した馬を

郷田飛車の真下に置いて、餌を撒きました。。


この手は実に悩ましく

▲同飛車で馬を払うと、次の瞬間

△8六飛と走られて後手に金を渡します。。


しかし、8筋の金を逃がすと

直接、山崎飛車の成り込みを許すとともに

△6九銀からの筋がうるさそう。。


どの手を指してもリスクは避けられない

郷田王将は次に飛車を前進(89手目▲7五飛)

桂馬を捕獲して、攻勢に出ました。。



95


95手目▲9六角。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 歩

△山崎八段: 金、銀、歩5


手にした桂馬を8筋に投入して

山崎玉の上部脱出の経路を塞いでから

郷田王将は飛車を引いて後手の馬を払いますが

山崎八段はその間に飛車の成り込みに成功。。


手にした角だけでは全く寄せに入る計算は立たず

郷田王将は角を9筋に投入し、飛車交換に備えます。。


直後に飛車交換が成立。。



105


105手目▲7一銀。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 飛、歩

△山崎八段: 金、歩4


飛車交換成立後

山崎八段は手にした飛車をすぐに7筋へと投入し

先手の角を追い払い、龍を作りました。。


さらに9筋に居を戻した郷田角のこめかみに

銀を打ち込み、動きを封鎖。ジワジワと先手陣への

プレッシャーを強めます。。


いかにも先手玉は危なくみえますが

しかし、郷田王将は銀を打ち込み王手で迫り

受けには回らず、敵将を仕留めにかかりました。。



114


114手目△5一金打。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 桂、歩2

△山崎八段: 銀、歩4


双方、持ち時間を使い果たし秒が読まれる中

ベタ足で泥臭く寄せに入った郷田王将に対して

山崎八段は懸命にしてしなやかな受けで対抗。。


しかし、決定打こそ与えないものの

郷田王将が押し切ったかと、思われましたが。。

本当のドラマは、ここから始まりました。。


上図から、▲同飛成~△同銀~▲4三金に

△6一玉(118手目)をみて、郷田王将は。。



119


119手目▲4五桂。


上図での持ち駒


▲郷田王将: 桂、歩2

△山崎八段: 飛、銀、歩4



右の桂馬を一思いに跳躍。

事実上、「後手玉に詰みなし」を認めました。。


この瞬間、後手玉には「詰めろ」が掛かり

文字通り「詰めれるものなら詰めてみろ」と

郷田王将は首を差し出します。。



叡王戦/第2局の棋譜中継はこちら



【 投了図・126手目△3六銀 】


126


投了図での持ち駒


▲郷田王将: 桂、歩

△山崎八段: 桂、歩4


ここまで先手の猛攻を耐え抜いた

山崎八段がすかさず、8筋に飛車を投入すると

形勢ははっきりと逆転(120手目△8八飛)。。


そのまま厳しく郷田玉を追い込んだ山崎八段が

上図の局面までで、見事勝利をものにしました。


この結果

番勝負を連勝で飾った山崎八段が初代叡王に!



初代叡王誕生!


山崎叡王は来春に開催が予定される

第1期電王戦で将棋ソフトの代表・ponanzaとの

二番勝負に臨みます。。


力戦の英雄がソフト相手にどのような

将棋を披露してくれるのか、実に楽しみであります。




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