第28期竜王戦7番勝負/第4局「渡辺棋王、またも圧勝。。竜王奪還に王手」
初防衛を目指す糸谷哲郎竜王に
渡辺明棋王が挑戦する、第28期竜王戦7番勝負。
ここまで2局を消化し、渡辺棋王が2勝1敗とリード。
今シリーズの流れを決める正念場となった第4局が
昨日より、福島県福島市「吉川屋」にて開幕。。
第4局の先手は、糸谷竜王。
落とすとカド番に立たされる本局の初手は
普段通りに角道を開ける▲7六歩から。。
3手目▲2六歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: なし
△渡辺棋王: なし
番勝負連勝で意気あがる渡辺棋王は
2手目に飛車先を突く△8四歩と返して
対局はスタート。。
早々と居飛車を明示した後手に対して
糸谷竜王は3手目▲2六歩として得意の
「角換わり」を指向しました。。
6手目△9四歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: なし
△渡辺棋王: なし
そのまま定跡手順の進行となり
「角換わり」を目指すものと思われましたが
通常では飛車先を決めることの多い上図の局面で
渡辺棋王が9筋の端歩を突く趣向をみせます。。
この手をみて
糸谷竜王は早くも手を止め長考へ。。
7手目▲5六歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: なし
△渡辺棋王: なし
開始直後の7手目に異例の52分を費やした
糸谷竜王は端歩を受けずに中央5筋の歩を突いて
振り飛車投入を示唆。盤上に風雲急を告げます。。
19手目▲5八飛。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: なし
△渡辺棋王: なし
居玉のまま飛車先を決め
攻撃の銀を早めに繰り出した後手に対して
糸谷竜王は天王山5筋の位を確保してから
飛車に手をかけ、「中飛車」に構えました。
25手目▲5四歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: なし
△渡辺棋王: なし
双方の飛車のポジションが決まったところで
渡辺棋王は手堅く自陣の駒組に取りかかりますが
糸谷竜王は逸る気持ちそのままに、焦点となった
飛車先5筋の歩を突き合わせ、仕掛けを開始。。
しかし。。
【 一日目終了図・41手目▲2八玉 】
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀、歩
渡辺棋王が先手の攻めをいなしつつ
自陣を整え、玉を囲う準備に取り掛かると
糸谷竜王の攻勢はトーンダウンをしいられ
後手に追随する形で玉の囲いを目指す展開に。。
上図の局面で
渡辺棋王の考慮中に終了時刻(18時)を迎えると
そのまま次の手を封じて一日目は終了。。
一夜が明けて
迎えた本日、決着の二日目。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀、歩
一日目午後からの攻防で
玉の囲いで明らかにリードを奪った渡辺棋王は
手の流れそのままに「封じ手」で玉の入城を完了。
棋風通りの手厚い構えから二日目をスタート。。
44手目△7三桂。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀、歩
渡辺棋王の「封じ手」に対し糸谷竜王は
銀を立てて「美濃囲い」としますが(43手目▲3八銀)
3手目に浮いた2筋の歩が不安材料となっており
これで囲いが完成とは言えない悩まし状態に。。
早くも作戦勝ちのムードが漂う
渡辺棋王は気持ちよく右の桂馬を跳躍させると
次に糸谷竜王の▲6六歩(45手目)をみて。。
46手目△5四歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀
飛車先でむき出しになっていた
金の頭上に歩をあてがいキズを消しました。
駒組に苦しむ糸谷竜王を尻目に
渡辺棋王は自然な指し手の積み重ねで
ジワジワと先手陣に圧力を加えていきます。。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀
2六歩を活かすために
糸谷竜王は1筋の端歩を突いて(47手目)
「銀冠」への組み換えを狙います。
すると、このタイミングで
渡辺棋王は6筋の歩を突き合わせ
いよいよ仕掛けに入りました。。
ここで▲同歩~△同桂では
味もへったくれもない糸谷竜王は。。
49手目▲7五歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 銀、歩
△渡辺棋王: 銀
お隣り7筋の歩を突き合わせ
攻め合いに活路を求めました。。
渡辺棋王は飛車を浮かせて
この歩を受けて(50手目△8四歩)、以下
▲6九飛~△7五歩~▲6五歩~△6七歩に
下図55手目▲6二銀と進行。。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩2
△渡辺棋王: 銀
「中飛車」を6筋に合わせた
糸谷竜王は手持ちの銀を後手陣に打ち込み
金・桂両取りを仕掛けます。。
これは駒取るための一手で継続手が試される
苦しい展開となったように感じられますが。。
渡辺棋王がスッと金を寄せると(56手目△6三金)
糸谷竜王は銀との交換で桂馬を手にしました。。
59手目▲2五桂。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩2
△渡辺棋王: 銀2
糸谷竜王は手にした桂馬をすぐに
2筋の歩の上に投入して今度は角を狙います。。
60手目△8六歩。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩2
△渡辺棋王: 銀2
しかし渡辺棋王は
「形勢に確信あり」と言わんばかりに
角を逃げずに飛車先8筋の歩を突き合わせ
カウンターを狙います。。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 角、歩2
△渡辺棋王: 銀2、桂
それでも糸谷竜王は桂馬で角を強襲。。
渡辺棋王が銀で角を払った上図の局面で
午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
糸谷竜王: カツカレー
渡辺棋王: 天ぷらそば
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩2
△渡辺棋王: 銀2、桂
午後の対局開始の一手で
糸谷竜王は手にしたばかりの角を投入し
離れ駒となっている後手の金に当てました。。
この手に対して
渡辺棋王は飛車を一段下げ(64手目△8三飛)
冷静に先手に付き合い、切らしに行きます。。
67手目▲4四角。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩4
△渡辺棋王: 銀2、桂
渡辺棋王の掌で
ただもがいているような閉塞感を打破すべく
糸谷竜王は生角を迫り出し二枚の角をラインに重ね
4筋からの捌きに勝負をかけました。。
しかし。。
68手目△4二銀打。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩4
△渡辺棋王: 銀、桂
渡辺棋王は角を取り込まずに
手持ちの銀を自陣に打ち込む鉄板の受け。
先手の言い分には一切耳を貸さずに
ひたすら完封勝利を目指します。。
71手目▲5四飛。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 歩5
△渡辺棋王: 銀、桂、歩
「このままジリ貧は御免」と
糸谷竜王は飛車も突進させて強引に捌きを求め
力づくで終盤戦突入をけしかけました。。
渡辺棋王は次に11分の考慮で
金で角を払うと(72手目△6二金)、以下
▲同角成~△4五角~▲5七飛~△7七「と」金に
▲同桂~下図78手目△8八飛成と進行。。
78手目△8八飛成。
上図での持ち駒
▲糸谷竜王: 金、歩6
△渡辺棋王: 銀、桂、歩
渡辺棋王は鮮やかに攻守を入れ替えると
飛車を豪快に成り込み、勝負を決めました。。
【 投了図・98手目▲8九飛 】
投了図での持ち駒
▲糸谷竜王: 飛、金、銀、歩6
△渡辺棋王: 歩
手厚い受けから一変
最終盤は自慢の豪腕が唸りを上げて
ド迫力の寄せに入った渡辺棋王の前に
上図の局面をみて糸谷竜王、無念の投了。。
攻守ともに圧倒的な実力をみせつけ
問答無用の完勝で怒涛の3連勝を飾った
渡辺棋王が虎の子のタイトル・竜王奪還へ
颯爽と王手をかけました。。
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昨日の将棋界の動き