宝刀とともに散る。。第56期王位戦7番勝負/第4局「羽生王位圧勝、防衛に王手」
5連覇を目指す羽生善治王位に
広瀬章人八段が挑戦する、第56期王位戦7番勝負。
ここまで3局を消化し、羽生王位が2勝1敗とリード。
後半戦に突入した番勝負の踏ん張りどころ第4局が
昨日より、福岡県福岡市「ホテル日航福岡」にて開幕。
第4局の先手は
ここにきて公式戦連敗中の羽生王位。
その初手は飛車先を突く▲2六歩から。。
第3局を制して意気あがる
広瀬八段は2手目に角道を開く△3四歩と返して
対局はスタートとなりました。。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
羽生王位も3手目に角道を開くと(▲7六歩)
広瀬八段は次の上図4手目に自ら角道を止め
「振り飛車」投入を示唆。。
10手目△4二飛。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
角の底に銀を配置した(8手目△3二銀)
広瀬八段は上図10手目に飛車に手をかけ
4筋へと振り、「ノーマル四間飛車」に構えました。
16手目△8二玉。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
飛車のポジションが決まったところで
両者は息を合わせて盤面向かって左側へと
玉を寄せていき囲いを目指します。。
羽生王位は上図から次に
角を7七の地点にどかして(17手目)
玉をさらに深く囲う準備の一手に費やします。
ここで手番となった
広瀬八段が9筋の香車を一段上げれば
23歳でタイトル奪取の原動力となった伝家の宝刀
「振り飛車穴熊」が久しぶりに明示されますが。。
18手目△4三銀。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
広瀬八段は一思いに形を決めずに
まずは左の銀を三段目に繰り出しました。。
上図から、以下
▲8八玉~△5四銀~▲6六銀~△6四歩に
下図23手目▲5八金右と進行。。
23手目▲5八金右。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
広瀬八段はそのまま銀を中央5筋に繰り出し
攻守を目を光らせる「腰掛銀」に構えました。
羽生王位も後手の動きに呼応して
玉を8八の地点に留めたまま右の銀を戦場へと
送り出してから、離れ駒の金を5筋に繰り上げました。
この手をみて広瀬八段は、次に。。
24手目△9二香。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
9筋の香車を繰り上げ
ついに、タイミングで「穴熊」を明示しました。
この手を合図に両者は玉の囲いへ没頭。。
【 一日目終了図・37手目▲7九金 】
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
一日目は上図37手目の局面まで進行。
広瀬八段の長考中に終了時刻の午後6時を迎えると
そのまま次の手を封じる意思を示し、指し掛けに。。
そして迎えた
本日、決着の二日目。。
38手目△5二金。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
広瀬八段の封じ手は△5二金。
飛車の真下に居を構えていた金を5筋に上げて
さらに固く、「穴熊」を囲いに行きます。。
事実上、この一手であった
「封じ手」をみて羽生王位は次に。。。
39手目▲7八金寄。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
6八に居た金を「穴熊」に密着。
ガチン!という音が聞こえてきそうな手堅い一手で
見るからに強固な「穴熊」が完成しました。。
43手目▲1六歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
一足お先に固くて遠い囲いを完成した
羽生王位は飛車を中央5筋に合わせると
1筋の端歩を突いて、場合によっての端攻めへ
先手を打ちます。。
逆に囲いで一歩遅れた
広瀬八段は当然、1筋を受けている暇はないと。。
44手目△3五歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△広瀬八段: なし
15分の考慮の後
3筋の歩を突き合わせ、仕掛けを開始。。
羽生王位は▲同歩と応じて
以下、△4六歩~▲同歩~△3五銀と進行。。
(48手目)
広瀬八段は攻撃の基本である
銀を勢いよく前へと繰り出しますが。。。
しかし
49手目▲3四歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩
△広瀬八段: 歩
羽生王位はすかさず
広瀬角の頭上を歩で叩いて反撃へ。。
角を渡すわけにはいかない
広瀬八段が2二に地点に角を引くと(50手目)
以下、▲5四歩~△同歩~▲同飛~△6五歩に
▲5五銀~下図56手目△5六歩と進行。。
56手目△5六歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩2
△広瀬八段: 歩
5筋を巡る攻防が激化する中
広瀬八段は先手の飛車先でなく銀の真下へ
歩を垂らして、攻撃の味を付けます。。
この局面で
午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー
】
羽生王位: ミックスサンドとオレンジジュース
広瀬八段: オムライス
57手目▲5三歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩2
△広瀬八段: 歩
羽生王位の午後一手は
飛車先に歩をたたきつける自然な一手。。
この手をみて広瀬八段が
飛車を5筋に合わせると(58手目△5一飛)
羽生王位は飛車を縦横無尽に振り回して
3五の地点に浮いた銀を捕獲(65手目▲3五飛)。。
68手目△4三金。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 銀、歩2
△広瀬八段: 歩2
銀損となった広瀬八段は
羽生飛車を引きつけながら飛車先を開き
5五の地点に浮いた先手の銀を狙います。。
次に先手は
▲3五飛と引く手も考えられられましたが。。
69手目▲3三飛成。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 角、銀、歩2
△広瀬八段: 歩2
羽生王位は見切りよく
角との刺し違いで、ズバッと飛車を切りました。
71手目▲4二角。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 銀、歩2
△広瀬八段: 歩2
羽生王位は手にした角を
すかさず後手陣に投入して飛車・金両取り。。
広瀬八段の72手目△4一飛を見て、以下
▲5三角成~△4三金~▲7一馬~△同銀~
▲5三歩~△同金に下図79手目▲4五桂。。
79手目▲4五桂。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 金、銀、歩
△広瀬八段: 飛、角、歩3
機敏に作った馬も捌いて
「広瀬穴熊」の銀のハッチをこじ開けた
羽生王位は右の桂馬を軽やかに跳躍させて
金取りを仕掛けます。。
攻め駒が途切れることなく躍動する
さすがは羽生王位と唸らずにはいられない
スケールの大きな指し回しの前に、形勢の針は
大きく先手へと傾きました。。
【 投了図・83手目▲5二金 】
▲羽生王位: 銀
△広瀬八段: 飛、角、歩3
上図の局面をみて広瀬八段、無念の投了。
両者ともに持ち時間を1時間以上残したまま
終局は午後4時7分という早期決着となりました。
伝家の宝刀を抜いた広瀬八段でしたが
終わってみれば、羽生王位の圧倒的な大局観の前に
玉砕と言っても過言でない厳しい結果に。。
不調説が一気に吹っ飛ぶ完勝を飾った
羽生王位は番勝負の対戦成績を3勝1敗として
タイトル防衛に王手をかけました。。
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王位戦/第4局・一日目。。「振り穴」に思う 。