第86期棋聖戦5番勝負/第4局「終盤戦を振り返ろう」
【 投了図・99手目▲5六同金 】
投了図での持ち駒
▲羽生棋聖: 飛、銀2、桂、歩4
△豊島七段: 金、歩4
昨日行われました
注目の第86期棋聖戦5番勝負/第4局は
上図99手までで、先手・羽生善治棋聖が勝利。
この結果
今シリーズの対戦成績を3勝1敗とした
羽生棋聖が見事、棋聖位8連覇を達成しました。
今回は終盤戦を中心に
第4局の模様を振り返らせていただきます。
第4局の先手は、羽生棋聖。
タイトルに王手をかけて迎えた大一番の
初手は飛車先を突く▲2六歩から。。
4手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島七段: なし
対します
カド番でもう後のない豊島七段も2手目に
同じく飛車先の歩を突いて対局はスタート。。
両者はそのまま飛車先を決め
第4局は「相掛かり」の出だしとなりました。
7手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島七段: なし
そのまま定跡手順の進行となり
「矢倉が続いていたので少し違うことをしようと」思った
羽生棋聖から、飛車先の歩をぶつけます。。
17手目▲3六銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩
△豊島七段: なし
飛車先の歩を切って通りを良くした
羽生棋聖は攻撃の銀をその飛車先から繰り上げて
現代「相掛かり」の主流である、「引き飛車棒銀」を投入。
さらに上図では
銀を3六の地点にポジションをシフトしました。
この手をみて、豊島七段は。。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩
△豊島七段: なし
先手の作戦が明らかになったところで
今度は自らの飛車先で歩をぶつけます。。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩
△豊島七段: 歩
同じく飛車先の歩を切った
豊島七段は飛車を8四の地点に下げて
浮き飛車に構えると、上図で羽生棋聖が角道を
開いた、次の瞬間に。。
26手目△8八角成。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩
△豊島七段: 角、歩
ノータイムで角交換を敢行。
何としてもカド番を凌ぐんだという気迫を
序盤から強く、指し手に投影させます。。
38手目△7五歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩
△豊島七段: 角、歩
角交換成立後
しばし自陣に手を加えて双方、間合いを計ってから
羽生棋聖が▲4七銀と引くより先に6筋の歩突く
「新手」を披露すると(37手目▲6六歩)
豊島七段は血気盛んに
7筋の歩を突き合わせて、先に仕掛けを開始しました。
49手目▲5六歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩
△豊島七段: 歩2
攻撃の銀を戦場に繰り出し
いち早く天王山・5筋の位を張った豊島七段は
手持ちの角を自陣に投入(46手目△8二角)。。
矢継ぎ早に攻撃態勢を整えていきます。。
一方の羽生棋聖は、居玉のままで
5筋に出しゃばり豊島銀に歩を突き立てて
「かかって来いよ」と強気に開戦を促しました。。
50手目▲4六銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩
△豊島七段: 歩3
豊島七段は、ノータイムで
銀を4筋に飛び込ませて、望むところと
いざ、開戦の口火を切りました。。
上図から、以下
▲同銀~△同角~▲5五銀~△2四角に
下図55手目▲2五歩と進行。。
55手目▲2五歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島七段: 銀、歩3
銀交換成立直後に
羽生棋聖は手にした銀で5筋の位を奪還。
さらに豊島角を追い込み、ペースを握ります。。
上図から次に
角を逃がすとしたら3四の地点しかありませんが
豊島七段はそれでは冴えないと角は逃げずに
桂馬でこの歩を払いました(56手目△同桂)。。
この手に対して
羽生棋聖はもちろん飛車を走らせ桂馬をゲット。
開戦と同時に桂損となった豊島七段は次の手で。。
58手目△3一玉。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、桂
△豊島七段: 銀、歩4
ここは桂損は甘んじて享受して
ジッと玉を自陣最下段へと下げて安全を優先。。
この手が有効な手となり、形勢はギリギリのところで
均衡を保ちます。。
65手目▲7五角。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島七段: 銀、歩5
しかし、羽生棋聖は勢いを加速。。
1筋に手にした桂馬を投入し(63手目▲1六桂)
後手の角を執拗に追い払ってから、自らの角を
7筋に投入し、今度は豊島飛車に狙いをつけました。。
71手目▲6二歩成。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島七段: 銀、歩5
流れるように手をつなぐ
羽生棋聖ですが上図で小さな落とし穴が。。。
6筋に歩の叩きを入れるも(69手目▲6三歩)
金を引かれて(70手目△6一金)、響きは薄いと判断。
即座に歩を成り捨て、貴重は一歩を台無しに。。
しかし、ここは△同金が有力に思われましたが
勝利への欲求か、羽生棋聖への畏怖なのか。。
72手目△7七桂。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島七段: 銀2、歩5
手番を握った豊島七段は
桂馬の王手で踏み込み、勝負に出ました。。
羽生棋聖は▲同桂(73手目)と応じて
以下、△6八歩~▲同玉~△6七歩~▲同金左に
△6六歩(78手目)と歩の叩きを連発で入れて
先手陣を乱しにかかると。。
82手目△7五飛。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 桂、歩3
△豊島七段: 角、銀2、歩3
上図の局面で
豊島七段は角との刺し違いで飛車切り。。
自らの構想を全力で盤上に反映させていきます。。
しかし。。
86手目△4九角。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 飛、桂、歩4
△豊島七段: 銀2、歩2
手にした角を金にかけた豊島七段ですが
「これでうまくいくとは思わなかったが、他に手が難しいので
仕方がないと」この局面で思ったと終局後コメント。。
迫力はあったものの、いささか攻めが強引過ぎたか。。
それでも、豊島七段は最後まで羽生玉に迫りますが。。
【 投了図・99手目▲5六同金 】
投了図での持ち駒
▲羽生棋聖: 飛、銀2、桂、歩4
△豊島七段: 金、歩4
追えば追うほど、羽生玉は遠く。。
寄りのなくなった上図の局面をみて、豊島七段
無念の投了となりました。。
終局後、盤上の熱はすぐに平熱へと戻り
羽生棋聖の強さと貪欲さがいつものように余韻として残る
今年の棋聖戦、決着となりました。
□□□
空白の2時間。。その時、何が !?