第3回将棋電王戦/第5局「実験か、確信か。。ponanza優勢」
プロ棋士の代表と将棋ソフトの代表による5対5団体戦
毎週土曜日に行われ好評を博す第3回将棋電王戦。
本日、東京・将棋会館にて今大会最終戦となる
第5局/大将戦「屋敷伸之九段-ponanza」が行われています。
第5局の先手は屋敷九段。
すでに団体戦としては1勝3敗で負け越しが決定していますが
タイトル獲得、順位戦A級を張った実力者が威信をかけて臨む戦い。
その初手は飛車先の歩を突く▲2六歩でした。。
この手に対し
史上最強との呼び声も高いponanzaも2手目に
同じく飛車先の歩を突く△8四歩と返して、対局はスタート。。
4手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: なし
△ponanza: なし
さらに双方、飛車先の歩を突きあって
先日の第72期名人戦/開幕戦でも採用 されたばかりの
「相掛かり」の出だしとなりました。。
しかし
早くも次の5手目に、屋敷九段が動きます。。
5手目▲7六歩。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: なし
△ponanza: なし
「相掛かり」を目指すのであれば
▲7八金として、角頭を守る手が定跡となっている上図の局面で
屋敷九段は敢えて後手の飛車先を受けずに、角道を開きました。。
ここで慌てて△8六歩~▲同歩~△同飛~などと突っ走ると
以下、▲2四歩~△同歩~▲2三歩~で激痛が待っているので
後手・ponanzaも先手に呼応し角道を開けました(6手目△3四歩)。。
9手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: なし
△ponanza: なし
屋敷九段の注文により
「相掛かり」の出だしから「横歩取り」模様へと移行。。
双方、角の横に金を連結させてから
屋敷九段が飛車先を、突き合わせました。。
上図から、以下
△同歩~▲同飛~△8六歩~▲同歩~△同飛~に
下図15手目▲3四飛と定跡手順で進行。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩3
△ponanza: 歩2
互いに飛車先の歩を切ってから
屋敷九段が2筋で浮いていた飛車でお隣り3筋の歩をかすめとり
最終戦の戦型は「横歩取り」となりました。
今大会の「横歩取り」と言えば
第3局「豊島将之七段-YSS」でも採用され、その時は
先手・豊島七段がピンポイントで踏み込み圧勝 。。
プロ棋士側唯一の白星を飾りました。
屋敷九段はその時の結果と自身の研究を踏まえて
対コンピュータには「横歩取り」が有効とみているのでしょうか。。
いかにも用意の作戦がありそうな立ち上がりに。。
17手目▲5八玉。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩3
△ponanza: 歩2
ponanzaが
先手の飛車先を角で受けると(16手目△3三角)
屋敷九段は飛車を引かずに玉を立てる「青野流」を採用。
この辺りはプロの公式戦でもたびたび見かける
現在進行形の定跡手順ですが、次のponanzaの指し手に
将棋界隈にどよめきが起きました。。
18手目△6二玉。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩3
△ponanza: 歩2
ponanzaは
前出の「豊島七段-YSS」でYSSが指し、敗着級の手と話題になった
△6二玉を、形こそ違え同じ「横歩取り」の後手番で再び採用。。
なぜ、コンピュータはこの手に拘るのかは定かではありませんが
こうなると争点はもちろん、屋敷九段がこの手を咎めることが出来るか。
その一点を見据えながら、序盤は進行して行きます。。
上図から、以下
▲3六歩~△7二玉~▲3七桂~と進行。
屋敷九段が右の桂馬を跳躍させて、攻めに援軍を送る準備に入ると
ponanzaは次に△7六飛(22手目)として横歩をかすめとりました。
23手目▲7七角。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩3
△ponanza: 歩3
文字通り「相横歩取り」となると
屋敷九段も後手の飛車先を角で受けました。
このタイミングでの角交換もありそうに見えますが
屋敷九段はまだ早計と判断。。。
ponanzaは次に、じっと飛車を一段下げました。。。
(24手目△7五飛)
28手目△2六歩。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩3
△ponanza: 歩2
互いに飛車が浮き、角がむき出しになっている状態のまま
屋敷九段は9筋の端歩を突き越し、間合いを計ります。
その間に自陣を引き締めたponanzaは
上図の局面でついにがら空きだった2筋に歩を垂らしました。。
しかし、この手を待っていた屋敷九段は
3筋に銀を立てて、自陣を引き締めました(29手目▲3八銀)。
するとponanzaは角道を止め、選択肢を狭めます。。
(30手目△4四歩)
35手目▲7七桂。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩2
△ponanza: 歩2
果たしてどちらが先に仕掛けるのか。。
上図では飛車交換を狙った屋敷九段ですが
ponanzaは応じることなく、次に飛車を1筋へと移動。。
(36手目△1五飛)
屋敷九段が1筋の歩を飛車に突き合わせさらに追うと。。
(37手目▲1六歩)
38手目△3四金。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 歩2
△ponanza: 飛、歩2
ponanzaはこのタイミングで飛車を取り込み
ついに宣戦布告。。
屋敷九段ももちろん飛車を捕獲し(39手目▲1五歩)
以下、△2七歩成~▲同銀~△2九飛~▲3八銀~に
△1九飛成~と進行。ponanzaが仕掛けますが。。。
45手目▲7四歩。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 飛、歩2
△ponanza: 香、歩2
屋敷九段は
ponanzaの玉頭の歩を叩き、すぐさま反撃。。
上図から、△同歩~▲5五角~△8二歩~▲2五桂~と
畳み掛けますが。。
50手目△4九龍。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 飛、歩2
△ponanza: 金、香、歩2
ponanzaは角を逃がすよりも先に
金との交換でズバッと踏み込み龍を切りました。
以下
▲同銀~△2五金~▲6五桂~に△5四金と進行。
ponanzaは交換して手にした金を受け駒に投入。。
59手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 飛2、歩2
△ponanza: 桂、香、歩2
屋敷九段は
足の長い角を1九の地点まで引き戻し前方を睨みますが
(55手目▲1九角)、桂馬をタダで後手に渡す形に。。
ponanzaは手にした桂馬をすぐに活用(58手目△4五桂)。
駒を回転させながら先手陣への圧力を強めていき
大きく形勢を握ったかに思われましたが。。。
60手目△1六香。
上図での持ち駒
▲屋敷九段: 飛2、歩2
△ponanza: 桂、歩2
次に9四歩と取り込めば優勢はゆるぎなさそうな上図の局面で
ponanzaは1筋で歩の裏から香車ロケットを配置し角取りへ。。
いかにもコンピュータらしい複雑で難解な指し手を前に
屋敷九段は夕食休憩に突入しました。。
序盤戦ならともかく
将棋ソフトが終盤戦で意味の無い手を指すとは考え難いですが。。
屋敷九段、握った手番で切り返せるか。。。いよいよ決戦へ