衝撃の一局。。第3回将棋電王戦/第1局「菅井五段-習甦を激指先生と振り返ろう」
まだ、衝撃の余韻が抜けません。。
【 投了図・98手目△6七歩成 】
投了図での持ち駒
▲菅井五段: 飛2、金、歩3
△習甦: 金、歩
プロ棋士と将棋ソフトの代表による5対5団体戦。
第3回将棋電王戦。
先週の土曜日(15日)
有明コロシアムにて行われました開幕戦/第1局
「菅井竜也五段-習甦」は上図98手までで
後手・「習甦」(開発者・竹内章氏)が勝利。。。
結果もさることながら
内容的にも完敗を喫したプロ棋士側にとっては
あまりに厳しい結果となりました。。
3手目▲5六歩。
上図での持ち駒
▲菅井五段: なし
△習甦: なし
先手・菅井五段の初手▲7六歩に対して
「習甦」は居飛車を明示する2手目△8四歩と返して
対局はスタート。。
菅井五段は若手振り飛車党のエース。
その研究には定評がありますが、本局でもさっそく
上図3手目に5筋の歩を突いて得意の「中飛車」を示唆。。。
11手目▲5五歩。
上図での持ち駒
▲菅井五段: なし
△習甦: なし
「習甦」が4手目に角道を開けると
菅井五段は飛車に手をかけ、振られた先はもちろん
中央5筋。得意の「ゴキゲン中飛車」に構えます。
「対抗形」となり
飛車のポジションが決まった両者は玉の囲いを目指つつ
上図11手目の局面で菅井五段は5筋の位を取りました。
この辺りは確立された定跡を踏襲しており
人対人の対局と変わりはありません。。
25手目▲3八銀。
上図での持ち駒
▲菅井五段: なし
△習甦: なし
「習甦」が1筋を突き越さなかったのを見て
菅井五段は端歩を受けてから(23手目△1六歩)
次に「美濃囲い」を完成。
先手「ゴキゲン中飛車」の
ほぼ理想形に駒が組み上がりました。
今回は
激指先生(6段++)の形勢判断と読み筋の一部も
合わせてご紹介させていただきます。
上図の局面では
菅井五段の評価値「+182」となっていますが
形勢判断は互角で実際にはほとんど差のない状況。。
しかし、激先先生は次に△4三銀と読んだ
26手目の局面で「習甦」が△3三角と指すと
激指先生は疑問手と判断して。。。
27手目▲4六歩。
上図での持ち駒
▲菅井五段: なし
△習甦: なし
菅井五段が次に4筋の歩を突くと
評価値は「+331」に跳ね上がり、開始から初めて
先手「先手有利」と形勢判断が傾きました。。
上図から、以下
△4三金~▲7八飛~△7二飛~▲6六歩~△2二玉~
▲5八金左~下図34手目△3二金と進行。。
34手目△3二金。
上図での持ち駒
▲菅井五段: なし
△習甦: なし
位を確保した5筋を中心に
自陣中央部分が盛り上がり活気のある模様を
菅井五段は描きます。
その間、「習甦」はひたすら自陣を整備し
玉をガッチリと囲いました。
この辺りでは
菅井五段が上手く序盤をリードした印象そのままに
上図での激指先生の見解も評価値は「+370」
形勢判断も「先手有利」となっています。
次なる課題は中盤戦。
リードを奪って終盤戦に突入出来るか、否かが
人間側の勝利への鍵でしたが。。。
38手目△4五歩。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 歩
△習甦: なし
その分かれ目となったのが
5筋の歩を突き捨てた(36手目△5四歩~▲同歩)
「習甦」が続けて4筋の歩を突き合わせた上図の局面。。
激指先生は次に▲同銀から
△6六角~▲7七角~△同角成~▲同飛~と
角を捌く進行を読んでいましたが。。
39手目▲4五同歩。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 歩2
△習甦: なし
菅井五段は▲同歩と応じ、この手が「疑問手」に。。
以下、△5四銀~▲5五歩~△同銀~▲同銀~△同角と
中央で銀を捌く展開となり、形勢は「互角」へと後退。。
53手目▲4六飛。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 銀、歩2
△習甦: 銀、歩2
菅井五段の評価値が始めて
マイナスに転じてのは(後手の評価値がプラスに転じた)
飛車が浮いて垂らされた歩を払った上図の局面。
激指先生の読みも▲4六飛でしたが
指された瞬間、「+67」だった評価値は「-144」に。。
以下、△5五銀~▲3六飛~△4二飛~▲5七金~
△5四銀に下図59手目▲4四銀と進行。。
59手目▲4四銀。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 歩2
△習甦: 歩2
飛車が追い詰められた菅井五段が
4筋の歩の足場の上に銀を叩きつけて勝負に出た
上図の局面でついに、形勢判断が「後手有利」に傾きました。
(評価値は「-377」)
ちなみに、激指先生は
▲4四銀に替えて▲5六金、▲4六銀、▲8六角などを
候補手にあげましたが、いずれにしても後手へと傾いた流れを
引き戻すほどの変化はなく、菅井五段も苦しく感じていたはず。。
68手目△6六銀。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 歩
△習甦: 歩2
一方の「習甦」にとっては願ったり叶ったりの展開に。
駒がぶつかってから形勢を握れば、ちょっとやそっとじゃ
緩むことなく、確実に差を広げていきます。。
上金との交換で手にした銀を打ちつけ
角・金両取りを仕掛けた上図の局面での評価値は
「-415」で形勢判断はもちろん、「後手有利」。。。
76手目△4九金。
上図での持ち駒
▲菅井五段: 銀、歩2
△習甦: 歩
菅井五段の必死の頑張りも空しく
上図からいよいよ「習甦」は寄せに入りました。。。
菅井五段の次の手は
もうこれしかない77手目▲4九同銀。
以下、△同歩成~▲同金~△3五銀~に▲5五銀と
菅井五段は意地の一手を放ちますが、「習甦」は構わず
△2六銀~▲同歩に△7九飛。。。
菅井玉を正確無比に追い詰めます。
【 投了図・98手目△6七歩成 】
投了図での持ち駒
▲菅井五段: 飛2、金、歩3
△習甦: 金、歩
上図98手目の局面で菅井五段は投了。
先手玉には△4七桂不成~▲4八玉~△5七金までの
「詰めろ」がかかり、後手玉には迫る有力な手段もなく
残念ながら投了やむなし。。
これで前回大会から
プロ棋士側は1分けをはさんで4連敗。。
残り4戦も極めて厳しい戦いを予想せざるを得ない
辛く厳しい第3回電王戦スタートとなりました。。。