明日より、第71期名人戦7番勝負/第3局開幕。。
森内俊之名人に
羽生善治三冠(棋聖、王位、王座)が挑戦する
第71期名人戦7番勝負。
ここまで2局を消化し
森内名人の2連勝で迎える注目の第3局が
明日より、岩手県宮古市「浄土ヶ浜パークホテル」にて
開幕いたします。。
ここまでの2局の戦型は
いずれも初手▲2六歩から「相掛かり」に。。
【 第1局 】
4手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△森内名人: なし
開幕戦で
先手を得たのは挑戦者・羽生三冠。
2年連続して名人戦の大舞台で
ライバル・森内名人の後塵を拝する屈辱を味わった
羽生三冠にとっては、待望の先手番スタート。
リベンジに向け、幸先良く感じられましたが
初手は何とこの1年指していなかった▲2六歩からという
意外な出だしとなりました。。
こうなると、森内名人も飛車先の歩を突き
先手に追随する形で「相掛かり」へと一直線。
今回のシリーズは、前期の名人戦で一度も勝てなかった
羽生三冠の後手番での対策が大きな鍵を握ると見られており
先手番では普段通り「角かわり」、「矢倉」を主軸に据えると
思われましたが、いきなりの力戦志向。
せっかく得た開幕戦の先手番をアドバンテージとは考えず
ふっと思いついたかのように、危険な橋を渡ろうとするあたりは
羽生三冠らしいと言えなくもないですが。。
しかし相手は
将棋界有数の研究家であり事前準備に余念のない森内名人。
誰もが嫌な予感を、感じなかったと言えば嘘になる
微妙な空気の中、今年の名人戦は動き出しました。。
29手目▲6六角。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△森内名人: 歩
「相掛かり」の最新流行形
「引き飛車棒銀」から▲3六銀に構えた羽生三冠。
用意の作戦は手損を拒み、飛車・角両取りを仕掛けて
後手から角を交換させる「飯島流」▲6六角でした。。
52手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 角、歩
△森内名人: 角
堅く「銀冠」を築き
攻守に万全の構えとなったかに見えた羽生陣営でしたが
「封じ手」でもあった上図52手目△8五歩を皮切りに
桂馬を捌きあってからは森内名人が終始ペースを握ります。
【 投了図・118手目△7五歩 】
投了図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△森内名人: 歩5
最後まで右の銀が活用できず
自ら形勢を損ねた格好となった羽生三冠は
先手を落とし、痛恨の黒星スタート。。
対照的に
手厚く堅実な差し回しで形勢を呼び込むと
つけ入る隙を与えず、正確無比に寄り切った
森内名人の強さが際立つ、開幕戦となりました。
【 第2局 】
4手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲森内名人: なし
△羽生三冠: なし
開幕戦から2週間後に行われた第2局。
先手・森内名人もやはり初手に▲2六歩と突き
開幕戦と全く同じ出だしから「相掛かり」を目指します。
26手目△8八角成。
上図での持ち駒
▲森内名人: 歩
△羽生三冠: 角、歩
やはり開幕戦と同じく
「引き飛車棒銀」から▲3六銀型に構えた
森内名人に対して、羽生三冠は先手に続きすぐに
飛車先の歩を切ると、すかさず角交換を決断。。
後手番ながらも絶対に連敗は避けなければならず
序盤から積極的に動きますが。。。
54手目△6二玉。
上図での持ち駒
▲森内名人: 角、歩
△羽生三冠: 角、歩
それも長くは続かず
羽生三冠は次第に攻め手を失い、「封じ手」でもあった
上図54手目の局面からはパスを繰り返しながら
先手の攻めを待つ苦しい展開を強いられます。。。
【 投了図・109手目▲6九歩 】
投了図での持ち駒
▲森内名人: 角、歩
△羽生三冠: 歩5
専守防衛に徹しざるを得ない羽生三冠に対し
森内名人は慌てず騒がず、じっくりと陣形を整えてから
いざ開戦。。
劣勢を意識する羽生三冠が
我武者羅に攻勢に転じるも、キッチリと受けて立ち
上図109手目の「岩より堅い」金底の歩をみて
羽生三冠は無念の投了。
「鉄板流」の本領発揮で
森内名人は快心の連勝スタートを飾りました。
ということで、羽生三冠が積極的に動いては
森内名人に正確に咎められ、そのまま形勢を持っていかれる
ここ2年の名人戦での負けパターンに今年もハマている印象の
ここまでの流れ。。
第3局の先手は羽生三冠。
ここを落とすと勝ち星なしの3連敗でカド番に立たされる
土俵際の大一番は、果たしてどの戦型でのぞむのか。。
初手から注目であり
3局連続で▲2六歩からということも無いことは無いと
個人的には予想します。
しかし、本命はやはり▲7六歩から。
森内名人の2手目をみて、柔軟に作戦を選びたいところ。
開幕から連勝というこれ以上ない、最高のスタートを切った
森内名人は残りの5戦を2勝3敗でよく、精神的にも大きな余裕を
得たはずで、もし羽生三冠が素直に▲7六歩とすれば
先手に戦型の選択権を与える2手目△8四歩と返すのが有力。。
そうなれば、手に馴染んだ
「矢倉」か「角換わり」へと誘導することが出来ますが。。
羽生三冠の3手目が
▲6八銀から「矢倉」、▲2六歩なら「角換わり」
森内名人は直前の対局で
後手を持ち、初手▲7六歩~△8四歩~▲6八銀~の出だしから
「相矢倉」戦を戦い完勝 をおさめているものの、それでも
名人戦/第3局は「相矢倉」が第一候補となりそうです。。
ただ、羽生三冠は「角換わり」を
後手番の主軸に据えたかったはずですが
背に腹はかえられない第3局で、先手番で投入することも
「矢倉」と同じくらいの確立で考えられます。。
ということで、戦型はこのどちからで
羽生三冠の当日の気分で選ばれる公算が大とみます。。
とにかく、羽生三冠とすれば研究将棋から一刻も早く抜け出し
中盤から激しい攻防に持ち込み、難解でコッテリドロドロの
ねじり合いに持ち込みたいところ。
それは、言い換えれば
事前研究がものを言うような大人しく上品な将棋では
好調を維持する森内名人に分があることに変わりはありません。
森内名人の今期ここまでの成績は
5戦4勝1敗。
羽生三冠の今期ここまでの成績は
3戦全敗。
両者の対戦成績は
ここまで119戦して、羽生三冠の65勝54敗(.546)
この3年の名人戦での対戦成績は
15戦して、森内名人の10勝5敗とダブルスコアに。。
このまま森内名人が押し切ってしまうのか。。
あるいは羽生三冠が意地を見せ、星を一つ返すのか。。
大注目の名人戦/第3局。。いよいよです