第３９期女流名人位戦５番勝負/第５局「里見女流名人、４連覇達成！」
里見香奈女流名人に
上田初美女王が挑戦する、第３９期女流名人位戦５番勝負。
ここまで全て先手が勝利する形で２勝２敗と互角の勝負は
本日、関西将棋会館にて行われた最終戦/第５局に
タイトルの行方がかかります。。
第５局の手番は開幕戦と同じく振り駒に委ねられます。
今回の番勝負は全て先手が勝利をおさめているということで
口にこそ出さずとも、両者ともに先手番を握りたかったところですが。。
４手目△６六歩。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： なし
△上田女王： なし
振り駒の結果
注目の先手となったのは、開幕戦に続き里見女流名人。
このあたりの引きの強さは
「さすが、持ってるな」と思わせるものがあります。。
その里見女流名人は
初手から▲７六歩～△３四歩～▲２六歩～の進行で
早くも居飛車を明示。。
一方、後手となった上田女王ですが
今シリーズは逆境の中でこそ輝きを放ち続けているだけに
まんざら悪い流れとも思えず。
里見女流名人の居飛車指向をみて
上図４手目に自ら角道を止め、こちらは振り飛車を示唆。。
３１手目▲３六歩。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： なし
△上田女王： なし
タイトルのかかった大一番は
里見女流が居飛車、後手・上田女流が「四間飛車」に構える
対抗形となりました。
気合充分、やる気満々の両者の指し手は速く
開始直後から一直線に指し進み、ケレン味なく囲いも完成。
里見女流名人は角を取りこんだ形の「銀冠」。
上田女王はここまでの躍進を支え、タイトル獲得の原動力でもあった
十八番「四間飛車穴熊」を投入し、全てをかけます。
上図３１手目では
居飛車の将棋もすっかり板についてきた里見女流名人が
３筋の歩を突き、攻めの姿勢をみせ後手の駒組みをけん制。。
３７手目▲２四歩。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： なし
△上田女王： なし
上田女王は
「穴熊」に金を一枚だけ連結させ、中央部を厚くします。
一方、里見女流名人は
囲いに取り込んだ角の横にさらに金、銀も密着させ
フルバージョンの「銀冠」を完成してから飛車先の歩を突きあわせ
慎重に仕掛けを開始。。
次の３８手目△同歩から
▲３五歩～△５五歩～▲６五歩～とトントン拍子で歩がぶつかり合い
開戦ムードが高まる中、上田女王の次の手は下図４２手目△５二飛。。
４２手目△５二飛。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： なし
△上田女王： 歩
本局のTwitter解説をつとめた
上田女王の師匠でもある伊藤果七段はこの一手を
「才能を示した一手」と表現。
飛車を一列動かしただけで
争点は中央５筋へと移り、里見角の捌きを阻止しました。
４７手目▲５六銀。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 歩２
△上田女王： 歩２
しかしこの手に、解説に、カチンときたのか
里見女流名人はぶつかり合っていた歩を全て払って
華麗に５筋の位を確保。。
序盤からどちらも一歩も引かない攻防の応酬で
盤上に情熱がほとばしります。。
５２手目△４三銀。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 歩
△上田女王： 歩２
さらに４９手目には
里見女流名人が玉を９筋の香車の上へと移動させ
伝説の「米長玉」をここに再現！
将棋ファンを大いに沸かせると
再び位を巡る駆け引きとなり、上図５２手目に上田女王が
歩を突きつけられた（５１手目▲３五歩）銀を自陣へと引いた局面までで
濃厚だった午前の対局は終了。お昼休憩となりました。。
【 お昼のメニュー 】
里見女流名人： うな丼
上田女王： ざる定食
５５手目▲３四銀。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 歩２
△上田女王： 歩３
午後は里見女流名人の開始の一手、５３手目▲４五銀から
△５五歩～上図▲３五銀と里見女流名人が躊躇なく銀を繰上げ
銀交換を要求。。上田女王もこれに応じて、いきなり激しい幕開けに。
６９手目▲５三歩。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 銀、歩
△上田女王： 銀、歩４
銀交換を合図に
「銀冠」の囲いに参加していた里見女流名人の角と金も躍動。。
上田女王が５筋で作った「と」金をあっという間に消して
自らは５筋で嫌らしく歩の垂らし。
里見女流名人、雰囲気が出てきました。。
上田女王の次の手は、この歩を同飛車と払うことなく
角に移動を勧告する７０手目△４五歩でしたが。。
７１手目▲６四角。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 金、銀、歩
△上田女王： 銀、歩３
里見女流名人は金との交換で、思い切り良く角を切り
大捌きに打って出ました。。
上田女王はこの角を飛車で取って（７２手目△同飛）
以下、▲５二歩成～△５四飛～▲５一「と」金～△５七飛成～
と中央５筋で駒が捌かれ、いよいよ終盤戦に突入。。。
里見女流名人は６一金（７７手目）とし
「と」金とともに、上田穴熊攻略の足場を足場を固めますが。。
７８手目△４四角。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 角、銀、歩
△上田女王： 金、銀、歩３
上田女王は７一の金を守りながら里見陣営を射抜く
見晴らし良好な攻防の角を投入。
しかし、里見女流名人は読み切っていたとばかりに
次の７９手目で堂々、上田穴熊の金を剥がしました。。。
（７９手目▲７一金）
８２手目△６八金。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 角、金、銀、歩
△上田女王： 金、銀、歩３
銀のハッチは開かざるを得なかったものの
手番を握った上田女王は、このタイミングを勝機とみて
果敢に里見玉へと迫ります。。
９２手目△７九銀。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 飛、角、金、銀、歩
△上田女王： 飛、金２、歩３
必死に猛攻を仕掛け続ける上田女王。
しかし、里見女流名人は冷静な受けで決め手を与えません。
上図の局面は
次に△８八金～▲同金～△同銀成までの「詰めろ」ですが
里見女流名人は９３手目▲７七銀受けて「詰めろ」を消します。。
１００手目△７七金。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 飛、角、歩
△上田女王： 金、銀、桂、歩３
なかなか寄りそうで寄らない里見玉。
上田女王はなおも執拗に追い込みをかけますが
上図１００手目からの攻防が勝負の分かれ目に。。。
次に８八の地点に合い駒をしても(例えば▲８八飛）
以下、△同銀成～▲同金～△同玉～▲６七飛～の進行で
受けにならず先手負け。
かといって
▲同銀として金は飛車が利いているので払えず
▲同金と取ってしまっては△８八金の一手詰み。。
ということで
里見女流名人の次の手は▲７九金の一手しかなく
いかにもこの瞬間、先手玉に詰みが発生していそうですが。。。
１１１手目▲６三角。
上図での持ち駒
▲里見女流名人： 飛、銀２、歩
△上田女王： 金２、銀、桂、歩３
しかし、詰まない。
里見女流名人は強靭な足腰で自陣脱出に成功。
間髪居れずに攻守を入れ替え、逆転の攻防の角を投入。。
【 投了図・１３５手目▲７三桂 】
投了図での持ち駒
▲里見女流名人： 金、銀４、歩２
△上田女王： 桂、歩３
最後の最後までスリリングな攻防は続きましたが
上図１３５手目をみて健闘空しく上田女王、無念の投了となりました。
大局観の確かさと脅威の終盤力をみせつけ
里見女流名人、見事４連覇達成。女流四冠を死守しました。
おめでとうございます！
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こちらも一局、目をそらすことなく
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