第53期王位戦7番勝負/第5局「羽生王位、防衛成る」
羽生善治王位に
藤井猛九段が挑戦する第53期王位戦7番勝負。
ここまで4局を消化し羽生王位が3勝1敗とリード。
タイトル防衛に王手がかけられ迎えた注目の第5局が
昨日より、徳島県徳島市「渭水苑」にて開幕。
第5局の先手は羽生王位。
初手から▲7六歩~△3四歩~▲2六歩と進行し
藤井九段の戦型選択の分岐点となる、注目の4手目。。
4手目△4四歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△藤井九段: なし
藤井九段の4手目は
2手目に開けた角道を、自ら閉じる△4四歩。
今期は腹を括って四間飛車一本で勝負を挑む藤井九段。
この瞬間に今シリーズの主戦としてきた
「角交換四間飛車」の可能性が消滅し、換わりに浮上したのは
もちろん、「藤井システム」。。
19手目▲3六歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△藤井九段: なし
その予想通り
藤井九段は6手目に飛車を振り(△4二飛)
居玉のまま駒組みを進める「藤井システム」を発動。
対する羽生王位は居飛車に構え
上図19手目に3筋の歩を突き、急戦を示唆。。
27手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 角
△藤井九段: 歩
羽生王位は角と銀を力強く繰り出し
本局でタイトル防衛を決めてやるという気迫溢れる差し回しをみせ
上図27手目の局面で自ら角交換を敢行。
【 一日目終了図・37手目▲1六角 】
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩3
△藤井九段: 角、歩
一日目は上図37手目まで進行し
藤井九段が次の38手目を封じて終了となりました。
38手目△2五歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩3
△藤井九段: 角、歩
一夜が明け、むかえた本日決着の二日目。
藤井九段の「封じ手」は大方の予想通り
一日目の最後に打ち込まれた、いかにも羽生王位らしい
妖しげな角の自陣側の進路をふさぐ△2五歩。。
43手目▲3三銀成。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩4
△藤井九段: 角、歩
藤井九段の「封じ手」から
▲3八飛~△3七歩~▲同飛~△4六飛~上図▲3三銀成
と直線的な進行をみせ、どちらも引くに引けない戦い模様となりました。
次の44手目
藤井九段は△3三同銀とはせずに、△3六歩。
ひとまず羽生飛車の頭を叩いて、2筋への移動を促します。。
50手目△5六飛。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩6
△藤井九段: 角、銀、歩
さらに44手目の△3六歩は、48手目に「と」金と成り(△3七歩成)
桂跳も呼び込み(49手目▲3七同桂)二つ目の仕事をこなします。
先手陣の駒を動かすと同時に、浮いた飛車の横利きが通り
これにより
投入されてから9六の地点で不気味な沈黙を守る羽生角を
時と場合によって、いつでも払いに行ける状態となりました。
藤井九段は、ここで飛車を5筋へと振り
一歩を手にすると同時に、まさに天王山の攻防手△5五角投入にむけ
攻守に呼吸を整えます。。
この局面では次に▲5四歩が示され
一つ利かしを入れるのではないかとの予想が示されましたが。。
51手目▲2一飛成。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩6
△藤井九段: 角、銀、歩
本局序盤から強い踏み込みをみせ続ける羽生王位は
一気に飛車を突っ走り、勝負を急かします。
52手目△5五角。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩6
△藤井九段: 銀、歩
ならば、と藤井九段は飛車のボディーガードを携えて
3三の銀を守り、3七の桂を睨み、9九角成を狙う
切り札・△5五角を投入。。
上図の局面までで午前の対局は終了。
お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
藤井九段: 冷やしうどん、鯛めし、ホットコーヒー
羽生王位: 花堂弁当
54手目△9九角成。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩5
△藤井九段: 銀、香、歩
午後開始の一手は羽生王位の53手目▲5四歩。
龍を作ってから、手筋の歩のたたきを入れた形となりました。
その手をみて
藤井九段は角が9筋へと飛び込み馬を作り
羽生玉の稼働域は限定され、早くも終盤戦模様に。。
59手目▲6八玉。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、香、歩5
△藤井九段: 歩
まず攻勢に出たのは藤井九段。
54手目▲9九角成から
△8八銀~▲7七香~△同銀~▲9八銀と
持ち駒を使って羽生玉へ必死に食らいつきます。。
しかし、羽生王位はさっと6八玉。
9筋に並ぶ二枚の藤井軍から一つ間を置き
二枚の自軍の金の隙間に身を寄せました。。
この時、藤井九段の持ち駒は歩のみ。
手はつながっていくのか、否か。。。
62手目△1六飛。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 香、桂、歩5
△藤井九段: 角、桂、歩
藤井九段の次の手段は
飛車を切って1筋に構えたままの羽生角をゲット。
昨日、投入された羽生新手▲1六角は
結局一度も動かされることはなく、盤上から姿を消しました。
66手目△5六桂。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 飛、桂、香、歩5
△藤井九段: 歩
藤井九段は手にした角を
すぐさま4六の地点に投入し(64手目)、金で受けさせてから
事前に成銀がゲットした持ち駒の桂馬を投入し王手。。
さらに△5八玉~▲3七角成~と進行し
藤井九段は4八馬までの「詰めろ」まで、羽生玉に迫りますが。。
71手目▲3一飛。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂2、香、歩5
△藤井九段: 桂
ギリギリに見える局面ながら
羽生王位は受けきれると読みきっているかのように
決断良く二枚目の飛車を藤井陣営再下段に打ち込み
こちらも決めにかかります。
83手目▲5三龍。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 銀2、桂2、歩6
△藤井九段; 金、銀、歩
激しい攻防戦となるも
必死に羽生玉へと迫ろうとする藤井九段の攻めを凌ぐ合間に
羽生王位の二枚の龍がシステマティックに、統制のとれた動きで
共鳴し合いながら、藤井玉へと迫ります。
そしてついに
藤井玉をとらえた上図83手目からはもう一直線。。
88手目△7二銀。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 金、銀、桂2、歩6
△藤井九段: 金、銀、歩
必死の攻撃から一転、必死の防戦となった藤井九段は
この土壇場にきて美しい「片美濃囲い」を完成させますが
羽生王位は構わず
上図から▲7二龍~△同金~▲同龍と二枚の龍を連続発射!
金と銀の囲いを木端微塵に吹き飛ばしました。
【 投了図・95手目▲7一銀 】
投了図での持ち駒
▲羽生王位: 金2、銀、桂、歩6
△藤井九段: 飛2、金、銀、歩
丸裸となった藤井玉になす術はなく
上図95手目までで藤井九段、無念の投了。。
序盤から迫力ある差し回しで終始圧倒した
羽生王位の完勝劇となりました。
この結果
今シリーズの対戦成績が羽生王位の4勝1敗となり
見事、羽生王位の王位防衛が決まりました。
羽生王位、おめでとうございます!