今期絶好調、佐藤王将。。第71期A級順位戦/2回戦を振り返ろう
【 投了図・120手目△4六桂 】
上図での持ち駒
▲橋本八段: 銀2、桂、香、歩6
△佐藤王将: 金2
今朝のエントリ- でもご紹介させていただきました通り
昨日行われましたA級順位戦/2回戦の注目カード
「佐藤康光王将-橋本祟載八段」は上図120手目までで
後手・佐藤王将が勝利。
3手目▲6六歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤王将: なし
不惑を迎えた09年度には
まさかのA級陥落 という屈辱を味わった佐藤王将。
しかし
翌年にはB級1組順位戦で1位 となり
わずか一年でA級復帰。
昨シーズンにはタイトル戦で連敗中だった
宿敵・久保利明王将(当時)を圧倒しタイトル奪取 。
4期ぶりにタイトルホルダーへと返り咲きました。
どん底からの驚異的なV字回復
見事な復活劇は、同じく不惑を迎えた団塊ジュニア世代を
強く励まし、刺激すると同時に
「やはり佐藤王将は違う」、「これぞ一流棋士なんだ」
と、一瞬揺らぎかけた自身の存在価値を
自らの実力で再び、いやむしろ以前よりも価値を高めて
証明してみせた佐藤王将。
序盤の斬新な発想、指し手から
伝説の名手・升田幸三実力制第4代名人になぞらえ
「現代の幸三」との呼び声も聞かれる佐藤王将。
今期ここまでの成績、12戦11勝1敗(.917)が示すように
その閃きは冴えわたり、将棋界を席巻中。。
A級順位戦も、6月14日におこなわれた開幕戦で
高橋道雄九段に勝利し、白星スタート。
昨日は
今期よりA級参戦を果たした「大器」橋本八段と対戦。
先手・橋本八段は
初手▲7六歩から△3四歩~▲6六歩と
いったん開いた角道を自ら止め、得意の振り飛車を示唆しました。
すると
4手目△3二飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤王将: なし
次の瞬間
佐藤王将が先に飛車に手をかけ「三間飛車」に。。
本局は「相振り飛車」模様の出だしとなりました。
12手目△9二香。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤王将: なし
佐藤王将が「三間飛車」に構えると
橋本八段は▲7八銀~▲6七銀~▲7七角~▲8八飛(11手目)
と見慣れた手順から飛車を振り「向かい飛車」に。
その間
佐藤王将はひたすら玉を盤面向かった左側へと動かし続け
文字通り一直線に、「穴熊」を目指します。
30手目△2四銀。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△佐藤王将: なし
佐藤王将は
銀のハッチに二枚の金が連結する手厚い「穴熊」に。
橋本八段は
「美濃囲い」を築きつつ、9筋と8筋の歩を突き越し。
両陣営が整備されたところで
まず橋本八段が角道を開けると(29手目)
続けて佐藤王将も角道を開け返し、「角交換に来い」と挑発。。
橋本八段は、その挑発に乗る形で
次の31手目に▲2二角成と飛び込みました。。。
44手目△7八角。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 角、歩
△佐藤王将: なし
橋本八段は飛車先の歩を切る常套手段から
飛車と銀を浮かし(43手目▲5五銀)、攻略の糸口を探りますが
次の瞬間、佐藤王将が広く開いたスペースに角の打ちこみ。。
54手目△2六飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 角、歩3
△佐藤王将: 角、歩
橋本八段は45手目▲6七角と合わせ
佐藤角を消しに行きますが、▲同角成~△同金の進行で
金が離れ駒に。。
佐藤王将は2筋に構える飛車先の歩も切り
一連の折衝を制し主導権を握りました。。
66手目△5二飛。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 角、歩3
△佐藤王将: 角、歩
パワフルな外見とは裏腹に
受け将棋が持ち味の橋本八段は二枚の金・銀を自陣低く構え
徹底抗戦の姿勢を打ち出しますが。。
佐藤王将は、それを良しとせず。
橋本飛車を中央に呼び出すと
自身の飛車も中央に振り、飛車の交換を要求。。
この挑発に、再び橋本八段は応じて
上図から▲同飛成~△同金~▲6一角~と一気に開戦。
激しい攻め合いになりました。
75手目▲9七桂。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、歩4
△佐藤王将: 歩
馬は作ったものの、持ち駒を稼げなかった橋本八段。
佐藤王将は5五の天王山に攻防の角を配置。
歩の盾を乱されている橋本八段は
桂馬をタダでは渡せないと、9筋へと跳躍させ避難。。
相手の挑発を受けて立つ気の強さと
苦しい局面でも腰を落として我慢する辛抱強さ。
橋本八段の棋風であり魅力が垣間見える模様
となりましたが、次に佐藤王将は▲2九飛車成と踏み込み
圧力をより強めます。。
80手目△4五桂。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩4
△佐藤王将: 香、歩
佐藤王将は香車を手にしてから(78手目△9九龍)
昨日の王位戦/第3局 でも見たような気がする桂馬のタダ捨て。
ここから▲同歩~△4六香~
これはつまり、そう、決めに行きます。
92手目△4八金。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 銀、香、歩5
△佐藤王将: 桂
橋本八段も龍を引き粘りますが
調子の良さを感じさせる佐藤王将は踏み込みます。。
99手目▲5八銀。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 香、歩5
△佐藤王将: 桂2
しかし、手が伸びすぎたのか
橋本八段の渾身の受け、95手目▲1八金から
佐藤王将に大きく触れたと思われていた形勢の針が
再び、中央付近へと戻り始めます。。
上図99手目の局面では
佐藤王将の龍と馬をガッチリと押さえ込み
橋本玉の上部脱出の可能性さえみえてきましたが。。
しかし
103手目▲5一龍。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 角、香、歩5
△佐藤王将: 金、桂2
佐藤王将の猛攻を凌ぎきったかに思われた
橋本八段に、疑問手が。。
上図の局面で
いきなり龍を走らせたのが、敗着となった模様。。
112手目△4九銀。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 銀2、香、歩6
△佐藤王将: 金、桂3
橋本八段はさらに8五の地点にいた
桂馬を飛び込ませたものの(107手目▲7三桂不成)
△同金左と払われ、後が続かず。。
以降、ひたすら佐藤王将の猛攻が続きました。
【 投了図・120手目△4六桂 】
上図での持ち駒
▲橋本八段: 銀2、桂、香、歩6
△佐藤王将: 金2
苦しい展開となる中
ひたむきに耐え、難解な終盤で素晴らしい粘りをみせた
橋本八段でしたが、上図120手目まででついに力尽き
無念の投了となりました。。。
最後はヒヤッとしましたが
終わってみれば、序盤の構想で勝り、主導権を得てから
保ち続けたリードがジワジワと利いていた印象の佐藤王将の勝利。
これで順位戦は連勝スタート。
今後の名人挑戦者争いを引っ張っていきそうな予感を
大いに感じさせる佐藤王将から、目が離せそうにありません。
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