第69期名人戦7番勝負/第7局を振り返ろう。。後編
92手目△5二角。
上図での持ち駒
▲森内九段: なし
△羽生名人: 桂、歩
名人戦/第4局での勝利以来
一本の線で絵を描くように、美しさと躍動感に溢れる勝利を
重ね続けた羽生名人が、名人戦/最終局という天下分け目の大一番で
まさかの沈黙。。
先手番を握れなかったこと。。
それに尽きると言われれば、そうなのかも知れませんが
文字通り
森内九段に先手、先手で模様をリードされる苦しい展開が
序盤戦から中盤戦。。そして終盤戦までひたすら続き
それでも
名人死守のため、重心低く
ひたすら受け続けてきた羽生名人ですが
二枚の角は自陣に押し込められ、飛車も詰まれているこの局面。
何を想っていたのでしょうか。。
94手目△3三金。
上図での持ち駒
▲森内九段: 飛
△羽生名人: 桂、歩
飛車を取られた後(93手目▲2五歩)
羽生名人は玉の背後を塞ぐ壁となっていた金を
成銀が待ち構える3三の地点に、グイっと差し出しました。
98手目△3六桂。
上図での持ち駒
▲森内九段: 飛、金
△羽生名人: 銀、歩
金を差し出したかわりに
桂馬で成銀を払った羽生名人。
森内九段はそれをみて何かを感じたのか
玉の頭上に金を載せました。
次の瞬間
羽生名人は二枚目の桂馬を3筋に投入。。
100手目△2七銀。
上図での持ち駒
▲森内九段: 金
△羽生名人: 歩
細い糸を手繰り寄せようとする羽生名人の桂馬投入。。
ひょっとして。。。
そんな淡い期待を打ち消すように
森内九段は桂馬を無視して8二の地点に飛車を投入。
しかし、羽生名人は2七に銀を投入。
まだあきらめてはいないぞと執念を見せ、己を鼓舞し
静かに見守るファンを勇気づけます。
ここからお互いに剣を振り上げ
勝利を目指し、斬り合いとなりますが。。。。
109手目▲5四桂。
上図での持ち駒
▲森内九段: 金
△羽生名人: 歩3
羽生名人は森内玉にすぐには迫れず。
銀を取り、その銀で飛車を追うのが精一杯。。
一方
森内九段は中央5筋に桂馬の重ね打ち。
重厚な構築美は「鉄板流」森内九段の棋風そのものの風格。
116手目△1六銀成。
上図でも持ち駒
▲森内九段: 金2
△羽生名人: 飛、歩3
森内九段の正確な寄せの前に
羽生名人も最善手で応じますが、上図116手目で
かねてからの懸案だった飛車をゲットしたところで
名人位は新たな歴史を刻むべく、指し手が進みます。
委ねられたのは、森内九段。
▲4三金~△2一玉~▲3二金打~△1二玉~▲3三金寄~△同銀
そして
123手目▲同3三金。
上図での持ち駒
▲森内九段: 銀、桂
△羽生名人: 飛、金、歩3
森内九段が銀を払った上図123手目。
羽生名人は1分、考えた後、投了を告げました。
この瞬間
森内九段の4年ぶりとなる名人復位が決まりました。