山のように余った特典券の話でもしますか?

違う、そうじゃない。

 

1つのグループが明確に高らかに終わったのだから、その最後を刻んでおこう、という話だ。

想いを刻みつけておこう、という話だ。

僕は、君たちが、好きだ。そういう話だ。

 

・サンミニ 解散ワンマン・ライブ「Thank You~想いをこめて~」@TSUTAYA O-nest

 

だいたいは叫んでいるか目をひんむいているか、いずれにしろ、ここに誰がどの曲のどのシーンでどうだったと記録するにはあまりに記憶がない。

ただ、目をひんむくにしても、切りかかるように腕を振り下ろしつつ指を突き刺しつつ狂ったように叫んでいるにしても、どちらでもこの上もなく気持ちが良かった、それは確かだった。

 

僕自身の感覚を一般化するつもりは一切ないが、だからここで何かを褒めるにしてもけなすにしても、「僕としては」という枕詞はつくわけだが(しかしこんなことは誰かが何かを語るときに当然にある話で、そんな一つ一つに対してわざわざこんな枕詞を付けてある種の言い訳をする僕自身に嘆息するわけだが)、「僕としては」、最高だった。

死力を尽くして見ても、死力を尽くして叫んでも、死力を尽くして斬りかかっても、なにをしても底抜けに楽しく、幸せだった。

…とこう書いている、ここまで書いてしまっているのは、すでに過去になってしまったこの日についての美化が始まっていることもまた、否定はしないのだが。

 

O-nest。キャパ250と聞いている。

大きな箱ではない。

ただ、最前からまっすぐに手を伸ばして、彼女たちに当たらないくらいの広さはあって、それがありがたかった。

 

入ったら槙田紗子がいた。

諸悪の根源。あなたがいなければここになんかいるはずもなかった。

相変わらずの完敗ぶりである。

 

万が一にも、最後に姿を見せなくて、最後の最後に僕が激怒する、そんな展開にならなくてよかったと思っている。

そんな展開どころか、最後の曲をまたしてもこの人が手掛ける。

あ、責任とってくれるんだ。なにか嬉しかった。

こっちが思う何倍も、きっとさこはサンミニのことを思っていたに違いない。各種媒体で表明するより遥かに、その対象を愛している、そんな人だということはさすがの鈍感な僕でも分かっている。

 

A to Z
Bounce
STYLE
Catch Me
Liquid Love

パノラマワールド
kiss emotion
PINPON
EASY COME, EASY GO
Mystery Angel
Song For You

F.A.M.E
Look at Me
Lil'Love
BAD GAME
Dream


アンコール
Grow into the star
Make a Fire

ダブルアンコール
Make a Fire

 

勝手に拝借している。多少手を入れている。すみません。

公式、およびメンバーがあげるつもりもないようだから、記録の意味でここに残す。

 

声がダイレクトに聞こえる箱だった。ずいぶんタイトなセッティングだった。

箱のせいか、PAのセッティングのせいか、あるいは僕が最前にいたというだけのことか。

綺麗に声を出さなければ全然綺麗に響かなかったし、音を外せば当然、出し方を少々ミスしただけでも、それが呼吸を感じるように感じられた。

何度も言うように、この曲のどこが良かった、なんて覚えていないし言えないのだが。

 

初っ端、A to Zで南彩夏へのささやかなお祝い、サイリウムをピカピカさせた。

祝われたその日に他のメンバーに卒業発表をぶっこまれ、その1年後の誕生日の翌日に所属するユニットが解散。

運命にもてあそばれ続けた、と言ってしまうのはそれはそれで感傷的すぎるのであろうが、どうにせよ、簡単に言えばなかなかに大変、そんな彼女だった。

 

サンミニの魂だった。そう思っている。

サンミニのエースは久松かおり、サンミニの魂は南彩夏。サンミニのプライドと言ってもいい。

歌とダンスをしてなければ死んでしまう人だったし、妥協をしない人だった。直球しか投げられない人だったし、歌とダンスをしていないと甘ったれだった。

そんな南彩夏のお祝い。白いサイリウムの海。まっすぐなあやたんはまっすぐにたちまち涙を浮かべ、1曲目にして泣き出した。

 

パノラマワールドは乙幡杏菜(逢月ひな)、渡邊真由、喜多陽子が参加した。

隣の人は泣いていた。そりゃあそうだろう。思い入れが違う。

僕自身としてはそれほどには感動しない、まあそのくらい、4人の最終形サンミニが体に染み込んでいたのだろう。

あるいは、ここでしみじみ思いにふけるには、全身の神経が張り詰めすぎていた。

その身体に、パノラマワールドは優しすぎた。

たった2年しか見ていない僕に、この曲への思い入れもさほどない。

ただ覚えているのは、南彩夏がこの曲について述べた一言だけだ、それは秘めておくが。

 

おぼつかない踊りを喜多陽子が踊っていた。

1年前は本当にアイドルをやっていたんだな。

アイドルをやっていた、そんな表現が本当に合う人。やっぱりこの人が生きる道はこのステージじゃない。

次の一歩を見るのにずいぶん時間がかかっているが、まだ僕は諦めていない、いや、そんな強い表現ではなく、酒でもかっくらいながら、のんびりと待っている。

 

1音目でソングとわかる。

僕はなんだか反応が鈍かったが、周りの空気が一瞬にして変わったのは感じ取れた。それから僕のギヤが入ったような、ぼんやりした気分。

 

南ちゃんが露払いをするAメロに続いてのサビ。全員だった。

誰も逢月ひなの代わりなどできやしないのだ、それがこのチームの答えなのだ、そう思えた。

もっとも、この体制でこの曲を披露するのがわずか1回なら、この答え以外ないだろう。封じてきた伝説をあえて壊す必要もない。

ソングは逢月ひなという、かつて在籍していたエースの曲なのだ。

 

Look at Meは目をひんむいて南彩夏を見ていた。

南彩夏だけ見ていた。

とても満足した。鑑賞に値するパフォーマンスだった。

それだけでいいだろう、もう。

 

Dream。

みんながみんな泣いていた。歌詞なんて聞き取れやしなかった。

ここで泣かなきゃアイドルじゃないだろう。サンミニがなりたかったのはアイドルでありアーティストである、そのクロスポイントの向こう側だ。そんな二分論に基づいた話はどうでもよいし、そんな穿った見方をしなくてもよいのだが。

 

ひさまつさん、ちゃんと泣けたじゃないの。そんなことを思いながらにやにやしていた。

泣くの苦手、そんなことを言っていたから。

こういうところでちゃんと泣いてみせるのがエースの矜持だ。まあ、狙ったものでもないだろうが。

解散なんて舞台ではちゃんと泣くほうがアイドルはかわいい。

そんなことを思ってみているくらいだから、槙田紗子のラストフライトに比べればだいぶ余裕があったのだろうし、集中力にも欠けていたのだろう。

 

アンコールでは4人、ひととおり語って、泣いて。

細かな内容なんて忘却の彼方だ。

柏元萌華だけ、やたらに声を詰まらせて、言葉がなかなか出てこなかったことを覚えている。

まあ、有沢、柏元、南、3人とも異口同音に、サンミニがすべてだったなんてことを言っていた気がする。

 

久松はきれいにまとめていた気がする。

いや、サンミニに関わったすべての人に礼を述べていたけれど、最初から最後までサンミニを知る唯一のものとしての、偽らざる本心だろう。

彼女は彼女なりにサンミニをもちろん愛していた。たとえ次の道に進むことを積極的に選択したのが彼女であっても、それはサンミニに対し愛想を尽かした、などということとイコールにはならないし、そういうこともないだろう。

ただ、ここで3人と違う視点に立ち、全体を総括できるのもまた、彼女の資質とも立ち位置とも、なにはともあれ必然かなあとも思う。

 

燃やして、もう一度アンコールして、燃やした。

それで燃え尽きた。綺麗に。

ラストなんてものは燃え尽きなければ駄目だ。綺麗に燃え尽きなければ。

それも、燃え尽きようとして燃え尽きるのではなく、自然に湧き上がるように炎が天まで昇り、あとには灰すら残らないように、燃え尽きていなければ。

 

燃えてもなお、涙は出なかった。そんなものなのだろう。

「サイリウム回収してます」

あの引鉄を引いてみた。涙は出なかった。

後にも先にも、あの時くらいのものなのだろう。

ライブ後、後方に行って、彼女を一瞥した。暗がりで表情はよくわからなかった。

 

特典会はいいでしょう、大した話をしていない。

何か話し忘れたこともない。

 

有沢来夢は最年少で、サンミニに惚れこみすぎていた。

短期間できっと得たものは多くて、それで十分だった気がする。

たったの1年足らずだったけれど、それでよかった気がする。

またどこかのグループに入るのだろう。なかなかのジャーニーマンっぷりである。

サンミニのように、彼女が満足できる、充実できる、そんなグループであればと願っている。

 

柏元萌華にはどうにか幸せになってほしい。笑っていてほしい。

どこかその爆発的なダンスが生かせるところに行ってほしい。見つかってほしい。

やっぱり、笑っていてほしい。

南さんと通じるプライド、まじめさを柔らかな笑顔に内包しているのは知っているけれど、それでも笑っていてほしい。

まっすぐでいられるところにいてほしい。

これで終わっちゃ困る。もう一度見たい。

 

南彩夏は血を流したってぶっ倒れたってダンスと歌を辞めるまい。

特典会の最後、「逃げられないよ」というありがたいお言葉を書いていただいた。

僕なんて根無し草、彼女が復帰するときに興味をそそられなければそれでおしまいなのだが、どうにしろ、切れる直線的な踊り、硬質なヴォーカル、まじめすぎる一本気すぎる気性、どこをどうとっても、10年間でもっとも僕に向いた人だ。最高傑作だ。

だからこの世界で生き残ってもらわないと困る。本人にも伝えた。

 

この人で特典会を終えたのは運命のいたずらだろう。

本来はこの人だったのだ。

 

久松かおりは、まず、よく頑張ったねと言いたい。

おおっぴらには本当に弱音を吐かない人だ。

根っから強いのだろうし、明るいのだろうし、太陽の子だ。

だから、よく頑張ったねと言いたい。そしてゆっくり休んでほしい。もちろん、仕事してくれて構わないのだが、仕事をしながら、明日を描きながら、まずはゆっくり、この後の長い人生を歩めるように、ちゃんと必要な休暇を取ってほしい。

 

僕の本来は南彩夏であったろうが、久松かおりを選んだことについて後悔は何もない。

特に気が合うとも思わなかったし、2年間通って、この人を掴んだという気も全くしないが。わからない部分が多分にあった。わからないというのは首をかしげる否定的なわからないではなく、純粋にわからない、知らない、といった、わからないだ。

それでも楽しく過ごさせてもらった。この太陽のじゃじゃ馬アイドルとじゃれあいながら、楽しく過ごさせてもらった。

 

今はただ、幸せを願うのみだ。

この後の活動も気にはなるが、すべて追いかけますと今言い切れるかというと、全くそういう気持でもない。

その時に気をひかれたら行く、それだけだ。

さこに連れられてサンミニッツに通い始め、かわいいという理由だけで彼女を選んだ時のように。

 

死力を尽くして見ても、死力を尽くして叫んでも、死力を尽くして斬りかかっても、なにをしても底抜けに楽しく、幸せだった。

どういう見方を全力でしても、それに耐えうるライブだった。もちろん僕の思い入れあってこそであり、客観的に見てそう、と言い切るつもりも毛頭ない。

だからと言って一生涯のベストライブにこの日を選ぶこともまたないのだが、しかしあのラストフライト同様、別枠で、素晴らしいライブだった、僕にとって宝物のようなライブだった、そう言い切ることはする。

 

そしてこの日をもって、2年間の槙田紗子・外伝も綺麗に終わりを告げたのである。

最後まで貴様はそれなのか。ええ、それです。

そのつもりで見ていたら最後には全員に愛情が湧いてしまった、愚かなヲタクの2年間なのです。

 

さようなら、サンミニ。

プラチナムの里でダンスと歌を追い求めてしまった、狭間でもがき続けた少女たちよ。

4人の今後が明るく照らされんことを。