「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」感想 | 新・狂人ブログ~暁は燃えているか!~

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 半藤一利原作・監修。太平洋戦争開戦の引き金となった真珠湾攻撃の発案者として知られる大日本帝国海軍軍人・山本五十六の実像を、「八日目の蝉」「孤高のメス」成島出監督、役所広司主演で映画化。


 タイトルからして、太平洋戦争の知られざる真実、あるいは軍部内で密かに進められていた極秘作戦等に迫る、ドキュメンタリー色の強い作風かと思いきや、山本提督と周囲の人々の人物像と、その時々の言動にスポットを当てた、むしろヒューマンドラマに近い内容だった。

 1940年の日独伊三国同盟締結直前から、1943年にソロモン諸島ブーゲンビル島で戦死するまでを、主に役所広司氏演じる山本提督と、玉木宏演じる若き新聞記者の視点で描いていく本作。
 国民が日本の無敵無敗を能天気に信じ、ドイツとともにアメリカとの開戦を望む中、一人我が国の将来を憂い、真の国家安泰を目指し奮闘する山本提督と、彼に同調・賛同する者、あるいはは反発する者との人間相関は非常に見応えがあり、また、戦時下の新聞の使命とあり方について苦悩する記者の心境(ナレーション)により、時勢や日本の置かれている状況などを、分かりやすく解説する演出のうまさは、さすが成島監督といったところ。

 小生が特に注目したいのは、作中多く登場する食事のシーン。
 鰯の塩焼きからお茶漬け、水饅頭にぜんざい、はてはマルちゃん正麺エビスビールまで(嘘)とにかくよく食べるのだが、その場面場面の食べ方と、その食べ物に対する対応によって、提督とその周囲の人々の心境を巧みに表現している。
 例えば、ミッドウェー海戦で戦艦を沈められた船長と、向かい合ってお茶漬けを食べるシーン。船長の無念さを慮りつつも、生き残ったからには死んだ者の分まで生きなければならんと促すようにお茶漬けを薦め、船長もそれに応えるように涙ながらかきこむ。
 ヘタにこじゃれたセリフを使うより、二人の胸の内を雄弁に語ってみせる高等技術と言える。

 また、家族とともに食卓を囲む場面。食べ方や姿勢、順番などを厳しく指導しながら、自ら切り分けた煮付けを小皿に取り、子供達に配る姿は、普段の生活そのままが礼儀作法やマナーを身に付ける教育の場であり、同時に一家の長たる自分が常に子達のよい手本であらんとする体現でもある。
 忠孝悌の精神が失われて久しいとされる昨今、こうした行動からも、提督の人となりが垣間見える。思うに山本五十六という御仁は、軍人として非凡であった以上に、いい意味でこの上なく常識人だったのではないだろうか。
 作中、味方部隊が危機に瀕している際でも、提督は焦るどころか吉田栄作氏演じる三宅義勇作戦参謀に、平然と「(将棋を)一局打とう」と誘う。
 一見して、その行動は非常識で無神経に思えるが、実は「今、我々がジダバタしても徒に士気を下げるだけ。それよりも一旦冷静になり、次の一手を考えるか、期が熟すのを待とう」という心理の表れではないかと察する。
 つまり、提督にとって「常在戦場」とは、常に戦場に立っている心構えを持てという以上に、例え戦場であっても己を失わず、平常心を保つ胆力を持つべし、という意味合いが強かったのではないかと邪推するが、いかがだろうか。

 時代の流れに翻弄される事なく常に大局を見つめ、それでいて「人が死ぬのは嫌だ」といったミニマムレベルでの考えができるからこそ、誰よりも戦争に反対したに違いあるまい。
 そんな提督が、仲間を犠牲にしなければならないガダルカナル撤退作戦の発案が、いかに苦渋の決断であったか想像に難くなく、結果的に命を落とす事になるソロモン諸島への視察も、責任感からそうなる覚悟を決めた上での行動ではなかったのかと、勝手に推測してみる。
(もちろん、ただ無駄死にするつもりではなく、自分ができる最大限を成すためにあえて危険を冒して…と考えるのが妥当かと)

 できれば、提督がどこでそれほどの胆力と洞察力を身に付けられたか、そこまで掘り下げていただきたかったが、それをやるとヘタすれば「沈まぬ太陽」「ヘヴンズ・ストーリー」より長編になってしまうので、泣く泣く諦めたのだと思おう。ウン。

 
 思えば中学時代、とある還暦間近の教師から「この男は卑怯にも予告なしに真珠湾を攻撃し、その上日本を敗戦に追い込んだ超極悪人だ!!」と随分偏った授業を受けた記憶がある。
 もっとも、普段から堂々と「左利の人間などというのは、この世に存在しない。もしいたとしたら、そいつは右手がまともに使えない劣等種だ」「教師は学校で一番偉い。だからお前ら生徒は、オレの事を神様と思え」などと平気でのたまう、戦前生まれの時代錯誤もしくはかなりのガイキッチだったので、誰も相手にしていなかったが、後々いろいろな文献を読んだ結果、そのガイキッチが言うほどではないにせよ、「凡人」とする意見と、「名将」とする声の両方両極端ある事を知った。
 本作は、提督のなるべく良い面だけをクローズアップして見せているきらいがあり、歴史に疎い小生には、どちらの見解が真に迫っているかは判りかねるが、少なくとも人を動かし、現場を指揮する者にとって必要な心構え、指針ようなモノが、本作には多分に含まれていると感じた。

 歴史マニアの方々には正直肩透かしな内容かもしれないが、一社会人、特に管理職の方々は必見。
 
 そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、

 ☆☆☆★★++

 ちょっと長かったのがマイナスポイント(笑)、星3つプラスプラス!!



 
 ところで、作中に登場する水饅頭なる食べ物。小生はまったく存じ上げなかったのだが、あれはメジャーなお菓子なのだろうか。
 画面で観る限り、餡子を白玉粉のようなものを練った生地に包み、蒸すか煮た後に冷却。あとは本編どおりに食す…といった感じか?
 うーん、来年の夏にでも試してみようかしら。




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