ここ数日の中では一番寒いけど、それでも震え上がるほどのことはない夜の10時に、帰宅する道すがら月を見た。
昨夜が十五夜だったそうだけれど、激しい雨で見えなかった。今夜の月も丸く明るく中天に懸かって明るく静かだった。
 東北では嵐だというのに。

 その月の下で、車で帰りながら、栃木の事故を思い出した。私も、この車で一瞬居眠りをし、道端の立ち木のゴツンと当たった。
 高い修理代を払ったが、人は傷つかなかった。
 私が人を傷つけなかったのは、ただの偶然に過ぎない。それを思うと、心が凍るような恐怖感がわいてくる。

 自然に対しても、人間が作り出したものに対しても、畏れの気持ちを忘れずに生きたいと、今は強く思う。