芸能界ベースのパラレルものです。
キョコたんのみが特殊設定の若干ミステリー風です。

そして身体の関係から始まってしまう、一目惚れ同士の蓮キョです。
そんなのいや~と言う方はお戻り下さい。

読む方を選ぶお話かも知れません。

特殊設定どんとこい!と言う方のみ、どうぞ。


***


2人はその書類に目を走らせる。

それは、件の児童養護施設のホームページをプリントアウトしたものだった。

「その施設の噂は、20年程前にも芸能プロダクション間で流れたことがあったんだ。見目美しい男女を遺伝子から作り出して、演技者として育て上げる所があると。この業界こそ、美男美女の需要の多い場所だからな。けど、そんな馬鹿げた話を俺が信じるわけがなかろう。ずっと、都市伝説のように扱われてきた話、だったんだが…」
「噂だったけど…実は、本当の話だった…?」

蓮が問うと、宝田は苦虫を噛み潰したかのように顔を顰めて見せた。

「……胸糞悪い話だがな。まだ調査中だが、その児童養護施設が噂の施設で間違いないだろう。一見まともな施設を装っているし、少し探った程度では何もぼろが出てこないんだが、施設の運営団体に寄付を送っている人間のリストを見ると、壮々たる面々なんだ」

言われてページを捲るとそのリストが出てきた。部外秘の判の押されたその書類には政界、財界の人間の名前が羅列されていた。

「全員とはいかなくともその半数は顧客なんだろう。きっと、芸能プロダクションにも顧客はいるだろうよ。ここにくると、馬鹿な噂を全員が全員信じなかったとは思えん。証拠を掴み次第、警察やマスコミにも手を回す。俺の眼前でこんな商売をされていたんだ、施設も顧客も徹底的に叩く」

「…ありがとうございます…社長」

宝田の自信に満ちた請負に、蓮が安堵の溜息を漏らした。

キョーコの言葉に何一つ嘘がなかったことも分かって、安心したのも一因だ。

「よかったね、キョーコちゃん!」

笑顔の社がキョーコを見たが、しかし、そこには複雑そうな顔をした少女がいた。

個性を持つ人間として扱われていなかったと言うのに、彼女は施設のことも顧客のことも、憎む対象とは思えないのだ。

それだけ、彼女の洗脳状態は深いのだろう。

暗澹たる思いで視線を宝田に向けると、彼は頷く。

「あとは彼女のこれからだが…最上君には信頼の置ける精神科医をつけよう。子供の頃からの暗示だから、解くのはすぐには難しいかもしれないが…これは時間を掛けて対応して行く他ない」
「…そうですね」

蓮は沈痛な面持ちでキョーコを見る。


不安げな瞳に見返され、胸に鋭い痛みが走った。


彼女がその呪縛から完全に解き放たれるまでに、一体どれだけの年月が掛かるのだろうか。

彼女は、自分で自分の好きな道を歩くようになれるのだろうか…

施設の所業は、とてもじゃないが許せるものではなかった。


それを考えると怒りが滲んでしまい、


「そこで、だ。その間、最上君には蓮の面倒を見てもらおうと思うんだが」
「はあ・・・・・・て、え!?」

キョーコの将来に思いを馳せていた蓮は、その言葉に頷きかけて…


慌てて宝田の顔を見る。

「今、何て…」

しかし、宝田は蓮に答えず、隣のキョーコへ声を掛ける。

「最上君」
「はっはい」
「この蓮は放っておくと自分の飯も忘れるような人間なんだ。俳優という身体が資本の蓮の仕事上、それを預かっている事務所側としてもこのままにはしておけない。君がよければ、蓮の所に住み込んでこいつの食事係になって貰いたいんだが」
「え…」
「社長!!」

蓮は血相を変えてソファから立ち上がる。

「何を言っているんですか、住み込みって!!」
「社に聞いたぞ、彼女料理が上手なんだってな?しかもお前、彼女の料理なら文句も言わず食うそうじゃないか。最上君をお前の所に預ければ、お前は3食飯を食うようになるし、彼女は住む場所と仕事が手に入るで、いいことばかりじゃないか」

あっさり宝田にそんなことを言われて、蓮は唖然となる。

「何がいいことばかりなんですか!彼女は10代の女の子なんですよ、そんな子を男の俺に預けるなんて…まともな大人の判断じゃありません。彼女には誰か、信頼出来る女性をつけて下さい」
「お前、自分で彼女を拾って来といて放り出すつもりか?天下の『敦賀蓮』が困ってる女の子を相手に随分冷淡じゃないか。無責任だなあ」
「責任があるからこそ言ってるんです!」
「まあまあ、本人にも意見を聞いてみようじゃないか」

宝田は蓮の剣幕もさらりといなし、

「最上君は、どう思う?」

自分と蓮の会話を驚いた顔で眺めているキョーコに向き直った。



≪10に続きます≫


敦賀さん、ピンチ!と言うところで明日に続きます。


ではでは♪