芸能界ベースのパラレルものです。
キョコたんのみが特殊設定の若干ミステリー風です。

そして身体の関係から始まってしまう、一目惚れ同士の蓮キョです。
そんなのいや~と言う方はお戻り下さい。

読む方を選ぶお話かも知れません。

特殊設定どんとこい!と言う方のみ、どうぞ。


***



「君が、無事でよかったよ…」

溜息交じりで言って、やれやれとキョーコを見つめると何故か驚いた顔を向けられてしまう。

「え…、何か俺、おかしなこと言った?」
「いえ、あの…敦賀さんて、本当に親切な方なんですね…こんな、見ず知らずの女を部屋に上げて下さって、心配までして下さるなんて…」

話しているうちに、またも涙が瞳の縁に溜まって来て…弱った蓮は手を伸ばす。

「ほら、また急に泣いて…君の涙の理由は本当に簡単なんだね…」
「ち、違うんです、今日は、か、感情がうまく、抑えられないだけで…」

そう言ってキョーコは強がって見せたが、蓮が伸ばした指先でそっと涙を拭うと、その強気の表情がゆっくりと崩れて行く。

キョーコはなんとか堪えようとするかのように唇を噛んだが…
耐えられえず、涙がぽろぽろと頬に零れて行った。

話を聞いていれば、泣きたくなる気持ちは十分に分かる。
むしろ、情緒が不安定な彼女にとって、素直に泣けると言うことはいいことだと思う。

思わずその肩に手を伸ばしかけて、蓮は慌てて思い留まった。

初対面の少女の身体に男がいきなり触れるだなんて、非常識極まりないことだ。

だけど…

小さな肩を震わせて、泣いている女の子を放ってはおけなかった。
無理をして、嗚咽を堪えようと唇を押さえる仕草が不憫だった。

蓮はキョーコの涙を拭った手をその肩に回して、ゆっくりと自分の胸に彼女の身体を凭れさせる。

その動きにキョーコの瞳が驚いたように見開かれた。

「ごっ、ごめんなさい…わ、私、子供みたい」
「君は今まで大変な目に合ってきたんだ、泣いても当然だよ。恥ずかしがることじゃない」
「っ、は、はい…でも」
「でも?」

顔を覗き見ると、蓮を見上げてくる潤んだ瞳が不安げに揺らぐ。

「わ、私、優しくされることに慣れてないんです…だから、分からなくて…いいんでしょうか、こんな風に敦賀さんに甘えてしまって…こういうのは、ご迷惑では、ないんでしょうか…?」

泣きながらもそんな気を回すキョーコに、溜息を漏らした蓮はその身体をそっと抱き締めた。

「泣いてる女の子は無条件で人に甘えていいんだよ…遠慮なんか、しないの」
「…は、はい…」

こくりと頷いたキョーコは、もう一度、ごめんなさいと小さく呟いてから、そろそろと蓮の胸へ体重を預けてきた。

ぽんぽんと背中を柔らかく叩くと、身体から徐々に緊張が抜けて行って。

気が抜けたのか、大きな瞳から次々と涙があふれて来た。
伏せた目元に影を落とす長い睫毛に涙が絡んで、蓮はその涙も指先でそっと拭い取る。

「大丈夫、大丈夫だよ」

嗚咽の度に、小さな振動が細い身体から伝わってきて…

蓮はそんなキョーコを安心させるように、ゆっくりとその髪を撫でた。
腕の中で、キョーコが長く息を漏らす。

暫くそうしていて、ようやくキョーコに落ち着きが見え始めた…そんな頃。

不意に背後に気配を感じて驚いて振り返ると、リビングの入り口に唖然と自分を見つめる社の姿があったのだ。

社には部屋の鍵を預けてある。
しかし、まさかこのタイミングで現れるとは思っても見なかった。

視線が絡んで、蓮は動揺を隠せない。

「やっ、社さん、あの」

説明を試みたのだが、それよりも早く。

「蓮…様子が変だと思って慌てて来てみれば、お前、何を…!その腕の中の女の子はどうしたんだ、お前、部屋に入る時にマスコミの確認はちゃんとしたんだろうな…!?『敦賀蓮』が深夜に女の子を部屋に連れ込んでる写真なんて押さえられたら、大変なことになるんだぞ!?余りにも身辺がクリーン過ぎて逆にマスコミから狙われてるお前からこんなおいしい話題が出てきたら、あることないことどれだけ書き立てられるか分かったもんじゃないんだぞ…!そういうことは事務所を通じて別に部屋を用意するなりしてからにしなさい、事務所も俺も反対なんてしないんだから!」

一気に捲くし立てられ、蓮は慌ててキョーコの肩から両手を離す。
蓮の胸から顔を上げたキョーコも、びっくりした表情で突然現れた社を見ていた。

「ち、違います、誤解です!彼女はそういうんじゃなくて…いえ、勿論、マスコミの存在は確認しましたけれど!」
「何が違うって言うんだ?と言うか彼女、もしかして未成年なんじゃ?…しかも泣いてるじゃないか…!まさか、別れ話がこじれて俺が呼ばれたのか…?蓮…お前って奴は、誠実そうな顔をしてこんな若い子相手になんてことを!百戦錬磨で遊び慣れてそうに見えるけど、ちゃんと紳士で責任感のある奴だって、俺は信じてたのに…」
「違いますってば!そんな筈ないでしょう、俺と彼女は今日が初対面なんですよ…!!」
「初対面…!ならなおのこと拙いじゃないか…!ま、まさか無理矢理、とか」

顔色を青くされて、その発想から離れて下さい…と、蓮はがっくりと肩を落としてしまう。

深夜、芸能人の部屋でその男の腕の中で若い女の子が泣いていたら、そう勘繰られて取られても仕方がないとは思うのだが…


信頼している社のそんな反応に心にかなりのダメージを受けた蓮は、深々とソファーに身を預けつつ、この場をどう収拾しようかと頭を悩ませていた。



≪5に続きます≫

キョコたんの涙と社さん登場の回。
美花、キョコたんを泣かせたくはないけどキョコたんの涙を書くのは好きと言う、変な趣向があります。
涙の描写とか、やけに力を入れて書いてて趣味趣向がバレバレですね~

同じく社さんを書くのも大好きです。
いいお兄ちゃんな社さんは、素敵な活躍をいつもしてくれる頼もしいお兄ちゃんですね♪

それでは、また!