芸能界ベースのパラレルものです。
キョコたんのみが特殊設定の若干ミステリー風です。

そして身体の関係から始まってしまう、一目惚れ同士の蓮キョです。
そんなのいや~と言う方はお戻り下さい。

読む方を選ぶお話かも知れません。

特殊設定どんとこい!と言う方のみ、どうぞ。


***



『蓮?お前、一体何の話をしてるんだ?え、人身売買?花嫁斡旋?待ってくれ、それって現代日本の話か?海外とか、歴史の教科書の話とかじゃなくて?』
「俺がおかしな話をしてるっていうのは十分自覚してるんです。けど、俺一人じゃ何がなんだか…とりあえず、うちに来てほしいんです。こんな真夜中に、本当に申し訳ないんですが…」

社との意思の疎通の望めない電話での会話を終わらせた蓮は、切った携帯を握り締めたまま、深い溜息を漏らした。

なんとか、社にこれから自分の家まで来てもらえるよう話をつけられた。

蓮だって何がなんだか分からない。が、面倒事を引き入れたことには間違いがなかった。

社に相談して、必要なら事務所に連絡を入れたほうがいいと判断して、真夜中なことを推して社へと連絡を入れたのだ。

頭を振って、蓮は淹れたばかりのコーヒーをカップに注いでからリビングに戻る。

リビングのソファーには、ワンピースの上に蓮の上着を肩に羽織ったままの少女が、綺麗な姿勢で座っていた。

蓮は自分のお人よし加減を呪いたくなった。疲れていて、冷静な判断が出来ていないのだろう。

突然泣き出し、不可解な告白をした少女…彼女が名乗った名前は最上キョーコというものだった…を、1人路上に残して置いておけなくて、蓮は彼女を自分の部屋まで連れて帰って来てしまったのだ。

完全な判断ミスだ。

若い女の子だと言うことも、不審すぎると言うことも、全てがまずい。

「待たせてごめん。コーヒーで大丈夫?あ、ミルクと砂糖、必要かな?」
「いえ、大丈夫です。すいません、お気遣い頂きまして…ありがとうございます」

しっかりとした言葉使いで礼を述べ、綺麗な所作で頭を下げたキョーコに、蓮は複雑な目線を送る。

頭が弱い子にはとても見えない。

やはり、精神的な問題なのだろうか?

でも、そういった子がこれ程常識人の素振りが出来るものなのだろうか。
様子はおかしいが、そういった種類のものではないし…

蓮はもう一度頭を振ると、女性に失礼にならない距離を保ってキョーコの隣に座り、その顔を覗き込んだ。

「ごめん…話が途中だったね…」
「いえ…あの、本当に申し訳ありません…ご親切に甘えて、お家にまで付いて来てしまって…」

深々と頭を下げた少女は蓮を見ながら表情を曇らせる。

「私の話、信じられない内容だって、よく分かってるんです。頭のおかしな女だって思われてるでしょう?急にこんな話をされたら、私だって、そう思います」

申し訳なさそうに言われて、蓮の目が泳ぐ。

正に、その通りなのだ。本人に肯定されると、なんと言っていいのか分からない。

でも…そんな風に物事を客観的に見ている彼女を見ると、自分の観察眼が正しいと思えてくる。
少々浮世離れした感があるが、目の前の少女は一般常識のある、きちんとした女の子だ。

「…正直、君を疑ってる自分がいるんだ…ごめんね。出来れば、信じたいと…思うんだけど」
「まさか、当然だと思います」

キョーコの話は驚くべき内容であった。

彼女は、自分がある施設で遺伝子操作により生み出された『花嫁』というラインの商品なのだと言う。

その施設で育てられ、物心が付く頃から『良家の御曹司の所へ嫁ぎ子供を生む』為に育てられていると教え込まれて来たのだという。
その家の家風に合うようにと礼儀作法を教え込まれ、立ち居振る舞いから学業にまで、完璧を求められて成長してきた。

「その施設では私のように『花嫁』として育てられている女の子が何人もいるんです。私たちは人種や肌や瞳、髪の色、外見を顧客側が望む通りに操作されて生まれてくるんです」

キョーコは沈痛な表情でそんなことを語った。

『花嫁』以外にも顧客のニーズに応えたラインがそれぞれあり、それに相応しい年齢になると顧客へ引き渡されていくのだという。

そして彼女にもその時がやって来た。

17歳を迎えたのを機に、かねてから言い聞かされてきたようにその『良家』へ迎え入れられ、慣れた頃に結婚を…ということになったそうだ。

その目的は、優秀な遺伝子を持つキョーコを息子の花嫁にすることで、優秀な後継者を作ること。

「今日、初めてその『良家』に連れて行かれたんです。不破コーポレーションてご存知ですか?そこの息子に引き合わされて…ずっと、言い聞かされて来たんです。この日の為に育てて来たんだ、その為にかなりの額を使っている、絶対に気に入られろって…お前はそれ以外に使い道のない商品なんだからって」

自分の話になると、キョーコはあまり抵抗も見せずにそんな台詞を口にしていた。

そんな言葉、人間としての扱いではない。それをおかしいと思えない教育なんて、教育ではない。

キョーコの話が本当ならば、これは大変な話だ。

組織だった人身売買。

肌の色や瞳の色、髪の色を選んで子供を生み出し、その立場に合わせて育て上げる。
まるで子供の人形選びのようだ。

キョーコの話では、実際に人間が人形のように見立てられ、買い取られていっている。

不破コーポレーションの名前は、勿論知っていた。
日本有数の商事会社で、多方面に渡って事業を展開している大会社だ。

蓮も以前、系列会社のCM契約をしていたことがある。

そこまで聞いて、内容が頭の許容範囲を超えてしまった蓮はコーヒーを淹れる名目で、社に連絡を入れる為に席を立ったのだ。

仕事の疲れも相まり、身体と脳の疲労がピークに来ていて、まともな判断が蓮には出来そうになかった。


≪3に続きます≫


特殊設定入りましたー


この辺から読む方を選ぶ話になるかと思います。

無理だ!と思う方はこの辺で読むのをやめておいたほうが賢明かも、です。


ここを乗り越えられて、桃も大丈夫!と言う方は続けてお付き合い下さいませ。


よろしくお願い致します。