こちらは猫好きが高じた美花が思いつくまま書いた、『猫って可愛いよね!』と言うだけのお話です☆


タイトルは某先生の短編よりお借り致しました。大好きなお話です!

子猫を拾う話ですので『敦賀さんもキョコたんも、そんな無責任なことはしないわよ~!』と言う方は読んではいけませんよう。


そんな話もたまにはよし!と言う方は、どうぞ♪


***


「そう来たか…いや、家に来てくれることが嬉しくて、その関係に甘えていた俺が悪いんだけど、そう考えるか…意思表示は、随分しているつもりだったんだけどな…」

そう言った蓮は、困ったようにキョーコを見つめて来る。

指先をそっと握り締められて、黒い瞳にまじまじと見つめられて、いきなりのことに胸の鼓動がとくりと跳ね上がった。

「…君は、思い違いをしているよ。他に大事な人間なんて出来ない、俺が一番大事に思っているのは、ここにいる君なんだから」

目を見開くと、手を包むように握り込まれて…

「君が好きだよ、最上さん。ここに来ないなんて言わないで。俺とコーンの傍に、ずっといて欲しい」

真っ直ぐな言葉でそう言われて、キョーコはぽかんと蓮を見つめ返してしまう。

「…う、嘘…だって、敦賀さんには」
「嘘じゃない。こんなことを嘘で言えるほど、俺は酷い男じゃないよ」

上手く頭が回らなくて、否定の言葉を、その理由を、必死になって探し出す。

「だって…敦賀さんには…『キョーコさん』がいるんじゃないんですか…?」

それは本人から聞いた話なのだから、間違いはないのだ。

だからキョーコは、これまでずっと彼女の存在を気にかけ続けていたのに。

「『キョーコさん』て?俺の知っている『キョーコちゃん』は君だけだよ。どうしてそんなことを言い出すの」

不思議そうに言われて、その瞳の中に嘘や誤魔化しがないことを読み取ったキョーコは、大きく目を瞠る。

頭の中で出来上がっていた計算式が形を変えて、あっという間に、これまでとは違う答えを導き出したのだ。

ヒントを貰うことによって、今まで考えもつかなかった観点からものが見えるようになった。

蓮の好きな人は『キョーコさん』で、『同い年』の『高校生』。

そして彼は…キョーコを好きだなんて言う。

そんな彼の傍にいる『キョーコ』は、キョーコ自身しかいないと言う、その状況の意味は。

「…敦賀さんの『キョーコさん』は…まさか、私…?」
「『キョーコさん』が何のことかは分からないけど…俺がずっと前から好きだったのは、ここにいる君だよ。最上さん」

真剣な顔の蓮に見つめられて…

その言葉を漸くまともに受け取ることの出来たキョーコは、一気に顔を真っ赤にさせてしまった。

腰が抜けたような感覚を覚えて、ベッドの上に座っていられることもやっとだった。
どうしたらいいのかまるで分からなくて、あわあわと目線を彷徨わせた末に、蓮を縋るように見つめて。

「敦賀さん、わ、私…あの、何が、何なのか…」

眩暈までして来てベッドに手をつくと、そこにはコーンがいて『うにゃん』と抗議の声を上げながら目を覚ました。

そして、キョーコを見て、蓮を見て…
ごろごろ嬉しそうに喉を鳴らすと、傍にいたキョーコに身を摺り寄せて来る。

蓮はそんなコーンに瞳を細めてから、キョーコの頬を両手で包み込む。

「俺もコーンも、君が大好きなんだよ。ここに来ないなんて言わないで。俺達の傍に、これからもずっといてくれるだろう…?」

甘えるようなその言葉に、キョーコの胸がきゅんと締め付けられる。

これまでは、そんな感情に自責の念ばかり抱いていたけど…
これからは、自分に気持ちに正直になってみてもいいのだろうか…?

キョーコは、願うようにそう考えてしまって。

「最上さん、答えが欲しい。俺はこのまま…君にキスしてもいい?君に触れる権利を、俺は貰える…?」

抱き竦められるような体勢でそう囁かれて…

蓮の甘い誘惑に巻き込まれたキョーコは、何も言えなくなっていた。

自分が蓮とキスをするなんて…
少し前までは、考えも及ばないことだったけれど。

それを目の前にされた途端、それはどんなものなのだろうと想像するだけで、もうその魅力から逃れられなくなってしまっていた。

長い長い逡巡の末…

真っ赤な顔で小さく頷いたら、俯いた顔を覗き込むようにして見上げて来た蓮からそっとくちづけられた。

「ん…」

優しいけど、有無のないその行為にキョーコは慌てて目を閉じる。

頭の隅で、こう言う時はどんな顔をしたらいいのかと言う考えが過ぎったけれど。

…柔らかな唇はキョーコの唇にゆっくりと触れて…

僅かに離れたかと思うと、角度を変えてもう一度触れて来た。

その柔らかさに瞬く間に夢中にさせられたキョーコは、他のことがどうでもよくなってきてしまった。

「ん…敦賀、さん…んん」
「最上さん、好きだよ…大好きだ」

魔法をかけられたみたいに身体が言うことを聞かなくて、腰を抱える蓮の腕におずおずと体重を預けたら、更に抱き竦められてちゅっと唇を吸い上げられた。

甘く優しく吸い上げられて、その音と感触に照れたキョーコは身体を竦め耳まで真っ赤にしてしまう。

そんな様子を間近で見た蓮が、嬉しそうな笑みを見せる。

「最上さん、可愛い…もっと俺に、そういう顔を見せて…?」
「…もう、そんなの…恥ずかしいですってば、敦賀さん…」
「ん、そういう君も可愛い…ほら、こっち見て」
「…ん…や、もう、敦賀さんたら…」

…くちづけの合間に耳朶に低い声で囁かれ、そしてまた、たくさんのくちづけの雨を降らされて…

気付けばキョーコも、蓮に抱き付くようにしてそのくちづけを受け止めていた。

囁かれる声が擽ったくて身を竦めると、それにも微笑んだ蓮が額にも目元にも唇を寄せて来て。

キスがこんなにも優しくて、こんなにも幸せな気持ちにさせてくれるなんて、知らなかった。
受け止めてくれる広い胸が、抱き締めてくれるその腕が、自分を求めてくれることがこんなにも嬉しいなんて…

キョーコはこれまで、全く知らなかった。

「最上さん…傍にいて。君とコーンがここにいてくれると思うだけで、俺は何でも出来る気になれるんだ…コーンと2人で、俺の帰る場所になって」

蓮に穏やかな眼差しで見つめられ、いつの間にか膝の上に潜り込んで身を摺り寄せて来るコーンに甘えられて。

大好きな存在に求められることの驚くほどの幸福さに、キョーコは堪らずふにゃりと表情を緩めた。

そうしてそのまま、こくりと大きく頷いて。

「…お傍にいさせて下さい、敦賀さん…これからもずっと…敦賀さんとコーンと、一緒にいたいです…」

言って見上げると、そこには幸せそうな、嬉しそうな、眩しいくらいの笑顔を浮かべた蓮がいた。

その笑顔に、自分までも嬉しくなって来たキョーコは…

恥ずかしいけど、照れ臭いけど、貰った気持ちを少しでも返したくて。


「私も大好きです、敦賀さん…」


蓮にそう囁くと、ドキドキと高鳴る胸を抱えたまま、その頬に小さくくちづけを寄せた。


膝の上ではそんな2人の様子を、コーンが碧い瞳で、興味深そうに見上げていたのだった。



*END*

にゃんこ話キョコたん編でした♪

うちでは珍しくキョコたんが落ち込み捲くっているお話であらら~と言う感じでしたが、纏まってくれて一安心です。
それもこれも、敦賀さんが攻めあぐねいてるからいけないんです、もう。

今後は甘えん坊2人に囲まれたキョコたんの、世話焼きライフが始まりそうですね。

ではでは、これまで読んで頂きましてありがとうございました。
明日は、おまけ公開です。

2012.5.20 美花 本館公開時