こちらは猫好きが高じた美花が思いつくまま書いた、『猫って可愛いよね!』と言うだけのお話の続編です☆


タイトルは某先生の短編よりお借り致しました。大好きなお話です!

子猫を拾う話ですので『敦賀さんもキョコたんも、そんな無責任なことはしないわよ~!』と言う方は読んではいけませんよう。


そんな話もたまにはよし!と言う方は、どうぞ♪


***


「コーン、敦賀さんがお出掛けよ。ほらほら、こっちに来てちゃんとお見送りして」

キョーコがそう声を掛けると、リビングでふわふわボールを必死になって追いかけていたコーンが慌てたような顔で玄関先に飛んで来た。

お出掛け前の衣服に猫の毛を付けては大変と、キョーコはやって来たコーンを抱え上げてから蓮を仰ぎ見る。

「いってらっしゃい、敦賀さん。コーンの面倒はしっかりと見させて頂きますからね」

そうして意気込みも新たにそう言うと、

「うん、日曜の朝方には帰って来られる予定だから。その間は宜しくね、最上さん」

華やかな美貌に笑みを浮かべた蓮が、旅行用の鞄を抱えてそう言った。

蓮は金曜の夜である今夜から数えて約3日間、CMの撮影で海外に出ることになっていた。
その為、学校が休みで週末は日曜にドラマ撮影が入っているのみのキョーコが、泊り込みでコーンの世話をすることになったのだ。

蓮に撮影の話を教えられた時、

『俺が帰って来るまで部屋に泊まって行って?ここにあるものは、自由に使ってくれてかまわないから』

当然のようにそう言われ、

『泊り込みだなんて、そんな滅相もない!私は通いでこちらに窺いますから!』

1人、恐縮したキョーコだったのだけど…

『どうせ君のことだから、コーンの様子を見にマメにここに出入りしてくれるつもりなんだろう?そのせいで、夜遅くに帰られたらと思うと心配で仕事に集中出来なくなるよ。俺を安心させると思って泊まって行って。どうせ誰もいないんだし、そうすればコーンも喜ぶしね』

心配そうな表情を浮かべて言われてしまうと、反論なんてとてもじゃないけど出来なかった。
蓮に心配をかけるのは物凄く申し訳ないし、それにコーンの名前を出されると、心が簡単に揺らいでしまう。

この広い部屋にコーンが一匹でいる様子を想像しただけで、その寂しそうな姿に切ない気持ちが募るのだ。

そうしてキョーコは、その言葉に誘われるような形で、お泊り道具を抱え蓮の自宅にやって来ていた。

今は夕方の6時。
蓮はこれから、夜のフライトで海外に出る予定だ。

「敦賀さん、強行日程ですけど体調には十分に注意して下さいね?ちゃんとした睡眠とお食事が健康な身体を支えるんですから、旅先では2つを意識的にしっかりと摂って下さい」

玄関先で一番の心配点を上げると、苦笑が返される。

「ええと、気をつけます」
「もう、気をつけるだけじゃダメですよ?約束ですからね?」

確約を取り付けようと身を乗り出すと、蓮が更に苦笑して。

「そう言う君こそ、俺がいない間に夜の深夜徘徊をしたらダメだよ。それこそ注意して」

最近毎度の注意を受けて、キョーコはぐっと詰まってしまう。

「し、深夜徘徊って…そんなこと、私しませんよ?」
「してるから言ってるんだよ、この子を拾った夜だってそうだっただろう?君は、自分が女の子だって言う意識が低いんだから」
「う…そ、そう言うつもりはないんですけど…気をつけます…」
「絶対だよ?約束だからね?」

そしてやれやれと言うように笑った蓮は、大きな掌を伸ばしてキョーコの腕に抱えられたコーンの頭を優しく撫でる。

「君も、最上さんの言うことをよく聞くんだよ。大好きな最上さんがいてくれるんだから、寂しくはないだろう?」

言葉の意味を理解しているのかは分からないけれど、「にゃん」と返事を返したコーンはその掌にすりすりと頭を摺り寄せる。

コーンがこちらにお世話になるようになってから、2ヶ月と少し。

ふわふわもこもこで完全な子猫だったコーンも、この日々ですくすくと大きくなり、しなやかな身体を持つようになってきていた。

大きな碧い瞳にピンと立てられた耳、そして艶やかな毛並みと長い尻尾を持った姿は、世話をしている身の贔屓目を抜きにして見ても、とても綺麗な猫に成長してきているとキョーコは思う。

けれどこの、触って貰いたがりなところは変わりがなかった。
むしろ、甘えん坊な性格が順調に成長してきているように思える。

人が大好きで、行く先々に付いて回っては大きな瞳で抱っこを強請るのだから、コーンはかなりの甘え上手だ。

そんなコーンを見つめ、そっと瞳を細めた蓮は。

「ちゃんといい子にしてるんだよ、コーン」

そう言って、笑顔のまま身を屈めると…

驚くほど自然な仕草で、キョーコの腕の中にいるコーンの額にそっとくちづけを落とした。

その滑らかで何気ない動きに、そして普段よりもずっとずっと近いその距離に。

吃驚したキョーコが瞳を瞬かせていると、不意に、顔を上げた蓮と目線が絡む。

覗き込んでしまった黒い瞳の奥には、驚いたような色と、次いで浮かんだ何かもの言いたげな感情が潜んでいて…
唐突にどきりと胸が高鳴るのを感じたキョーコは、何も言えないままにその瞳を見つめ返してしまう。

…そうして、僅かな後…

「…じゃあ…行って来るね、最上さん。お土産、買って来るから」

先に目線を切り離したのは蓮の方で。

身を起こした彼が優しく笑うのに、キョーコは慌てて、

「そんな、お土産なんていいですから!気をつけて行って来て下さいね、お仕事頑張って下さい!」

そう挨拶をすると蓮がふわりと微笑む。

「うん、いってきます」
「はいっ、いってらっしゃいませ!」

手を振る蓮に、笑みを返して見送って。

玄関の大きなドアがばたんと閉まるのと同時に…


キョーコはへなへなと、玄関先の床に座り込んでしまった。


≪2に続きます≫


キョコたん編は長めなので、本館では前中後編だったものを分割UPしていきます。


にゃんこ萌えから一転、恋愛要素が多くなった?かも?

こちらもお付き合い、よろしくお願い致します♪


ではでは!