*はじめに*

こちらは猫好きが高じた美花が思いつくまま書いた、『猫って可愛いよね!』と言うだけのお話です☆

タイトルは某先生の短編よりお借り致しました。大好きなお話です!

子猫を拾う話ですので『敦賀さんもキョコたんも、そんな無責任なことはしないわよ~!』と言う方は読んではいけませんよう。

そんな話もたまにはよし!と言う方は、どうぞ♪



***


蓮はその日、キョーコへと連絡を入れていた。

「あ、最上さん?こんばんは、俺だけど」
『敦賀さん、こんばんは!どうなさいました?急にお電話なんて』

携帯越しに、愛しい少女の驚いた声が聞こえてくる。

時刻は11時過ぎ。

ただの『後輩』のままの関係にあるキョーコに、『先輩』の蓮が連絡をするにはぎりぎりの時間だ。
けれど、日々遅くまで仕事をしている蓮にとっては、今の時刻は珍しく早く帰宅出来た部類にあたる時間帯であった。

以前キョーコが見たいと言っていた、演技派俳優が主演する海外映画のプレミア試写会のチケットが手に入ったのだ。

演技の勉強に見に行くといい、よかったら是非一緒にと、誘い文句のシュミレーションをしてから連絡を取ったのだけど…

その声の背後に聞こえる、車の走る音とクラクションの音。

「最上さん…今、どこにいるの?」

それに眉を顰めた蓮は、それより先に、思わずそんな質問を口にしてしまう。

蓮には早い時間だけれど、高校生の女の子にとっては十分に遅い時間なのだ。

それなのに。

『え、今ですか?仕事帰りで、さっき駅を出たところです。ええと、場所は…』

なんの頓着もないまま、キョーコは1人で外にいることをあっさり口にする。

対する蓮の方が、慌てた気持ちになってしまって。

「最上さん…!こんな時間に1人で外にいるものじゃないよ、現場からの帰宅用に事務所からタクシーのチケットが出ているだろう?どうしてそれを使わないの!」

そしてそんな気持ちが、思わず責める口調に繋がってしまう。

『え、だ、だって!私なんかがタクシーを使うなんて、そんな、勿体無いお話です!まだまだ早い時間だから、ちゃんと電車もありますし』
「勿体無いとかの問題じゃないよ、君は若い女の子の上に芸能人なんだから!何かあってからじゃ遅いんだ、ちゃんと自衛の意識を持たなくては。大体この時間は、17歳の高校生には早い時間じゃ全然ないよ」
『え、ええ!?そんないきなり、また子供扱いですか…!?』
「女の子としてちゃんとした自衛が出来ないのなら、それは子供と変わりはないと思う」

本当は、こういう言い方がしたいわけじゃないのに。

キョーコのキョーコ自身に対する相変わらずの扱いの悪さを見ると、ついつい蓮は苦言を呈したくなってしまうのだ。
そして彼女を相手にしていると心配する気持ちが先に出てしまい、売り言葉に買い言葉が呆れるくらいに回転速度を上げていく。

そんな自分に反省を深めた蓮は、

「とにかく…今の場所から動かないで、俺がこれから迎えに行くから。場所はどこ?詳しく教えて」

携帯に向けてそう言葉をかけると、息を呑む気配が聞こえて来て。

『む、むむ、迎え!?敦賀さんが!?そんな、いけません!け、結構です、あの、ほら、だるまやはもうすぐそこですから!』
「…君、さっき駅を出たところだって言ったよね?駅は、それほどだるまやさんからは近くなかったよね?」
『うっ!い、言い間違えました、本当は、随分前に駅は出たんでした…!』
「…そんな嘘はバレバレだよ、最上さん…」

溜息を漏らしつつとりあえず行動に移らなくてはと、携帯を耳に当てたまま蓮は座っていたリビングのソファーから立ち上がった。

そんな時。

『ですから、本当に大丈夫で…って、えっ、きゃあ!?』

いきなり、携帯の向こう側でそんな悲鳴が聞こえて…

そのまま唐突に、キョーコとの通話が途絶えてしまった。

「え!?ちょ…っ、最上さん…!!?」

驚いた蓮が慌ててキョーコの携帯に掛け直したけれど、何度コールをしても通話が繋がることはなかった。


悲鳴が聞こえて、そのまま連絡が取れない。


…その状況に、蓮の脳裏を最悪の事態ばかりが一気に駆け抜けて…


車のキーを手にした蓮は、玄関に向かって物凄い勢いで身を翻した。




≪中編に続きます≫


うちの敦賀さんは、どうも何故か口煩い心配性なパパのようになりますねえ。

でも、そう言う心配をするということは、そう言うことを考えているということで…うにゃむにゃ。


キョコたんに何があったのか?で明日に続きます。


ではでは、また♪