こちらは若旦那敦賀さん×町娘キョコの江戸ものパラレル話です。
なんちゃって時代物ですので、苦手な方はご注意を。
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どっと疲れが押し寄せ、やれやれと肩を落としていると…
「お内儀様と若旦那はお顔がそっくりです。でも、旦那様にも似ていて…親子なんだなって思います。お綺麗なところも、お優しいところも同じで…あら、でも、男の方に綺麗だなんて言っても、嬉しくはないかしら」
お京に恥ずかしそうな様子で見上げられて、思わず胸がどきりとなる。
自分の顔には何の頓着もないが、お京にじっと見つめられてそんな風に評されると、どうしても落ち着かない気持ちになってしまう。
「そう、かな」
「蓮一郎は母さん似だからね。この美しさが、後に残ることは素晴らしいことだよ」
「後は孫を待つばかりよね、あなた」
「そうだねえ、お前」
…話の方向性が危険な向きになったことに気付いた蓮一郎は、今気付いたばかりというようにお京を見る。
「そう言えばお京ちゃん、君には、裏での仕事もあるのでは?随分と長く引き止めてしまったね。女将さんも心配していたよ、そろそろ戻らなくては」
「やだ、そうでした!ほんの少しと思っていましたのに、長居を致しまして申し訳ございませんでした」
慌てたように唇を押さえたお京は居住まいを正し、
「それでは、これにて失礼致します。どうぞ皆様、ごゆっくり」
言って、綺麗な所作でお辞儀をすると、にっこりと笑って座敷を後にして行った。
そんな彼女を笑顔で見送り、廊下の気配はすっかり遠退いて行ってから。
「何をやっているんですか、あなた方は」
蓮一郎は二親をじろりと睨む。
「何って、将来の嫁の顔を見に、ね」
そう言って微笑み合った二人は、楽しそうに表情を輝かせる。
「思っていたよりも、ずっとずっと可愛らしい娘さんだったわ!あなた、早く不破さんに話を通しましょうよ。並んだ二人はとてもお似合いだったわ!私、娘が出来たら一緒に買い物や観劇をするのが夢だったのよ!どうしましょう、思っていたよりも早くに夢が叶いそうだわ…!祝言の日取りはどうしましょうね?早くお嫁に来て頂いて、春の演目を見に行けるようにしたいわ」
「私も気に入ったよ、お樹里。ああ、あの子に『お父様』なんて呼ばれたらどんなに幸せだろうか…!彼女となら、毎日一緒に君の美しさを称えることも出来そうだ。なんて素晴らしいことだろう、それでは早速、日を見て不破のご主人に話をしよう」
「…勝手に話を進めないで下さい…!」
盛り上がる二人を制す為に、蓮一郎はぱしりと畳を掌で叩く。
「社さんが何と言ったか知りませんが、お京ちゃんと私の間には何一つ勘繰ることなどありません。今の彼女はここの一人息子の許婚なんですよ。妙な噂を立てられでもしたら、不破もうちもいいことはありませんし、何よりもお京ちゃんが可哀想です。…全部ご存知でしょうに、何を考えているんです」
大元の原因の社はどこにいるのかと静かに怒る蓮一郎に、笑みを浮かべた周左衛門は宥めるように片手を上げる。
「社にはお前を呼びに一度お店に戻らせたんだよ。お前がここにいるならじきに戻ってくるだろう。社を責めるな、お前と敦賀屋を思ってくれてのことなのだから」
「…それは、分かっていますが」
そう答えて愁眉を寄せる息子の様子に、周左衛門は苦笑を零す。
≪十二に続きます≫
若旦那が行動に移れない理由の一番は、お京ちゃんが被る『醜聞の噂』なのですね。
しかし若旦那、うっかりしてるとパパママに強行突破されそうな勢いです。気をつけて…!
ではでは、また♪