こちらは若旦那敦賀さん×町娘キョコの江戸ものパラレル話です。

なんちゃって時代物ですので、苦手な方はご注意を。



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隣を見ると、口元を押さえたお京が慌てたように「申し訳ありません」と身を竦めたが、それでも目元が笑ったままだった。

目線で問うと、苦笑気味のお京は表情を緩める。

「こんなに立場の弱い若旦那は、初めてお目に掛かりました。ご両親と仲がよろしいんですね、若旦那って」
「…そうかな…」

正確には、予測不能な行動に出る親に振り回されているのだと訴えたいのだが、そんな蓮一郎にお京は輝くような表情を向ける。

「今日、急に敦賀屋の旦那様方がいらっしゃって、お声を掛けられた時は凄く驚いたんですけど…お二人ともお優しくて素敵な方々で、もっと驚きました」

そして、うっとりと見惚れるようにお樹里を見つめたお京は、

「お内儀様なんて、とってもお若くてお美しくて…何だかこの世のものとも思えないくらいに、お綺麗です…」

溜息混じりにそう言って、そのお樹里本人にじいっと見つめ返されていることに気付き、頬を真っ赤にさせ恥ずかしそうに俯いてしまった。

真っ白な肌がふわりと上気し、酷く艶かしい。

そんな様子に蓮一郎が思わず無表情になっていると、お樹里がお京へとにっこりと微笑んだ。

「まあ、なんて可愛らしいお嬢さんなのかしら!あなたにそう言って貰えると、とっても嬉しいわ。ああ、このまま連れて帰りたいくらいに可愛いわ…!どうしましょう、不破さんにお願いしたら許して頂けるかしらね?」

お樹里がそんなことを呟く横で、周左衛門がその面に喜色を浮かべる。

「お京さんもそう思うかね!?ああ、君とは気が合いそうだ!妻の樹里の美しさと来たら、もう二十年も添って見慣れたはずの私も、毎朝眩暈を起しそうになるほどなんだ。この美しさは奇跡としか言いようがないだろう!」
「はい、分かります!本当に、その通りだと思います…!」

何故か意気投合し始めた周左衛門とお京は、二人一緒にキラキラとした眼差しでお樹里を見つめている。

蓮一郎はそんな様子にそっと溜息を零す。

どうにもよく分からない今の状況だったが、蓮一郎の考える危機的状況にはなっていないらしい。
母の危うい台詞も、お京の耳にはたとえ話と届いているのか、特に気にする様子もない。


お京の、案外のんきなその性格に助けられていると思う。


随分とぎりぎりだった気もするが…

お京が本気で困るような、決定的な言葉はとりあえずはなかったようだった。



≪十一に続きます≫



綱渡りな若旦那。

そんな中、パパママとのお京ちゃん初顔合わせはあっさり上手くいっている模様。

もーさっさと行動に移しちゃいなよ!…と言うところで、続きは明日に。


ではでは、また♪