「…何よそれ、結局のろけ話なんじゃないの…もー、心配して損したわ…帰ろうかしら、私」
モー子さんがそんな風に呟くのに、私は慌ててしまう。
「えっ帰っちゃイヤよ、モー子さん!来たばかりじゃない。のろけ話なんかじゃないわ、真剣な話なんだから。モー子さんだって、クオンさん似の子の方がいいと思うでしょ??あんなに素敵だったなら、男の子でも女の子でも、先の人生がとっても幸せだと思うわ…!」
「んー…私としては、あんたに似た子の方が案外強い子になる気がするけど」
「…モー子さん…!!な、なんてこと言うの、モー子さんは私の味方だと思ってたのに…!」
ここに来て2対1ってどういうこと!?と本気で動揺してしまった私の隣でモー子さんは肩を竦める。
「どっちに似ても、可愛いことには変わりないんじゃない?まあ、騒がしくなることは間違いないわね」
そう言ったモー子さんは、私の頬をぺろりと舐めて。
「頑張っていい子を産むのよ、キョーコ」
そして優しく瞳を細めて、そう言ってくれたの。
そんなくすぐったい感触に、嬉しい言葉に、私は笑崩れて身体を竦めてしまう。
「うん。私頑張るわ、モー子さん。新しい家族を迎えて、今以上に幸せな家庭を作るの。私とクオンさんが、2人でそれを一緒に築いていけるなんて…本当に、凄いことよね」
どれだけ未来を想像しても、私の頭の中には暖かくて賑やかな、幸せ過ぎる将来しか思い浮かばない。
クオンさんが傍に寄り添ってくれて、クーパパとジュリエナママが守ってくれて、そしてモー子さんとヤシロさんも近くにいてくれる。
今だって、ちょっと前の私には、想像も出来ないくらいに幸せな将来だったのだけど。
今以上の幸せが、もうすぐ、私のもとにやって来てくれるのよ。
ああ、本当に、幸せ過ぎて困ってしまうわ…
モー子さんと2人、そんな話をしていると。
「…あ…っ」
私は一瞬目を瞠ってから、そのままそっと瞳を細める。
そして、丸いお腹を撫でて、「何?」と不思議そうな顔をするモー子さんに微笑みかける。
「モー子さん、分かる?今、お腹の中で、赤ちゃん達が動いてるの」
「あら、本当。分かるわ、お腹がもこもこしてるもの」
同じく微笑んだモー子さんは、私のお腹をそっと撫でてくれる。
「今の足かしら?元気な子ね、うーん、やっぱりこれは、あんた似かも」
「そうかなあ?だったら、私よりもう少し、お鼻が高く生まれてきてくれるといいんだけど…」
こっそり自分の顔のコンプレックスを私は口にする。
将来「ママに似たからこんなに鼻が低いんだ」と責められたら返答のしようがないわ。
やっぱりクオンさんに似たほうが、いろいろ問題が少ないと思う。
…そんなことを、考えるのだけど。
本当はそんなこと、健康で生まれてきてくれることに比べれば、どうでもいいお話だった。
どちらに似て生まれてきても、絶対に大好きになることには間違いないのだもの。
だって大好きなクオンさんと私の間に生まれてきてくれる、可愛くて愛しい、素敵な天使達なのだから。
小さなあなた達は、私とクオンさんの、一番の宝物なのよ。
元気に生まれて、早くママとパパに可愛いお顔を見せてね?
表情を緩めた私は、ひとつのニュースを思い出してモー子さんに囁く。
「ねえ、そう言えばモー子さん?今度、モー子さんにお婿さんが来るってヤシロさんから聞いたわ。どんな方なの?ぜひとも、私にも会わせてね!!」
「やーね、ヤシロ義兄さんたらそんな話をここでしていったの?お婿じゃないわよ、まあ、飼い主は婿のつもりかもしれないけど…まだまだ子供なの、飛鷹って名前の男の子。ま、弟が出来ると思って、義兄さんと2人で可愛がることにするわ。来年にはうちの子になるみたいよ」
「なるほど、年下ね…絶対に私に会わせてね、モー子さん。私の大好きなモー子さんを奪う男なんですもの、しっかりとチェックを入れなくてはいけないわ。それはもう、しっかりとね」
「? 何か言った?キョーコ」
「ふふ、何でもないわ、モー子さん!来年が、とっても楽しみね?」
「そうね。あんたに似た子が3人も生まれてきてたら、その頃はちょっと、本当に煩いくらいになってそうだけど、この家は」
「モー子さんたら!それって、私も煩いってこと!?」
そんな会話を交わす私とモー子さんの間に、これまで聞こえなかった音が飛び込んでくる。
そんな、想像していたよりも早くお散歩から帰ってきたらしい、最愛の旦那様の真っ先にこのテラスに飛び込んでくる足音を聞きながら。
もしかしたら近い将来、モー子さんも私みたいにお腹が大きくなって、モー子さん似の可愛い赤ちゃんを産んだりするのかしら。
そうなったら、うちもお隣も、賑やかになるわね…
私の赤ちゃんと、モー子さんの赤ちゃんは、仲良くなってくれるかしら?
それに、ヤシロさんにも、素敵なお嫁さんが現れるかも!
優しくて、綺麗な方だといいな。
親切で穏やかなヤシロさんには、是非とも幸せになって頂きたいもの…!
どこかに、素敵なお嬢さんはいらっしゃらないかしらね?
私は微笑を零しつつ…
自分のお腹を見つめ、そんな、幸せな未来をあれこれと想像していたのだった。
*END*
人間の蓮キョがわんこの蓮キョに晴れて会える頃には、わんこキョコはもう何回か赤ちゃんを産んで、ママの貫禄がすっかり出ている頃かも。
DOG LIFE お付き合い頂きましてありがとうございましたv