愛しい妻の大切な親友だ、蓮はぜひとも、彼女と仲良くしたいのだけど…
事情が事情だったから仕方のないことなのだが、完全に敵視されてしまっている上に何だか監視されている感が否めない、緊張を孕んだ関係が蓮と彼女の間には築かれてしまっていた。
これは、長い時間を掛けた、関係の修復が必要だと思う。
「ね、ね、あなたあなた!」
「ん、なに?キョーコ」
そんなことを考えていた蓮は、キョーコの楽しげな声に呼ばれて意識を引き戻す。
見下ろしたエプロン姿のキョーコは、まだ少し照れ臭そうな顔をしつつも、やけに楽しげに瞳を輝かせて…
「えーと、あの、あの!ご飯にします?お風呂にします?それとも…わ・た・し?」
我が家の定番の質問を口にして来た。
その台詞に、蓮は更に表情を緩めてしまう。
彼女は今も、この質問が『ただいまの挨拶』だと思っているのだ。
こんな会話を交わす夫婦が本当にいるのかと、常々疑問だったのだけど…
実際そうなってみたら、実は、自分達がそういう会話を交わす夫婦になっていたのだ。
素晴らしい誤解だと思う。
この誤解を解くつもりは、蓮には当分ない。
…ただ、以前とは少しだけ、違って来ていることがあって…
「それじゃ、まずは君にしようかな。一緒にお風呂もいいと思う。うん、名案だと思わない?奥さん」
唇を綻ばせた蓮がキョーコの身体を抱え上げ、いたずらっぽい瞳でその顔を覗き込むと…
途端にキョーコが、頬を一気に真っ赤にさせた。
…その言葉の意味を、彼女はちゃんと理解するようになってくれているのだ。
これは驚くべき成長だと思う。
頬を染めたキョーコは、蓮の首筋に腕を回しこつりと額を合わせて、小さく囁く。
「じゃあ…お風呂のあとご飯、ですね?」
「ん…君の後に、お風呂でご飯、かな」
そう、囁き返して。
2人で目線を交わすと、微笑み合って…
そのまま、柔らかく互いの唇を重ね合わせた。
こんな幸せな日々が、この1ヶ月、毎日続いているのだ。
…そして今後も、その日々は続いていく予定だ。
「ふふ、お背中流しますね、あなた」
「うん…俺も、しっかり綺麗にしてあげる」
そう言って額にくちづけると、キョーコが体を竦めて嬉しそうに微笑んだ。
蓮は、バスルームに歩いて行きながら、全てに感謝したい気持ちだった。
何より一番は、幸せそうにこの腕の中に納まってくれている、可愛い奥さんのキョーコへ。
それに、この関係を後押ししてくれた社、社長にそっくりでやっぱり『愛』に寛大だった『神様』や何かとキョーコを気にかけてくれている『モー子さん』に。
更には、キョーコと出会わせてくれた、『1000億人目』に選ばれた自分の幸運にも感謝したかった。
そうして勿論…
こんな可愛い天使がこの腕の中に降りて来てくれた、あの日の夜にも。
*END*
天使話本編ラストです♪
長い間のお付き合い、ありがとうございました。
この後暫く、天使話番外編を更新予定です。
ほんの少しだけ(本当に少しだけ)桃展開なのと、番外編とかあんまり好きじゃないと言う方もいるかなあと言うことで、番外の公開は限定公開にさせて頂きます。
番外編の内容は、①初の翌朝のキョコの独白編 ②敦賀さん→キョコへのプロポーズ編 ③社長・社さんの疑問編 ④新婚蓮キョ編 です。
①②は甘々強化話です^^
番外は月曜からの公開予定です。もう少しのお付き合い、よろしくお願い致しますね♪
ではでは!