ウッドチェアーでゆったりと足を組んだ『神様』は、そんな蓮にぴしりと指を突きつけてくる。

「ただし、これには条件があるぞ」
「条件て!?」

やっぱり何かあるのかと身を乗り出す蓮に、彼は唇を引き上げて…

「天界から奪った天使を一生大事にすること。最上君は天使課天使部の期待の新人だったんだ、その損失は大きいぞ。不幸せにしたり裏切ったりしたら、それ相当の天罰が下ることをゆめゆめ忘れるな」

脅すように、からかうように、そう言ったのだ。
それを聞いた蓮は、途端に表情を輝かせ、抱えていたキョーコの細い身体を更にぎゅっと抱き締めた。

「そんなこと、当然です…!彼女は生涯ただ一人の人だ、彼女以外なんて、考えられない…!」
「…つっ、敦賀さん…!」

蓮の言葉にぱあっと表情を輝かせたキョーコは、次いで、くしゃりとその顔を歪めると…

その瞳からぼろりと大きな涙を零してしまう。

「こら、どうして泣くの、最上さん…」

いつも元気なキョーコの涙に困ってしまった蓮は、両手でその小さな顔を挟み込んで顔を覗き込む。

それでも、大粒の涙をぼろぼろと零すキョーコは…

「だっ、だって、嬉しいんですもん…っ大好きです、敦賀さん、凄く好き…っ!」

そう言うなり、蓮の身体にしがみ付くと、そのまま盛大に泣き出してしまった。

「ッ、バカだな、そんなことで泣かないで。君こそ、一生だよ?一生、俺の傍から離れちゃダメだ。大丈夫…?」
「それは、私の台詞です…もう絶対離しません…イヤって言っても、許しません」
「…最上さん…それこそ、俺の台詞だ」

笑い合って…そのまましっかり抱き締め合う2人を見て、肩を竦めた『神様』は、指の先の『モー子さん』へと目で合図をして。

「では最上君、幸せにな!後で退職金と有給消化の手続き書を琴南君に届けさせるから、そのように。これまで頑張って働いてくれた君への、私からの餞別だ」
『キョーコ、また後でね!人間、キョーコを不幸せにしたら承知しないんだからね!』

そしてそう言い残すと、2人はふわりと闇に溶け、その姿をかき消した。

「また来るって、『モー子さん』…よかったね、最上さん」
「はい…!これからは2人とも、仲良くなって下さいね」

抱き合った蓮とキョーコは、目線を交わして小さく苦笑を漏らしてから…

どちらともなく顔を寄せ合い、そのままそっと唇を重ね合わせた。

「ン…敦賀さん…大好き…」
「最上さん…俺もだよ、大好きだ」

キスの合間の囁きに言葉を返すと、キョーコは離さないと言うように蓮の首筋に腕を回してくる。

そんな彼女が堪らなく愛しくて…

蓮はその身体を引き寄せ抱え込み、触れ合うだけのくちづけを何度も何度も繰り返す。