…この鳥が、『モー子さん』なのだろうか?

『モー子さん』は美しい黒髪と華やかな美貌を持った天使なのだと、キョーコは自慢げに話していたのだが。


『もー!あんたが急に連絡なんて入れてくるから、驚いて飛んできたわよ!一体何なの!?「好きな人ができた」「幼馴染と結婚するつもりって話した」って!あんたの連絡用の鳥への伝言、要領得なくて何言ってるか全然分かんなかったわよ!?』


そんな小鳥は女の子の声で一気に言葉を発する。

その勢いのある台詞に、何やら肩を落とした様子のキョーコが言葉を返す。


「ごめん、モー子さん…だって…私もどうしたらいいのか、分からなくなっちゃったんだもん…」


そのしょんぼりとした声を聞いて、蓮は驚いてしまう。
朝からずっと幸せそうな笑顔を振り撒き続けていたキョーコとは、様子が全く違っていた。


『分からないって…何なのよ?幼馴染って、あのぼんくら息子のことでしょ。好きな人って、あいつのこと?あいつの親から結婚を勧められてることは前から聞いてたけど、まさか、とうとう情に絆されちゃったんじゃないでしょうね?そんなの人生棒に振るのと同じことよ、馬鹿な考えはさっさと捨てなさい』


小鳥のそんなきびきびとした発言に、キョーコは首を横に振る。

背後から窺えたその横顔は、酷く悲しげな顔をしていて…


そして。


「モー子さん…それは、嘘なの。私、嘘を吐いたのよ…好きになった人に」


表情と同じく、悲しい声音でそう言ったのだ。


嘘。


その言葉に蓮は瞳を瞬かせてしまう。
その言葉はくしくも、先ほど社が口にし、蓮に少しの光を与えてくれたものだったのだ。


しかも、『好きな人に嘘を吐いた』と言うキョーコの言葉。


その幼馴染が相手ではないのなら…その相手は、一体どこの男なのか。

…言葉の真意をキョーコに問い質したい。


気が急いだ蓮が自分の存在を明かそうと動こうとした、その時に。


『嘘って…結婚するってことが?よく意味が分からないわ、初めからちゃんと説明して!あんたの好きになった相手って、あのぼんくらじゃないの?あんたの近くにいる男って、他にいないじゃ……』


蓮の言いたいことを全て言ってくれた小鳥が、不意に唐突に言葉を止めた。


そして、


『ちょっ、ちょっと待って、待ってキョーコ!あんた、まさか!!』


何かに気付いたように金の羽を大きく羽ばたかせて…


「…あんたまさか、その相手って…ターゲットの男…!?冗談じゃないわよ、そんな!噂の『敦賀さん』を好きになっちゃったなんて、まさかでも言わないわよね…!!?」



そんな、爆弾発言を投げかけたのだ。