…食事の間のそんな話が心に残ったのか、食後の食器洗いの間、キョーコは浮かない顔をしていた。

申し訳ないことをしたと思った蓮は、食器洗いの手を止めて、隣のキョーコの顔を覗き込む。


「最上さん。後は俺がやっておくから、お風呂、入ってくれば?ゆっくり入って来なよ。長風呂、大好きだろう?」


言うと、途端にキョーコの顔が輝いた。


彼女は蓮の自宅での入浴が、この2週間で大のお気に入りとなっていたのだ。

蓮からすると魔法じみた力を駆使する天使の人々は、身体を清潔に保つためにもその力を使うので、入浴と言う習慣がないのだそうだ。


浴室から望む夜景を初めて見た時のキョーコの様子は、初めて遊園地を訪れた子供のようだった。


「え…でも、敦賀さんも、お風呂まだですよね?家主の方より先になんて、申し訳ないです」


それでも、そんなことを気にするキョーコは眉尻を下げて蓮を見上げて来る。

それに首を振った蓮は、ふわりと笑みを零して。


「いいよ、俺はジムの方の浴室を使うから。2時間でも3時間でもごゆっくりどうぞ。ただし、湯あたりだけは起こさないようにね」


そう注意をすると、キョーコの頬がぱあっと上気して、


「はい…!そうしたら、あの、ごめんなさい、お言葉に甘えさせて頂きます…!」


喜色を浮かべたキョーコはそう言うなり、今ある食器を手早く拭くと、跳ねるような足取りで自室にしているゲストルームに入って行った。


そこには蓮に使いみちを聞いて遠慮しながらパソコンからネット注文した、可愛い色使いのバスオイルやバブルジェル、女の子向けのボディソープやシャンプーなどが、大切に仕舞い込まれているのだ。


キョーコはその年頃の女の子と同じように、可愛いものが大変好みの真ん中に嵌っているらしい。


お風呂も好きだけど、夜景を眺めながらそう言う可愛いものに囲まれる時間が、かなり幸せなようだ。


その喜びように、蓮は拭き終わった食器を棚に仕舞いつつ、溜まらず唇を綻ばせてしまう。


無邪気な彼女は、心の動きが手に取るように分かってどうにも微笑ましい。

そんな様子を見ていると、更にもっと喜ばせたくて、最近では若い女の子向けの可愛い品々をチェックする癖がついてしまった。


妹がいたら、こんな感覚を覚えるのだろうか。


兄弟と言うもののいない蓮は、そんな風に考えてしまう。

妹にしては随分と口煩く、毎日恋愛ごとに確認を入れてくる、遣り手婆のようなところのある少女だが。


今度、彼女好みの品々の揃ったショップが集まる場所に連れて行ってみようか。


…喜び過ぎて、失神しなければいいけど。


そうして、先にシャワーを済ませリビングでウイスキーのグラスをゆっくりと傾けた蓮は。



キョーコの入浴をのんびりと待ちながら、唇に笑みを浮かべて、そんなことを考えていのだった。




≪*SIDE キョーコ*へ続きます≫


とりあえず去年終わりに公開していた1話目をUP★


所帯臭く、経済観念の発達した天使ってどうよ?と思いますが、いいとこ育ちのお坊ちゃまな敦賀さんにはキョコのそういうところは外せないな、と思います。


これから暫くのお付き合い、よろしくお願い致しますv


3/9 訂正あり

「携帯からは全部読めないよ~」というお声を頂き分割UP 致しました。

分かってたくせにまたやっちゃったorz携帯ユーザーの皆様、ごめんなさい!

そして大量の更新メールが届いた皆様、更にごめんなさい~あせる


今後は細切れ更新しますね☆また長くなるけどお付き合い下さいませv