*はじめに*
こちらは本館で公開しているパラレル長編『身代わり姫の結婚』です。
諸事情により長い間更新が止まっていたお話だったのですが、本館にて毎日更新している『天使の降る夜』が最終話を迎えましたので、そちらで、このお話を再スタートさせようと思っております。
開始時期は、4月ごろを予定しております。
それにあたって、こちらでもそのお話を公開させて頂きます。
以下、解説です★
こちらはACT.169の表紙より妄想が膨らみましたパラレル物で王子様蓮×身代わり姫キョーコのお話です。
どこかで聞いたようなタイトルですが、リスペクトです!許してあげて下さい…
≪登場人物≫
キョーコ(17)
ある小国で王宮勤めをしている中級女官。
レン王子(21)
近隣一の大国・LME国の王子で次期国王。花嫁探しで来訪中。
ヤシロ(25)
王子の側近で乳兄弟。
カナエ・チオリ・イツミ(18)
キョーコの同僚女官。
アイカ姫(17)
キョーコ達の国のお姫様。我侭姫。
BJ出演の映画『トラジックマーカー』主演女優の愛華ちゃんです。キョコと雑誌掲載時似てるなーと思ったのが今回の話の肝です。可愛い感じなのに、勝手に我侭お姫様にしてごめんね…
そして更に彼女には謝るべき点がひとつ…
彼女の正式なお名前は、
愛華→アイカ× マナカ○
だったのです…!!
ごめんねマナカちゃん、あなたはここでは、アイカ姫でいて下さい…
それでは、パラレルどんと来い、恥ずかしいことばかり言う敦賀さんの王子様でも全然OK!と言う方のみ、どうぞ♪
*身代わり姫の結婚*1
名前もないような小さな国のあるところに、キョーコという名の女官としてお城勤めをする17歳の女の子がいました。
少し夢見がちで妄想癖のあるキョーコでしたが、明るく働き者な彼女は周囲の人々から可愛がられ、温かく迎えられておりました。
そんなキョーコはその日、朝からどういうわけか、窮地に立たされていたのです。
これから起こる騒動が、自分のこれからの人生を大きく変えることになるとも、知らないままに。
*
キラキラと光を反射して輝くティアラにネックレス、そして耳元で揺れるイヤリングに指や手首を飾るリング。
大粒の宝石を散りばめて作られたそれら装飾は、全てが王宮で管理され磨き上げられてきた国宝であった。
そんなものを付け慣れているはずもないキョーコの身に、それらは切迫する責任感と共にずっしりとした重みを預けて来ていた。
これってどれ1つとっても、私のお給料一生分以上のお値段のものだわ…失くしたり壊したりしたら、本当の意味で首が飛ぶわよね…
その総額を考えて眩暈がしそうなキョーコの身体を飾るのも、これまた豪奢な薄桃色のドレスである。
たっぷりとドレープを取られたドレスは最高級の布地で仕立てられていて、質素な女官のお仕着せを着慣れたキョーコにとっては、触れることさえ躊躇ってしまうほどの豪華なものであった。
そんなキョーコの全身の姿が、大きな、そして煌びやかな目の前の鏡に映っている。
鏡の中では、綺麗に化粧を施され完璧に『お姫様』姿となったキョーコが泣きそうな顔をして立っていた。
「モー子さん…!私、やっぱり無理ですって断っちゃダメなのかしら…っ」
余りのことにドレスの裳裾を整えていたカナエに助けを求めると、同情半分、呆れ半分の目線が返される。
「ここまで来たら、もう逃げようがないでしょう?元々断りようがない話だけど、うっかり引き受けちゃったのもあんたなんだから。それから、妙なあだ名で呼ばないで下さい、アイカ姫様」
「モー子さん…!!」
涙の浮かんだキョーコの目元をカナエはハンカチで拭い取る。
「もー、泣いたら化粧が崩れるでしょ?LME国のレン王子が来るのはもうすぐなんだから、腹を括りなさい!」
カナエに怒られて、半泣きのキョーコは「だ、だって…」と言い募る。
ここは、キョーコが女官として仕える国の王城の一室。
事情を知る、数少ない女官仲間の数人が同情交じりにそれぞれ言葉を述べ出した。
「前代未聞よね…お見合い当日にお姫様本人が、嫌がって逃げちゃうなんて」
目元の化粧を直しながら、チオリが溜息と一緒にそんな台詞を零す。
「確かに会ったこともない人と結婚させられるなんて、私達からしたら冗談じゃないと思うけど…お姫様の結婚なんてそんなものなんでしょ?諦めが悪いって言うか」
「国の威信のかかった縁談ですものね…LME国って言ったら近隣一の大国ですもの、飛びつく気持ちも分かるわよね…無理矢理決めた王様が、溺愛してるアイカ姫に強く言えなくて、今こんな状況になったわけだし…キョーコちゃんも災難ね」
綺麗に巻いた髪を整えるイツミも同情の浮かんだ顔でキョーコを見る。
「レン王子って逃げたくなるほどのご面相なのかしら?姿絵が届いているんでしょう?」
「姿絵では吃驚するぐらいの美男だったって、お姫様付きの女官から噂で聞いたけど…絵なんて5割増しにするのが通常だし、それだけじゃ分からないわよね…なかなか結婚しないって噂だから実は物凄い醜男なのかも。万が一気に入られちゃったら、うちみたいな小国じゃ到底断ることなんて出来ないわよねえ」
「それで我侭いっぱいに育てられたアイカ姫は離宮に逃げて、王様は当日までに説得できなくて、その場凌ぎに顔が似ているキョーコさんが借り出された、と」
カナエを含む女官3人は口々に言って、同時に大きな溜息を漏らす。
「なんて穴だらけの計画なのかしら…キョーコさんが化粧1つで本当にアイカ姫そっくりになったのが、せめてもの救いね…」
チオリが固まっているキョーコを上から下まで眺めて、感嘆の声を零す。
「前から似てるなって思ってたけど、ここまでとはね。凄いわ、キョーコさん。お城勤めを辞めてもお姫様のそっくりさんてことで、劇場とかでお金が稼げそう」
「そんなことしなくたって、今回のことでたんまり稼げるわよ。キョーコ、遠慮なんかしないで宰相に大きく吹っ掛けてやるのよ?迷惑料も上乗せしてね」
「ふふ、本当の嫁入り支度のお金が用意出来ちゃうかも知れないわね、キョーコちゃん」
カナエが言って、イツミが微笑むのにキョーコはふるふると青い顔で震える。
「そっ、そんなぁああ!か、簡単に言わないで皆…!私、これから王子様を騙さなくちゃいけないのよ…!」
キョーコは元々、王族と直に顔を合わせられるほど身分の高い女官ではなかった。
廊下等で王族の遭遇する時は平伏しているのが常だった為、アイカ姫をまともに見たことがなかった。
自分が姫の似ているらしいということは人に言われて知っていたが、だからといって何か得することがあるわけでもない。
キョーコとアイカ姫はお互いに関わることなく、同じ王宮内でそれぞれの生活を過ごしていたのだ。
だから今日も縁談当日と知ることもなく、王城の中央部分、王族の居住する区域が普段よりなんだか騒がしいなと思う程度で、キョーコは日常の業務を淡々とこなしていたのだが…
ある大臣に顔を見咎められ、いきなり王様の前まで引き出されてしまったのだ。
すると謁見の間で悲嘆に暮れていた大臣達が、わけの分からないままのキョーコの顔を見るなりどよめきだした。
「アイカ姫そっくりじゃないか!この王宮にこんな女官がいたのか!?」
「声まで似てるんじゃないか?」
「これならLME国の使者も誤魔化せるかも知れない!」
そして王様に涙ながらに事情を説明され、「1日でいい、身代わりとしてLME国の使者に会ってくれ」と懇願され、激しく同情してしまったキョーコは身代わりになることを引き受けたのだ。
けれど。
「王子様本人が来るなんて聞いてないわっ!ぼっ、ぼろが出てばれたらどうしよう!?お手討ち?侮辱罪で死刑!?いやああああっっ」
キョーコが聞いていたのはLME国の使者が結婚の意向を問いにやって来る際、そこに立ち会って顔見せをして貰いたいというもののはずだった。
しかし、先ほどLMEより先触れがあり、外交で国外に出ていたレン王子が急遽帰国することになり、その途中で使者と合流することが出来そうだというのだ。
そんな風に状況が変わったお陰で、キョーコは本番のお見合いにまで出ることになってしまった。
使者に顔だけ出すならまだしも、王子本人の前で「私がアイカ姫です」と嘘を吐かなくてはならないのだ。
完全な詐欺行為だ。
バレてしまったら、騙された王子の怒りは目の前の自分にまず向けられることだろう。
蒼白で蹲るキョーコを、カナエが呆れ顔で立ち上がらせる。
「あんた、その妄想癖を少しはどうにかしなさい。バレたって、あんたが悪いわけじゃないのは王子様にだって分かることでしょう?騙そうとしてるのは国側なんだから。後は国同士の問題よ、揉めようが戦争になろうが、こっちには全く関係のない話よ」
「せっ戦争!?怖いこと言わないで、モー子さん!私、どうしたらいいの!?」
カナエの腕を縋るように掴むと、満面の笑顔を向けられた。
「今日一日おとなしく、可愛く、おしとやかに笑ってればいいのよ。何を聞いても言われても、常に同じ顔で笑ってるの。相手にいい印象だけ与えて個性は見せない。私達女官のいつもの仕事と、たいして変わらないわよ」
「アイカ姫…ちゃんと、帰ってくるわよね…?」
「そこまで頭悪くはないんじゃない?国の行く末が決まる結婚なんだから。自分が蔑ろにされたのが面白く
なくて不貞腐れてるだけでしょ、じきに帰ってくるわよ」
カナエのシビアな意見にキョーコは眉間に皺を寄せる。
LME国は近隣一の大国だ。
その次期国王となるレン王子は、今年21歳になる青年で、現在絶賛花嫁募集中とのこと。
大国と姻戚関係を結びたいが為に、年頃の娘を持つ各諸国の王族が目を爛々とさせ自国の姫を売り込んでいるそうだが、どういう訳か未だ婚約者も決まらず、LME国は随時花嫁探しを続けながら国交を広げて行っていた。
そんな中、我が国のアイカ姫にも縁談のお鉢が回ってきたのだ。
LME国からの使者の要請に狂喜乱舞した国王は、一も二もなくその見合い話に飛び付いた。
噂は一気に広がり、国中が、まだ本決まりにもなっていない縁談をさも決まったかのように囁き合い、湧き立ってしまってた。
面白くないのはアイカ姫である。
王子ばかりが生まれる中、年の離れた末子として生まれた彼女は蝶よ花よと育てられ、王妃が亡くなってからは更に甘やかされ、17の歳まで思うがままの暮らしを送ってきていた。
なのに、今まで何でも言うことを聞いてくれていた父王が、国益に目が眩んで、本人の意思も聞かずにまるで身売りするかのように縁談話を決めてしまったのだ。
『蔑ろにされたのが面白くなくて不貞腐れてる』
離宮へ逃げたアイカ姫の行動は、正にカナエの言葉通りのものだったのだ。
父王を困らせ、自分の価値を知らしめたい。
気位が高く世の情勢に疎い、箱入りのお姫様だからこそ、出来た芸当だ。
しかも、その相手がレン王子ときては、アイカ姫が難色を示すのも無理がないのかも知れない。
レン王子に悪い噂が纏い付いていることは、ゴシップにあまり興味のないキョーコも知るほどの有名な話であった。
レン王子は王位継承者の立場でありながら、国一の敏腕外交官なのだという。
切れ者という噂が他国にまで伝わっていて、だからこそ、花嫁が未だ決まらない理由が勘繰られてしまう。
もしかすると性格に難があるのではないか。
有能さをひけらかす鼻持ちならない人間なのかも。
国交の薄いうちの国などでは、実は物凄い醜男らしいと、まことしやかに噂されていた。
縁談が纏まらなかった国々が王子に対して何も口にしないことが、更に噂に拍車を掛けていた。
実際に顔を会わせた国々が何の情報も漏らさないからこそ、悪いほうに想像を膨らませてしまうのだ。
国益と天秤にかけても姫君本人や国王が受け入れられないくらいの、何か特殊な趣味嗜好が実は王子にあるのではないか。
そんな外聞の悪い憶測までが流れて来ていた。
結婚に夢を持つ年頃のアイカ姫にとっては、会ったこともない悪い噂ばかりの他国の王子などよりも、国内の煌びやかな騎士の方が余程ときめくものがあるのだろう。
「本当に、本当に、アイカ姫は帰ってくるのよね…?」
「……多分、その内、ね」
不安に駆られたキョーコの問いに帰ってきたのは、そんな心許ない同僚の言葉だった。
≪2へ続きます≫
最後に。
更新が止まっていた理由って何?と思う方へ★
実はこのお話、本館サイト開設以前に既に最後まで書き上がっていて、サイトを開設した時の目玉にしようと思っていたんですね。
でも、まだまだお話も増やしたいしと思って、USBに暫く保存してあったんです。
それが、忘れもしない去年の8/23…
そのUSBを私のうっかりにより、叩き壊してしまったんですね…orz
自分が完全に悪いから、どこにも八つ当たりが出来ない、このやりようのなさ(苦笑)
他の話はメールとかに保存してあって大丈夫だったんですが、この身代わり姫だけが途中までしか保存されてなくて、後半が全て飛んでしまったんです。
自分で思う以上によく書けていたお話で(えー、私基準です)物凄ーく思い入れがある話だったので、本気でショックで暫く立ち直れませんでした^^;
で、こんなことがまたあったら大変!とりあえずでもお話をネットにあげちゃおう!と言うことで、この事件(?)から、9月のサイト開設に繋がったのでした。
はあ…今思い出しても、昨日のことのように本気で悔しいです…(執念深い)
そして嬉しいやら悔しいやら、このお話はサイトで1・2を争うご好評を頂くお話でして…く、くそう…。
(くらやみ、天使、身代わり姫がTOP3…かな?て、全部パラレルだし(笑))
そんなわけで、落ち込みが深すぎて、うかうかと手を出せない話になっちゃったのでした。
以上、愚痴でした^^
気持ちを立て直して、新しくお話を書き始めたいと思っております。
お付き合い、よろしくお願い致しますね~
ではでは!