こちらは本館が3万HITを超えたことに対する記念短編です。
キョコとお仕事で離れた敦賀さんの独白です。
ではでは、どうぞ^^
キョコとお仕事で離れた敦賀さんの独白です。
ではでは、どうぞ^^
「おーい蓮、どうした?そろそろホテルに戻るぞ」
社にそう声を掛けられ、海に落ちていく真っ赤な夕日を砂浜から眺めていた蓮は、我に返って背後を振り返る。
社にそう声を掛けられ、海に落ちていく真っ赤な夕日を砂浜から眺めていた蓮は、我に返って背後を振り返る。
そこには、蓮の姿を不思議そうに見る社の姿があった。
*SWEET HEART*
「社さん」
「夕日がどうかしたか?撮影が終わってから、随分長い間見てるけど」
首を傾げられて蓮は笑う。
言われてみれば、結構な時間を夕日を眺めることに費やしていたように思う。
「いえ…綺麗だな、と」
答えて周囲を見ると、その周りは最前とは景色を変えていた。
太陽の裾が海にかかり始めた頃終わったCM撮影の撤収が、気が付けばもうほぼ終わるところだった。
蓮はこのCM撮影のため、南国バリに来ていた。
2泊3日の、とんぼ返りに近い日程だ。
蓮の分単位で組まれたスケジュール上そうなってしまうのは仕方のないことで、CM撮影は南国のエキゾチックな雰囲気を背景にした蓮を切り取りながら、スピーディーに進行されて行った。
そんな慌しい仕事の合間に生まれたのが、今のこの時間だったのだ。
昼間の青い空、青い海も綺麗だったけれど、この真っ赤な夕日も格別だと思う。
日本では見ることの出来ないダイナミックな夕日を眺めて、見せてあげたいと強く思ったのだ。
ここにはいない、愛しい少女に。
「…お前、今キョーコちゃんに会いたいなーとか、思ってるだろう」
「……なんでそんなことが分かるんですか、社さん……」
素晴らしいタイミングで切り込んできた社に、蓮は思わず苦笑を漏らす。
そこまで簡単に感情が出る人間ではないと自分を認識していたのだが、違ったのだろうか。
すると社も苦笑気味に笑みを零して。
「何年お前と一緒にいるって思ってるんだ。お前がそういう顔をしてる時は、大概キョーコちゃん絡みだって学習してるんだよ、俺は」
「そういう顔?」
「幸せそうな緩んだ顔。自覚がないあたり、『敦賀蓮』としてはどうかと思うけど」
社の言葉にぱっと掌で口元を覆った蓮は、そのまま白い面に照れた表情を浮かべてしまう。
漸く、本当に漸く、お付き合いなるものをキョーコと始められた蓮にとって、彼女とのことが唯一のウィークポイントとなっていたのだ。
彼女の話を出されてしまうと、途端に『敦賀蓮』の仮面が剥がれてしまう。
そこにいるのは『敦賀蓮』ではなく、愛しく想う唯一の少女にひたすら恋焦がれ続ける、ただの不器用な21歳の青年だった。
そんな蓮に、社は肩を竦めて見せて。
「明日の夕方には日本に帰れるんだ、少しは我慢しろって。キョーコちゃんには帰る時間を連絡してあるんだろう?きっとそれはもう、大喜びで迎え入れてくれるだろうな」
「ええ、今朝連絡したら、夜ご飯を用意して待っていてくれるそうです」
「…おい、それはのろけか?のろけだな…!?この幸せ者が…!日本に帰ったら、キョーコちゃんにここ数日の食生活を聞かれて怒られて来い。全く、キョーコちゃんがいないとすぐに気を抜き始めるんだから…」
そう言うなり苦り切った顔をする社に、蓮は困ったように目元を細める。
「社さん…それは内緒にしておいて下さい、俺が、彼女に絞られます」
「バカだな、それが目的なのに俺がキョーコちゃんに黙ってるわけないだろ?」
そして楽しげに笑い、明日の予定の調整をと言って近付いてきたディレクターと少し離れた位置で話し出した社に、やれやれと溜息を落とした蓮はもう一度、顔を赤く染め上げる大きな夕日に目を向ける。
夕日は地平線に半分ほど身を隠し、赤い空に半円を描いている。
海外に出てからの蓮は、あまり食欲が湧かず、以前の食生活に逆戻りしてしまっていた。
…いや、違う。
『海外に出てから』ではなくて…正確に言えば『キョーコの傍を離れてから』だ。
キョーコと交際を始めて以来、蓮の食卓には常に彼女の存在があった。
傍にいられない時にも、冷蔵庫を開ければ手作りの料理がいつもきっちり詰め込まれているのだ。
交際を始めて以降、彼女が蓮について一番に力を入れ始めたのはその食生活についてで。
『…これまでは遠慮していましたけど、今後はビシビシ行かせて頂きますからね…!』
彼女はそう言って可愛い顔をきりりと締めて、腰に両腕を置き意気込みも新たにしていたけれど、食事については交際前から鬼のような顔で度々怒られていた記憶のある蓮は、『遠慮なんてあったのかな』と思わず考えてしまったのだけど…
それだって幸せな日々だ。
なにせ、その日々にはいつだってキョーコがいるのだから。
彼女がいるだけで、蓮の世界は簡単に変化してしまう。
傍に彼女がいないと思うだけで、途端に食事も味気ないものになってしまうのだ。
…これではまるで、主人に会えないでいる飼い犬のようだ。
蓮は自分のそんな発想に苦笑を漏らす。
キョーコを前にしては、『抱かれたい男NO.1』や『芸能界一のイイ男』と呼ばれる『敦賀蓮』も形無しだった。
完全無欠の『敦賀蓮』が、実は自分をそんな風に思っているなんて…もしもファンが知ったら一騒動起きてしまうところだろう。
けれど…
キョーコなら、そんな自分も笑顔で受け止めてくれるだろうと思う。
『敦賀さんたら、案外寂しがり屋さんなんですね?』
などと照れ臭そうに、でも、嬉しそうに微笑みながら。
細い身体を竦めて、そんな身体からは想像もつかないような包容力で、優しく蓮を受け入れてくれるだろう。
可愛らしいキョーコの笑顔をありありと思い浮かべた蓮は、願うように思ってしまう。
今、ここに彼女がいてくれたら…
食事だけではない、彼女のいる世界は見るもの全てが色を変えてしまうのだ。
今一人で見ても美しいと思うこの夕日だって、きっと隣に彼女がいたのなら、感じる鮮やかささえ違ってくるはずだ。
日本と、ここバリの時差は1時間ほど。
今頃彼女は、何をしているだろうか。
聞いていた今日のスケジュールでは、まだまだ彼女は仕事中のはず。
会いたい。
会って、今すぐ、その身体を抱き締めたい。
心に突き動かされるようにそう考えて…
軽く頭を横に振った蓮は、笑みを零しそっと肩を竦める。
恋とは、人を光の速さで変えていくものだと、つくづく実感する。
仕事以外のものにほとんど興味のなかった蓮が、今では何を見るにつけ、それにキョーコの面影を重ねて気付けば彼女のことばかりを思い出してしまう。
1年前の自分には、こんな自分の変化なんてきっと想像すら出来ないものだっただろう。
太陽みたいな眩しい彼女は、蓮を温かく照らし出しながら蓮をどんどん変えていく。
最近の『敦賀蓮』は完璧なその美貌の中に、柔らかな表情や多彩な表現が多く見られるようになったと評判なのだ。
その理由を知る社長には散々からかわれ、社にはニヤニヤした笑みを向けられ、蓮は大変に居心地の悪い思いをさせられたのだけど…
キョーコの存在感には適わない。
日に日に蓮は、彼女の影響を受けてその雰囲気を変えていって。
…彼女も都内のどこかで、今蓮が見ているものと同じ、落ちていく夕日を見ているだろうか。
自然とまた、蓮の思考はキョーコに引き寄せられていく。
蓮と同じく…隣にいない自分の存在の欠落を、寂しく思い浮かべてくれているだろうか。
自分の抱える寂しさに、ついついそう考えながら…
蓮は社が再び呼びにやって来るまでの僅かの間、空が藍色に染まり、太陽が海に落ちていく様子を眺めていたのだった。
…そして、それから後。
『敦賀さん、お疲れ様です!
バリでのお仕事は如何ですか。
敦賀さんのことだから、完璧なお仕事をされてることと思います♪
ご飯はちゃんと食べてますか?
規則正しい食事は身体の基礎を作るんですから、毎日の一食一食が大事なものなんですよ!
明日帰国されたら内容を教えて下さいね。
そうそう、今日の日本はいいお天気で、夕焼けがとっても綺麗だったんです!
一緒に見れたら良かったな、なんて思って…少し、寂しくなっちゃいました。
明日の帰国を楽しみにしていますね。 キョーコ』
…そんなメールがキョーコから届き、添付されていたビルの谷間に沈む赤い夕日の画像を見た蓮が、理性と戦うかのように組んだ両指に額を当てることとなるのは、それから一時間後のこと。
どうやったら今日中に仕事を終えて日本に帰れるか、真剣な顔で彼が思考を巡らせていたことは…
呆れ顔の彼のマネージャー以外、預かり知らないことであった。
*END*
キョコが好きすぎる敦賀さん。
この後日本に帰った敦賀さんは、キョコに食事の内容を笑顔で吐かされてこってり怒られるんだと思います。
キョコ、最強…★
「社さん」
「夕日がどうかしたか?撮影が終わってから、随分長い間見てるけど」
首を傾げられて蓮は笑う。
言われてみれば、結構な時間を夕日を眺めることに費やしていたように思う。
「いえ…綺麗だな、と」
答えて周囲を見ると、その周りは最前とは景色を変えていた。
太陽の裾が海にかかり始めた頃終わったCM撮影の撤収が、気が付けばもうほぼ終わるところだった。
蓮はこのCM撮影のため、南国バリに来ていた。
2泊3日の、とんぼ返りに近い日程だ。
蓮の分単位で組まれたスケジュール上そうなってしまうのは仕方のないことで、CM撮影は南国のエキゾチックな雰囲気を背景にした蓮を切り取りながら、スピーディーに進行されて行った。
そんな慌しい仕事の合間に生まれたのが、今のこの時間だったのだ。
昼間の青い空、青い海も綺麗だったけれど、この真っ赤な夕日も格別だと思う。
日本では見ることの出来ないダイナミックな夕日を眺めて、見せてあげたいと強く思ったのだ。
ここにはいない、愛しい少女に。
「…お前、今キョーコちゃんに会いたいなーとか、思ってるだろう」
「……なんでそんなことが分かるんですか、社さん……」
素晴らしいタイミングで切り込んできた社に、蓮は思わず苦笑を漏らす。
そこまで簡単に感情が出る人間ではないと自分を認識していたのだが、違ったのだろうか。
すると社も苦笑気味に笑みを零して。
「何年お前と一緒にいるって思ってるんだ。お前がそういう顔をしてる時は、大概キョーコちゃん絡みだって学習してるんだよ、俺は」
「そういう顔?」
「幸せそうな緩んだ顔。自覚がないあたり、『敦賀蓮』としてはどうかと思うけど」
社の言葉にぱっと掌で口元を覆った蓮は、そのまま白い面に照れた表情を浮かべてしまう。
漸く、本当に漸く、お付き合いなるものをキョーコと始められた蓮にとって、彼女とのことが唯一のウィークポイントとなっていたのだ。
彼女の話を出されてしまうと、途端に『敦賀蓮』の仮面が剥がれてしまう。
そこにいるのは『敦賀蓮』ではなく、愛しく想う唯一の少女にひたすら恋焦がれ続ける、ただの不器用な21歳の青年だった。
そんな蓮に、社は肩を竦めて見せて。
「明日の夕方には日本に帰れるんだ、少しは我慢しろって。キョーコちゃんには帰る時間を連絡してあるんだろう?きっとそれはもう、大喜びで迎え入れてくれるだろうな」
「ええ、今朝連絡したら、夜ご飯を用意して待っていてくれるそうです」
「…おい、それはのろけか?のろけだな…!?この幸せ者が…!日本に帰ったら、キョーコちゃんにここ数日の食生活を聞かれて怒られて来い。全く、キョーコちゃんがいないとすぐに気を抜き始めるんだから…」
そう言うなり苦り切った顔をする社に、蓮は困ったように目元を細める。
「社さん…それは内緒にしておいて下さい、俺が、彼女に絞られます」
「バカだな、それが目的なのに俺がキョーコちゃんに黙ってるわけないだろ?」
そして楽しげに笑い、明日の予定の調整をと言って近付いてきたディレクターと少し離れた位置で話し出した社に、やれやれと溜息を落とした蓮はもう一度、顔を赤く染め上げる大きな夕日に目を向ける。
夕日は地平線に半分ほど身を隠し、赤い空に半円を描いている。
海外に出てからの蓮は、あまり食欲が湧かず、以前の食生活に逆戻りしてしまっていた。
…いや、違う。
『海外に出てから』ではなくて…正確に言えば『キョーコの傍を離れてから』だ。
キョーコと交際を始めて以来、蓮の食卓には常に彼女の存在があった。
傍にいられない時にも、冷蔵庫を開ければ手作りの料理がいつもきっちり詰め込まれているのだ。
交際を始めて以降、彼女が蓮について一番に力を入れ始めたのはその食生活についてで。
『…これまでは遠慮していましたけど、今後はビシビシ行かせて頂きますからね…!』
彼女はそう言って可愛い顔をきりりと締めて、腰に両腕を置き意気込みも新たにしていたけれど、食事については交際前から鬼のような顔で度々怒られていた記憶のある蓮は、『遠慮なんてあったのかな』と思わず考えてしまったのだけど…
それだって幸せな日々だ。
なにせ、その日々にはいつだってキョーコがいるのだから。
彼女がいるだけで、蓮の世界は簡単に変化してしまう。
傍に彼女がいないと思うだけで、途端に食事も味気ないものになってしまうのだ。
…これではまるで、主人に会えないでいる飼い犬のようだ。
蓮は自分のそんな発想に苦笑を漏らす。
キョーコを前にしては、『抱かれたい男NO.1』や『芸能界一のイイ男』と呼ばれる『敦賀蓮』も形無しだった。
完全無欠の『敦賀蓮』が、実は自分をそんな風に思っているなんて…もしもファンが知ったら一騒動起きてしまうところだろう。
けれど…
キョーコなら、そんな自分も笑顔で受け止めてくれるだろうと思う。
『敦賀さんたら、案外寂しがり屋さんなんですね?』
などと照れ臭そうに、でも、嬉しそうに微笑みながら。
細い身体を竦めて、そんな身体からは想像もつかないような包容力で、優しく蓮を受け入れてくれるだろう。
可愛らしいキョーコの笑顔をありありと思い浮かべた蓮は、願うように思ってしまう。
今、ここに彼女がいてくれたら…
食事だけではない、彼女のいる世界は見るもの全てが色を変えてしまうのだ。
今一人で見ても美しいと思うこの夕日だって、きっと隣に彼女がいたのなら、感じる鮮やかささえ違ってくるはずだ。
日本と、ここバリの時差は1時間ほど。
今頃彼女は、何をしているだろうか。
聞いていた今日のスケジュールでは、まだまだ彼女は仕事中のはず。
会いたい。
会って、今すぐ、その身体を抱き締めたい。
心に突き動かされるようにそう考えて…
軽く頭を横に振った蓮は、笑みを零しそっと肩を竦める。
恋とは、人を光の速さで変えていくものだと、つくづく実感する。
仕事以外のものにほとんど興味のなかった蓮が、今では何を見るにつけ、それにキョーコの面影を重ねて気付けば彼女のことばかりを思い出してしまう。
1年前の自分には、こんな自分の変化なんてきっと想像すら出来ないものだっただろう。
太陽みたいな眩しい彼女は、蓮を温かく照らし出しながら蓮をどんどん変えていく。
最近の『敦賀蓮』は完璧なその美貌の中に、柔らかな表情や多彩な表現が多く見られるようになったと評判なのだ。
その理由を知る社長には散々からかわれ、社にはニヤニヤした笑みを向けられ、蓮は大変に居心地の悪い思いをさせられたのだけど…
キョーコの存在感には適わない。
日に日に蓮は、彼女の影響を受けてその雰囲気を変えていって。
…彼女も都内のどこかで、今蓮が見ているものと同じ、落ちていく夕日を見ているだろうか。
自然とまた、蓮の思考はキョーコに引き寄せられていく。
蓮と同じく…隣にいない自分の存在の欠落を、寂しく思い浮かべてくれているだろうか。
自分の抱える寂しさに、ついついそう考えながら…
蓮は社が再び呼びにやって来るまでの僅かの間、空が藍色に染まり、太陽が海に落ちていく様子を眺めていたのだった。
…そして、それから後。
『敦賀さん、お疲れ様です!
バリでのお仕事は如何ですか。
敦賀さんのことだから、完璧なお仕事をされてることと思います♪
ご飯はちゃんと食べてますか?
規則正しい食事は身体の基礎を作るんですから、毎日の一食一食が大事なものなんですよ!
明日帰国されたら内容を教えて下さいね。
そうそう、今日の日本はいいお天気で、夕焼けがとっても綺麗だったんです!
一緒に見れたら良かったな、なんて思って…少し、寂しくなっちゃいました。
明日の帰国を楽しみにしていますね。 キョーコ』
…そんなメールがキョーコから届き、添付されていたビルの谷間に沈む赤い夕日の画像を見た蓮が、理性と戦うかのように組んだ両指に額を当てることとなるのは、それから一時間後のこと。
どうやったら今日中に仕事を終えて日本に帰れるか、真剣な顔で彼が思考を巡らせていたことは…
呆れ顔の彼のマネージャー以外、預かり知らないことであった。
*END*
キョコが好きすぎる敦賀さん。
この後日本に帰った敦賀さんは、キョコに食事の内容を笑顔で吐かされてこってり怒られるんだと思います。
キョコ、最強…★
対になるキョコ編もそのうち書きたいですv