2012年となりました!


昇龍興年。


大変なことばかりが続いた昨年でしたが、前を向いて一歩一歩、少しずつでも前進して行きたいです。


皆様にとって、今年がよい年になりますように…v

そして、スキビファンにとっても嬉しい報告のある年になるといいですねえ♪


うん…おくちなんて我儘言わないから、せめてせめて、ほっぺにちゅーくらいはして頂きたいものです。


それでは、新年一発目のSSです。


どうぞ♪


*開戦の合図*


「敦賀さん、あけましておめでとうございます!」


ここはLME社長・宝田の邸宅。

元日早々、騒ぐことが大好きな社長が毎年開く新年のパーティーに出席していた蓮は、そんなふうに声を掛けられ瞳を和ませる。


目線を向ければ、そこには愛しい少女の姿があって。


「最上さん。あけましておめでとう」

「おめでとうございます。昨年はお世話になりました、今年もよろしくお願い致しますね」


言葉を返すと、蓮の目の前に立ったキョーコは快活な笑顔を見せ、蓮へと綺麗な所作でお辞儀をする。


忙しい芸能人も、年末年始のこの時期は休みに入る。

その為、パーティーには招待された映画・TV関係者、事務所所属の俳優・女優・アイドル・タレント、事務所関係者のほとんどが出席していた。


このパーティーを終えてから、海外などへのバカンスに出発する者も数多い。


様々な業種の人間や、期待のこもった眼差しを向けてくる女性陣からの挨拶を上手く捌いたところに、彼女が現れたのだ。


安堵の吐息を漏らした蓮は、そんなキョーコの姿を見て表情を綻ばせる。


「最上さん、綺麗な着物だね。よく似合ってる」


キョーコは赤の地に百花を優美に染め上げた古典柄の着物を纏い、金糸銀糸で織り上げた見事な帯を締めていたのだ。


髪を綺麗にまとめ、赤い花と真珠を散りばめた髪飾りを挿していて、初々しい薄化粧の面に華やかな彩を加えていた。


着物を着慣れているキョーコらしく、着付けが素晴らしく板についていて…

豪華な着物と相まって、パーティー会場にも数多いる着物姿の女性の中でも群を抜いて、多くの人目を惹き付けていた。


そんな蓮の褒め言葉にキョーコは頬を染め、表情を綻ばせる。

恥ずかしそうなその笑顔に、蓮の目線は簡単に釘付けになってしまう。


蓮が想いを寄せている少女は、彼の心を引き寄せるのが得意なのだ。


可愛らしい笑顔はそれだけで、蓮の心を浮き立たせる。


「ありがとうございます、敦賀さん。凄く素敵なお着物でしょう?お陰で、いろいろな方から褒めて頂けてます」

「着物だけじゃない。君が綺麗だから、皆が褒めるんだよ」

「もう、また敦賀さんたら…相変わらずお上手なんですから」

「…君も、相変わらずだなあ…」


彼女は相変わらず手強い。


何を言っても本気にして貰えない蓮は、難攻不落の城みたいな少女を前にして、苦笑を漏らすしかない。


でも、心を決めた今だからこそ、もう焦るつもりはない。

長期の戦略を練って、この可愛らしい城を攻め落とすと、決めているのだから。


「その着物はどうしたの?事務所の持ち物…では、ないようだね」


キョーコにノンアルコールの飲み物を取って来て手渡し、抱いた疑問を問いかけると御礼を口にした彼女は嬉しそうに瞳を細める。


「はい、あの…実は、年末にだるまやに送られて来たんです…先生から」


『先生』


キョーコから親愛を込めてそう呼ばれる男性の顔を思い浮かべて、蓮はぎしりと身体と表情を強張らせる。


「先生…つまり、Mr.ヒズリ…?」

「はい!いきなりだったんで驚いちゃいました…呉服商の方が、桐箱に入ったお着物を届けに来たんですよ…?どうしても受け取って貰えないと帰れないって言われて、受け取るしかなくて」


その時を思い出したのか、眉尻を下げたキョーコは困ったように微笑んで。


「先生からのメモが入っていたのでお電話を入れたら、プレゼントだって、今日のパーティーに来て行ってくれって仰って…こんな凄いお着物、そんな簡単には頂けないでしょう?だから頂けませんて言ったら…敦賀さん、先生、なんて仰ったと思います?」

「…さあ、なんだろう?思い浮かばないな…」


よくない内容なら、いくらでも思い浮かぶんだけど。


そう思った蓮は、キョーコの隣で1人、緊張感を漲らせてしまう。


…するとキョーコは、仕方がないというような苦笑をその面に浮かべて見せて…


「先生ったら、『じゃあ、お礼にわたしの息子のお嫁さんになってくれないかな?』って。『そうすればわたし達はちゃんとした親子になれる』って仰るんです。先生の息子さんはクオンさんですよね?私、クオンさんてお亡くなりになってるものだと思ってたんですけど…違ったんでしょうか?」


小首を傾げ、そんなことを言ったのだ。


眩暈を覚えた蓮は額を抱えたくなったが、意志の力でそれを抑え込む。


「…きっと、君が遠慮しないようそう言ったんじゃないかな。お茶目な方なんだね、Mr.ヒズリは…」

「そう思ったんですけど、なんだか声が本気な気がするんです…どうしたんでしょうか、先生ったら。これも、演技の勉強の一環なんでしょうか?」

「ああ、さすがハリウッド俳優だね、そう言うことにも力を抜かないなんて」


怪訝そうなキョーコにそう言って微笑んで…


個人活動に出てきたかと、蓮は内心で顔を顰めてしまう。


極秘であるが実は蓮の実父であるハリウッド俳優のクー・ヒズリは、蓮とは別のルートでキョーコと知り合い、彼女を自分の『息子』と呼んで酷く気に入っているのだ。


そしていつの間にやら蓮の気持ちも知っていて…


彼女が『実の娘』になることを、心待ちにしているようなのだ。


どうやら父は、早々に痺れを切らし出したらしい。

長期戦を狙っている息子とは違い、短期での事態の収束を目論んでいるようで。


だけど、彼は機を読み違っている。


なんせ、攻略対象の少女は。


「嫌ですね、もう、先生ったら。お嫁さんなんて…そんな恐ろしいものに、私がなるはずないじゃないですかね?うふふふふ…」


愛らしい面に冷えた笑顔を張り付かせ、冷えた笑い声を漏らすキョーコに蓮は瞳を細める。


これが、彼女の難攻不落の城を更に囲い込む高い城壁なのだ。

攻め込もうにも、その壁は強固で頑なで、攻め入る隙を中々見せない。


可愛らしい強敵を眺めて、蓮は口の端をそっと引き上げる。


一騎打ちの相手としては、何の不足もない。


今年こそ、その壁を打ち壊し、城の扉を彼女自身に開かせて、最奥にある宝物をこの手にして見せる。


もう、心を偽るつもりも、彼女を逃がすつもりもないのだから。


「最上さん、今年もよろしくね?」

「はい、私こそ、お願い致します」


そして、隣に立つキョーコと微笑み合った蓮は…


かちりと掌の中のグラスを彼女と合わせて、それを、開戦の合図としたのだった。





*END*



わーお、ちっともめでたくないし、可愛くないもなければ微笑ましくもない^^


敦賀さんの年頭の抱負です。


頑張って、敦賀さん!!

そのお城は本気で難攻不落よ!なんせ10年ほど、あなたの猛攻にも落ちてない!(涙)


SWEET!は、そんなあなたを全力で応援致しております。


はあ…今年こそ、本当にせめて頬ちゅうくらいはお願いします、仲村先生…

この際、もう、事故とかでもいいですので…!(…)



ではでは、ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございましたv