ずっと気になってた関西手話カレッジさんの本。地元の図書館にはなかったのですが、県内の図書館にはあるとのことで、取り寄せてもらいました〜

ろう者のトリセツ聴者のトリセツ―ろう者と聴者の言葉のズレ/星湖舎

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同じ日本で生まれ日本で使われている言葉だけど、日本語と日本手話は全然違う言葉(ちなみに日本語対応手話は、言語学的には日本語に分類されるらしい)。同じ言葉(ろう者が手話を表す際に口形として表す言葉も含め)を使っていても、それぞれのニュアンスは違ったり、お互い別の意味で解釈していたりすることも。

この本では、聴者が使う言葉を「聴語」、ろう者が使う言葉を「ろう語」として、そのズレを探ります。実際に関西手話カレッジさんのろうスタッフと聴スタッフの間で起きたズレを集めたとのことで、具体的な場面をあげて、ろう者はあの意味で使ったが、聴者はこの意味でとった(もしくはその逆)ということが説明されていて興味深いです。

例えば、
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聴語の「新しい」には、そのもの自体が新しいという意味と、「自分にとって初めて」というもう一つの意味があります。しかし、手話の「新しい」は大阪弁でいう「さらっぴん」とか「経験のない、または浅い」(人に使う場合)という意味ですから、ろう者からすると不可解な聴語文が多々あります。
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確かに言われてみると、(昔から着ていても)洗濯した服は新しい服と言ったり、(最近開発された新薬でもなくても)別の薬というだけで「新しい薬」と言ったり、表現として使っていることが多々あることに気づきます。

また、手話の顔の文法や音韻、また聴者の文化(謙虚・控えめ、察しなど)にも触れられていて、同じ言葉でも表現の仕方によって、ずいぶん印象が変わるものだなぁと。
英語などほかの言語でも時々思うけど、自分の持っている(日本語の)感覚で別の言語を「訳す」というのはハイリスクと思う(誤解を招きやすい)ので、注意したいと思います。

「おわりに」には、ズレを学ぶ(知って認める)ところから手話は日本語とは違う独立した言語であることを実感していただきたいとあります。ともすると「どちらが正しい」という議論になりがちですが、この本ではこういうズレがあることがわかったよ、面白いね、注意しようね、というスタンスで、違和感や反論の意見も受け付けるとのこと。面白い取り組みだなぁと思いました。