Strawberry Cake 11 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。



小さな小指と小指が絡んだ時



ある約束を交わした



その約束が何なのかなんてわからない




ただどうしようもない絶望の中で





孤独な私はそんな夢を繰り返し繰り返し見ていた





trawberry Cake 11





「・・・・・・・・。」



「・・・・・・・・。」





カラカラ・・・・




自転車のタイヤの回転音がゆっくりと耳に入ってくる。



時間によって顔の違う通学路はやけにその音を響かせた。



静けさが朝の訪れを感じさせる。




自転車に乗った二人は無言だ。







「もう・・・・大丈夫だなんて言わせねぇから。」


「言っただろ?・・・・辛い時は辛いって・・・声に出していいんだよ。」



「・・・俺の事利用してくれて構わねぇから・・・だから・・・・今はこうさせてくれよ。」






先程の赤羽の台詞が蘭の脳の中で何度も繰り返される。



抱きしめられた腕は強くて。



壊れかけた自分を支えてくれるには十分のものだった。




けれど蘭には赤羽の台詞にも行為にもどんな答えを出すべきなのか辿りつくことは出来ない。






しばらくしてからそっと離れた二人に多くの会話はなく蘭は赤羽の厚意に甘え登校を共にしている。






「・・・・もっと掴まっていいからな?」




ふいに前から言われた言葉にはっとする。




「・・・・・・・う・・・ん。」




しかし蘭はどうしても手を彼の背に回す事は出来ず、荷台を必死に抑えて堪えた。







いつかの彼とのやりとりを思い出す。






「・・・・坂だからちゃんと掴まってろよ?」


「え?あ、うん。」


「・・・・ちげーよ、こっちだって。」


「へ?・・・・・きゃ!」





それは新一に送迎をしてもらったあの日の会話。


ぐっと引っ張られた腕は彼の腰に引かれ、そのままの勢いで彼に抱きついた。



その時の自分とは思えない程取り乱した感情は今でもはっきりと覚えている。




手を一杯に回さないと覆えない程大きな身体。


どちらかというと細そうなのにしっかりとした体付き。


ふと香る彼の匂いは自分と同じシャンプーの香りで一緒に暮らしているのだと意識させられた。



年下のくせに。


ちゃんと男の人で。


年下のくせに。




ただ私の心を惑わすんだ。




年下のくせに・・・・。





そして今目の前にある背中もとても大きい。



とっても男の人で。

自分とは全く違って。

頼りがいがあって。


先程の行為も混ざって、私の心を乱すけれど。







違う。





違うんだ。







きっと彼の言葉に甘える事は簡単だ。





でも。







どうしてだろう。



何でだろう。








何で人は時々難しい道を選んでしまうんだろう。


その道の先には何もないかもしれないのに。







そうして蘭はただ赤羽の背に向かって。






「ごめんなさい。」





そう心の中で唱える事しか出来なかった。








:::






「ねね、蘭って赤羽君と付き合ってるの?」



「え?ちっ違うよ!」



「えーなんか最近自転車で二人乗りして一緒に登校したり、仲よさげじゃん。」



「私が足怪我したのを心配してくれて気を遣ってくれてるんだよ。」



「なんとも思ってない子に普通そこまでしないでしょー?時間の問題だね、付き合ったら教えてよ!じゃーね!」



「あっ・・・だから違っー・・・・・。」




朝から何度こんなやりとりをしただろうか。






赤羽との交際を否定するだけならまだいい。



しかし、それに加えて、新一の話題まで浮上してしまっている。




先日一緒に登校していた中学生は彼氏じゃなかったのか。




一体どっちが本命なのか。





それを否定する自分がどれだけみじめか。




周りからひやかしの目で見られ今日は一日居心地が悪かった。





やっと放課後になって人の少ない廊下の壁に寄りかかった。




「はぁー・・・・。」





俯いた先に包帯をした足が見える。






随分、足を庇う生活にも慣れた。






でも今日みたいな生活には慣れそうにもない。






「やっぱり、ちゃんと言わなきゃ・・・・だよね。」







ポツリと蘭が呟いた時ふと足音が聞こえ顔を上げた。




少し先に見覚えのあるスーツに身を纏った教師の姿が目に入る。




そちらも蘭に気付いたようで笑顔を浮かべた。






「君、昨日の!・・・えと・・・・毛利さんだよね?昨日はありがとう。」



「柏村先生・・・・いいえ。」



重そうな資料を抱えた柏村を見た蘭は自然とおせっかい癖が飛びだす。



「あの・・・良かったら手伝いますか?」



「え?あぁ!大丈夫だよ、これくらい・・・・・あ、出来ればそこの資料室のドアを開けてもらえると有り難いかな。」




10メートル程先の資料室を荷物を抱える手の指を器用に動かして示す。




「わかりました。」



蘭は軽く微笑むとゆっくりと柏村と足を進めた。





「そういえば、昨日鈴木さん?が言ってたけど・・・毛利さんは一人暮らし長いの?」



「あ、えと・・・・去年からだから1年以上は経ってますね。」



「へぇ~・・・家は学校から近いの?」



「はい、歩いて来れる距離です。」



「じゃぁ、いいね。そういえば今日は彼氏君と一緒に登校してたね、仲が良くていいね~。」



「そっそんな・・・彼なんかじゃないので・・・・。」



「そうなの?でもー・・・」



「ー・・・毛利さん。」



「え?」




柏村先生との会話中突然誰かに呼ばれて振り向くと、そこにいたのはー・・・



「宮野・・・さん?」



思いもしない人物からの呼び出しにただ蘭は驚く事しか出来ない。



「ちょっと・・・いいかしら?」



大人びた落ち着いた声にそう言われて蘭は思わず頷いて柏村に会釈をするとその場を後にした。

志保のそばに行った蘭は何を言われるのかと困惑していたが一向に志保が口を開く様子がない。

不思議になった蘭が口を開く。



「あ・・・・あの・・・私に何か用ですか?」



「えぇ、そう思ったんだけど、忘れちゃった・・・ごめんなさいね、気にしないで。」



そう言うと志保は蘭の横を過ぎ去ろうとした。



理解しがたい行動に小首を傾げた蘭だったが、はっと何かを思い出したように過ぎ去る志保の腕を咄嗟に掴んだ。



「・・・・・・?」




ドクン


ドクン



蘭の心臓の脈拍が少しずつ上がって行く。



無表情で振り返った志保の顔に思わず怯んだが蘭は決心したように口を動かした。




「・・・・・・・新一君がどこに行ったか知りませんか?」




目を瞑って返答を待つ。






「あぁ・・・・彼?彼ならー・・・・。」





志保は言いかけてから数秒動きが止まった。



そして少しだけイタズラに微笑んだ後、




「・・・・・・どこにいると思う?」




全て見透かしているような瞳で見られて蘭は戸惑う。




ドクン


ドクン






「・・・・彼なら私の所よ。」




口角をあげて微笑む志保にドキッとする。




「え?」




「会いにくる?」




「・・・げっ元気ならいいんです!・・・・じゅっ受験頑張って・・・って伝えて下さい。」



蘭はそう言って走り去る。




足を庇いながら必死に走る蘭の後ろ姿を見届ける志保は呆れたようにため息をひとつついた。





「全く・・・・どれだけお人よしなのかしら。」






:::




「・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・きゃっ!」




足がもつれて壁に寄りかかるように倒れ込む。




足が痛い。



ジンジンと痛む。



「・・・・・・っ。」





本当は立っているのもやっとだった。


今すぐ泣きだしそうだった。


やっぱりという感情が頭の中をかけめぐり涙腺を痛めつける。




彼と彼女は一緒にいる。




約束をした二人が共に過ごしている。


思いが通い合った二人が。




最初から決まっていたんだ。





私に入る隙なんてなかったのに。


どこかで期待していた自分が恥ずかしかった。




「馬鹿みたい・・・・。」




フッと小さな笑いが零れた時。






「ここにいたのね。」




「・・・・?」




数人の見知らぬ女生徒が目の前に立っていた。




「ちょっと私達毛利さんに話があるんだけどいいかしら?」



「話?」




蘭はその女生徒達の鋭い目つきに何かを感じ取り、ゆっくりと身体を起こして立ちあがった。




「率直に言うけど。」



リーダー的な子が一歩前に出て蘭を睨みつけながら口を開いた。




「赤羽君に近付かないで。」




「・・・・・え?」




「赤羽君のせいで足を怪我しただかどうだか知らないけど・・・・部活が忙しい彼に自転車で登下校の送迎までさせて何様なわけ?」




「・・・・・・・そっそれは・・・・。」




「大体その足もどうなの?本当は治ってるんじゃないの?」




「ちがっ・・・!!」




ドンッ




「・・・・ーっ!!」




突然一人の女性とが蘭を突き倒した。



足の痛みのせいで力が入らないためその場に倒れこんでしまう。




「とにかく、赤羽君は迷惑してるのよ、今後一切、彼に近付かないでよね。」




蘭のみじめな姿を見て満足した女生徒達はそう言い去って姿を消した。





ズキン



ズキン




また足の痛みが増していく。






「・・・・はは。」




思わず笑いが零れる。








「みんな、私なんて・・・・邪魔なんだ。」






空を見上げる。





夕焼けが目にしみる。







頬に何かが伝う。








「・・・・・・・・っ・・・・だ・・・・。」








「・・・・・・も・・・・や・・・だ・・・・・。」







視界は一気にぼやけて。





両手で顔を覆った。









もう何も考えられない。




何も考えたくない。







逃げたい。





全てから。























「・・・・・・・・毛利?」




「・・・・・・・っ?」










どうして?


どうして、いつも。










「・・・・・何でまたそんな顔してるんだよ。」







甘えちゃいけない。




そう必死に言い聞かせているのに。





「あ・・・・・か・・・・ばくん・・・・・・。」





ごめんなさいの言葉しか贈れないはずなのに。









私はまた差し出された手をとってしまう。










ホラ、やっぱり私は悪い女だ。








:::








阿笠邸ー・・・





「・・・・ただいま。」


「おー志保君、おかえり!今日は少し遅かったのぉ。」


「えぇ、ちょっと調べものがあったから・・・。」



静かに帰宅を告げた志保に阿笠博士が笑顔で返す。



「彼は?」


「さっき帰ってきて隣に行ってるよ。」


「そ、のんきなものね。」


「彼の所に行くのなら、もうすぐ夕飯だと伝えてくれんか?」


「・・・・・わかったわ。」


着替えた志保は阿笠邸を出て隣の邸宅へと足を運ぶ。


大きな洋館が木枯らしの中に聳え立つ。


大きな扉を開けて中に入る。




「入るわよ。」



書斎のドアを開けるとその部屋の中には一面を埋める本の山。


正面にある机の椅子に座る少年。



「・・・・受験生の自覚ある?」


「・・・・あぁ、宮野帰ってきたのか・・・。」


「そんな余裕こいてると足元救われるわよ。」


「バーロ、息抜きだよ、息抜き。」


「その息抜きと勉強の時間どっちの方が長いのかしらね。」


「うっせーなぁ・・・なんか用でもあんのかよ?」


「別に?ただ伝言を預かったから伝えにきただけよ。」


「伝言・・・・・っ蘭か?」





伝言と聞いたとたん目の色が変えて状態を起こした少年に志保は驚きつつも呆れた。





「たく、そんなに気になってるなら早くどうにかすればいいのに。」


「・・・・・っお、俺にも色々あんだよ・・・・それで?何だって?」


「元気なら良かった、受験頑張ってね。」




機械のようになんの感情もなく流れたその言葉に一瞬。



「そ・・・それだけ?」


「えぇ、それだけ。」


「あぁ、あと、あの赤羽とかいう人に今は送迎してもらってるみたいよ。」


「・・・・・。」


「それから・・・こないだついに彼と接触してたわよ。そろそろ警戒した方がいいかも。」


「何?」


「・・・・そっちは進んでるの?」


「まぁな・・・十中八九間違いない。」


「予想が的中しなければいいけど。」




志保は書斎のドアをゆっくりと開き出て行く間際にゆっくりと振り返り新一に声を掛けた。



「さぁ、名もなき騎士様がこれからどうするのか見ものね・・・楽しみにしてるわよ。」



「・・・・・あのなぁ・・・・。」



「どうでもいいけど、もうすぐ夕飯だから・・・・じゃ。」




バタン




「飯かぁ・・・・・。」




天井を見上げる。


その先が思ったよりも暗くて、遠くて不思議に見えた。



ゆっくりと目を閉じて思いだす。





嫌だ。




と身体を震わせて怯えていた。






どうしてあんな行動をとってしまったんだろう。

ただ怯えさせるだけだとわかっていたのに。


けれどどうしても抑え切れなくて。


目の前に彼女の存在があって。
その存在が奪われそうになって。


とてもじゃないけれど黙って見ていることなんて出来なくて。


もっと違う形で彼女に伝えたかったのに。


どうしてこうなってしまったんだろう。



彼女は今どうしているのだろう。



例の男と・・・・うまくいってしまったのだろうか。



大体。



彼女が記憶をなくした時から決まっていたのかもしれない。



俺達が交わる事はないという事は。





変わらず天井は暗い。



そのまま目を瞑った。







「アイツの飯・・・・食いてぇなぁ・・・・・。」






ポツリと呟いた一言はその遠い天井の奥へと消えていった。









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:::後書き



お待たせしましたーーーーーーー!!


やっと書けました。

なんかどうなったか自分に記憶がありません;;

とにかくなんとかしてこの11話は仕上げたかった・・・。


お待たせした分の期待は裏切ってしまっているかもですが・・・


必死に書きあげました。


こんな頭使ってかいたの久しぶりです。



なんかぐじゃぐじゃとした11話となっていますが、色々とクライマックスへ向かってきている・・・はず?


赤羽君との関係はどうなってしまうのか?



ていうか新一が出てこないせいで赤羽目立ちすぎだ。



新ちゃん影うす!



とにかくこの調子で続きもサクサクッと書いてしまいたいです。



本当に、あと少し。。。あと少しだけお付き合い下さいませ。







2012.08.07 kako