Strawberry Cake 12 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。




この手を取る事は簡単でしょう




いつでもそう


楽な道か苦の道か


この二つの選択を求められて私達は生きている




また答える時がきた




この手を取る事はどちらの道に繋がっているんだろう



けれど違う道をたどったから先にあるものが必ず違うわけではないと思う


どちらの道を選んだとしても求めるものが同じであれば


いつかはどちらの道も同じ場所に繋がってる



そう信じている







Strawberry Cake 12





「ねぇ?聞いた?」


「聞いた聞いた!あの通り魔事件でしょ?」


「そう!こないだの被害者、杯戸高校の生徒だったらしいわよ。」



ある朝の帝丹高校ではこの話題で持ち切りだった。

この緊急事態で全校集会が行われた。

まさかの出来事に学校中が大騒ぎだ。


「えーニュースにもなっていると思うが、つい最近の通り魔事件で、杯戸高生が殺害されるという事件が起きた。日に日に我が校の近くでの犯行が増えている。」



生徒指導の先生が演台の前に立ち、口にする言葉に全校生徒が注目する。



「犯人はまだ捕まっていないという事で先日警察から登下校中等の厳重注意の知らせが届いた。」



ざわつく体育館内。



「しばらくの間は部活動は中止し一斉下校となった。特に女子生徒は一人で帰る事がないよう十分に気をつける事。また、寄り道等の行為も禁止する。」



思いもしない事態に先程まで好奇心で話していた生徒たちも困惑した表情へと変わっていった。




:::



集会が終わり教室に戻っていた時、後ろからきた園子が蘭の横に並び一緒に階段を降りながら話始めた。



「・・・蘭、本当に気を付けなよ、あんた一人暮らしなんだし・・・。」


「アハハ、大丈夫だよ。もし襲われても空手でやっつけちゃうから!」


「笑いごとじゃないわよ・・・まぁ、大抵の奴なら蘭にやられちゃうと思うけど・・・・・ていいうかそんな殺人鬼ほったらかして日本警察は何やってんだか・・・

あ~ぁ、一斉下校なんか言ってないで、しばらく休学にしてくれればいいのに。」


腕を組みながら不満を口にする園子に思わず苦笑する。



「まぁ、でも蘭の場合赤羽君がいるし、大丈夫か!」


「え?」


「ホラ、自分が傷つけてしまった足が癒えるまで・・・と、いかにもな理由をつけながらの愛の送迎があるじゃない?」


「あ・・・・・あぁ・・・・あの、園子・・・・その赤羽君の事なんだけど・・・。」



「ん?・・・・と。噂をすれば王子様の登場ね。」



え?と園子の視線をたどると階段の下に赤羽が立っていた。



「じゃー、先教室戻ってるわよ!」



そう言うと肩に手をついきて耳に囁いた言葉に驚きながら呆然とその場を去ろうとする園子の後ろ姿を見送った。






ー「前に進めない恋愛より、今目の前にある恋愛に目を向けるのもいいんじゃない?」ー





「・・・・前に・・・進めない・・・。」





ぼうっとしていると赤羽が蘭を呼んだ。

はっとして蘭は残りの階段を降りはじめた。






:::





「毛利、今日からまたしばらく送るよ。」


「あ・・・・でも、もう足は大分よくなったから・・・・。」


「足はいいとしてさっきの話聞いてたろ?」


「でもそんな、私が赤羽君独占したら申し訳ないよ。」


「俺は独占されて嬉しいけど。」


「・・・・・・。」



廊下を並んで歩きながら会話をする二人。

赤羽の淡々とした様子にただ戸惑う事しか出来ない。




「・・・あの・・・赤羽君、私ー・・・。」


「・・・わかってる。」




立ち止まって口を開いた蘭の少し前に進んでから赤羽も立ち止まった。



その後ろ姿は一向にこちらを振り向く様子はなかった。





「あの日の毛利の言葉・・・・ちゃんとわかってるよ。」




「・・・・・・・・。」





しばらくの沈黙が妙に居心地が悪かった。





「・・・・・でも・・・言ったろ?」




ゆっくりとこちらを振り向く。





「・・・・・簡単に消せる気持ちじゃねーんだ。」





苦笑しながら告げられた言葉に胸が痛む。




こんなにも一生懸命に向けてくれる気持ちを冷たく拒絶することしか出来ないのだろうか。





例え答えられなくても。




まっすぐな気持ちにはまっすぐに答えるべきではないのだろうか。






「まぁ、単なる俺の我侭だから毛利は気にすんなよ、どうしても嫌だっていうならしょうがねぇけど。」




本当に俺しつこいよな、と頭をかく赤羽を見て蘭は少しだけ気が緩んだ。



そうだ。


私の中には決まった真実がある。

だったら、何も恐れる事はない。




もしかしたら自分たちに新たな関係を作るチャンスかもしれない。





そのまま自然と微笑みかけていた。





「・・・・・じゃぁ、お言葉に甘えて・・・・よろしくお願いします。」






:::




放課後ー・・・



6限目が終了するとすぐに一斉下校を知らせる校内放送が流れ、生徒たちは荷物をまとめ教室から出始めた。



「蘭、今日帰りどうする?蘭がよければうちの車で送って行くけど。」



「ありがとう・・・でも・・・・。」



園子から提案に先程の赤羽とのやりとりを説明する。



「そっか、じゃぁ今日は赤羽君が送ってくれるのね?」



「うん、今日だけは・・・お願いしようと思うんだ。」



「今日だけじゃなくて・・・ちゃんと彼氏としてこれからずっとお願いすればいいのに。」



「だから、赤羽君とはそういうんじゃないんだってば!」



もったいないのー・・・と園子は残念そうにする。




自分でもわかってる。


彼がどれだけ自分にとって大きな存在かって事くらい。


けれど、もう決めたんだ。




あの日。




もう全てが絶望に感じて。

全てのものから逃げたいと辛くて仕方のかったあの日。



彼の優しさのつまった手をかしてもらった時。





決めたんだ。






私が選ぶ道を。







:::





一斉下校となり昇降口にはいつもよりも生徒があふれていた。


園子と別れ、人ごみの中、靴を取ろうと靴箱に手をかけようとした時突然グッと腕を引っ張られた。




「えっ・・・・!?」




人ごみから少し離れた場所に出たと思うと手を引いた人物が視界に入った。





「あ・・・・宮野・・・さん。」




トクン。




彼女を見ただけで胸がざわつく。





「・・・・・随分と嫌われたものね。」




蘭の様子を見た志保がおかしそうに口を開いた。




「そっそんな・・・嫌うだなんて・・・・。」



「別に人にどう思われようが私は構わないけれど・・・・・とりあえず用件だけ伝えておくわね。」



「用件?」




すると志保は制服のポケットから一枚のメモ用紙を取り出し蘭に差し出した。




「・・・・これは?」




「今、彼がいる所が書いてあるわ。」



「え?」




「あなた、彼に言いたい事あるんじゃないの?」




「・・・・・・・。」




「このメモを利用するかしないかはあなた次第よ。」





それじゃと言って志保が蘭の横を過ぎ去ろうとした時、蘭は受け取ったメモをギュッと握りしめて口を開いた。





「私・・・に会いに行く権利なんてないです・・・・・。」




志保が立ち止まる。




「新一君は私になんか会いたくないから出て行ったんだろうし・・・・それに新一君には・・・・アナタがいてくれるから・・・・だから・・・。」




メモはどんどん元の形を失っていく。

まるで自分の気持ちのようだ。




「・・・・馬鹿ね。」



「・・・・?」



「一体何を勘違いしているのかしら・・・・いい迷惑だわ。」



「・・・・・・え?」



「言っておくけれど、彼と私はあなたが思うような関係じゃないわよ。」



「・・・・・・・。」



「・・・・・それにあなたは、私という存在を理由に彼からただ逃げているだけじゃない。」



「・・・逃げ・・・・てる?」



「まぁ、彼も同じようなものだけど。」



身体は前を向いたまま少しだけ横を向いて話す志保の言葉に全神経を集中させる。





「確かめたい事があるなら全て彼に聞いてちょうだい。」




「・・・・・宮野・・・・さん。」



「それから・・・被害妄想の愚か者には気をつけることね。」



「え?」



そう言うと志保はさっさと歩きだし蘭の前から消えてしまった。


志保の言った意味が全く分からず小首をかしげていると後ろから肩を叩かれた。



「・・・・・柏村・・・先生?」



驚いて振り向くとそこにいたのは柏村だった。

蘭は持っていたメモをポケットにしまった。



「毛利さん、何してるの?もうみんなどんどん帰っているよ。今日の集会で話は聞いただろ?ほら、早く帰らないと。」



「あ、はぁ・・・・。」



「・・・毛利ー!」



「あ、赤羽君。」



正門で待ち合わせをしていたが、ちょうど赤羽も昇降口に辿り着いたようで手をあげて蘭を呼んだ。



「わり、待たせた?」



「大丈夫だよ、ちょうど今から行こうととしてたの。」



「そっか。」



蘭達のやりとりを見ていた柏村が口をはさんだ。



「そうか、君達付き合ってるんだよね、彼がいるなら毛利さんも安心だ。」



「いや、別に俺達付き合ってないっすよ。」



「え?付き合ってないのに一緒に帰ってあげるんだ?」



「いや、ただ俺が送ってやりたいだけなんで・・・・じゃ、失礼します。」



赤羽はそういうと蘭の腕を引いて昇降口へと歩きはじめた。



「え?あ・・・・先生、さようなら。」



蘭は驚きながら柏村に会釈をして赤羽の隣へと急いだ。



「はい、さようなら・・・・・。」




ニコニコと笑いながら柏村は二人を見送る。





「ちょっと・・・毛利さんまた赤羽君と帰ってるよ!」


「え?本当だ・・・・ていうかあの子、こないだ中学生の男の子にも送迎させてたんでしょ?」


「そうそう、しかもかなりのイケメンだったよ。」


「大人しい顔して、男好きって・・・・イメージ変わるんだけど。」


「なんかショックー・・・。」




すぐそばで蘭達の姿を見つけた女生徒達の会話を聞いた柏村はスーツのポケットに手を入れて微笑した。




「ふーん・・・・。」






:::




二人並ぶ帰り道。




「・・・・俺、今日は歩きなんだけど・・・足、大丈夫か?」



「うん、もう全然平気だよ、病院でも予定より治りがいいって言われてるし。」



「そうなんだ、さすが毛利だな。」









しばらく他愛のない会話をしながら歩いていると、ふとした時に赤羽が立ち止まった。

それに気付いた蘭も同時に立ち止まる。




「今日はさ、俺の決心を・・・・どうしても毛利に伝えたかったんだ。」



「決心・・・・?」



「あの日・・・・毛利からの返事聞いて・・・・俺なりに決めた事。」



「あの日ー・・・・・?」






:::





全てのものに絶望を感じて。

ただ逃げ出したい。



そんな時、目の前に差し出された手に蘭は自分の手をそっと重ねた。


立ち上がらせようと赤羽が手に力をこめるが蘭が立ちあがる気配が一向にない。


不思議に思った赤羽はそっと蘭の顔を覗こうとした。






「・・・・毛利・・・?」




「・・・・・・・・・・赤羽君・・・・ごめんなさい。」



「え?」



「私・・・ずっと赤羽君に甘え過ぎてた。」



「毛利?」




「人を好きになるなんて・・・初めてで・・・・自分の感情にコントロールがいなかなくて・・・赤羽君にも随分ひどいことしたよね。」




「辛い事ばっかりで、うまくいかなくて・・・・赤羽君の優しさ利用して・・・・・。」




「何回もこの優しい手をとってしまおうかって・・・悩んだ。」




俯いたまま、赤羽の手をぎゅっと握りしめた。



「でもっ!・・・・・・でもね?」




「・・・・・・・。」



「やっぱりどうしても変わらないの・・・・・。」




「私の中にいるのは・・・どうしても・・・・。」




どんなに辛いと思っても・・・・


どんなにうまくいまかない恋だとわかっていても・・・・



思いだすのは彼との楽しい日々。


彼に惹かれた日々。




それを思い出す度、彼への感情は途切れる事なく溢れてくる。






「・・・わかってるよ、アイツの事が忘れられないんだろ?」




赤羽の声にピクッと蘭は肩を震わせる。



蘭は赤羽を顔を合わせられぬままただ、一つの言葉を口にし続けた。





「・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・ごめん・・・なさい・・・・・ごめっなさい・・・・・・・。」




「毛利・・・・・」




「ごめんなさい・・・・ごめんなさ・・・・・ごめんなさい・・・・。」




「毛利・・・やめて・・・・頼むから・・・・。」





グッと握っていた手に力をこめて蘭は告げた。






「・・・・・私・・・・この手を取る事は出来ない・・・・。」





そう言って赤羽の手から自分の手を落とした。






「・・・・・毛利・・・・毛利がさ、簡単にこの手を取れないのと同じでさ・・・・俺だって・・・簡単にこの気持ち消す事は出来ないんだよ。」




「・・・・・・・・。」




「でも・・・もう何もお前に求めたりしないから。」




「・・・・・・・・っ?」




「俺、そんな器用じゃないからさ、時間はかかると思うけど、今までとは違うカタチでいいから・・・

たまにお前の側にいさせてくれよ。」




座った蘭の前に座り込んだ赤羽は白い歯を見せて眉を下げて笑って口にした。




「友達でもいられなくなるんて・・・さみしすぎるじゃん?」






「・・・・・赤羽君。」




涙で目をいっぱいにした蘭はつられて微笑んだ。




:::





あの日の出来ごとを思いだして、蘭は鞄を持つ手に力を籠めた。


自分なりの決心の日。




「・・・俺、やっぱり毛利の事、すげー好きなんだ。」


「・・・赤羽君。」


「でも・・・多分、俺が毛利の事幸せに出来る事はないと思う。」


「・・・・・・。」



何だか目頭が熱くなった。



「毛利の事幸せに出来るのは誰かって事くらい・・・・さすがにもうわかってる。」


「・・・・・っ。」


「本当はソイツの事、すっげー憎くたらしくて、ただ悔しいけど・・・・・。」




赤羽は蘭に背を向ける。





「・・・・もう譲る事にした。」




ただその背を見つめる。




「・・・・・・だから、頑張れ、毛利。」




「っでも・・・絶対に・・・うまくいかない・・・・と思う。」




赤羽の言葉が胸にしみて涙があふれた。


つい、弱音をはいてしまう。




「決めつけんな・・・・まだ、なんもしてねーだろ?」



「・・・・・・・っ・・・・。」



「ちゃんと気持ち、ぶつけてやれよ。」



気付けばこちらを振り向いた赤羽が目の前にいた。

真剣な目で告げられる台詞がまっすぐに届いてくる。



蘭はぐっと涙を拭いとると決心したように口を開いた。




「わかった・・・頑張る。」



赤羽はまた優しく微笑む。



「よし!」




二人はまた並んで歩きはじめた。






:::



TRRR






蘭の家まであと少しとなった所で赤羽の携帯が鳴った。




ちょっと、ごめんと電話に出る赤羽。



「・・・・・・もしもし?・・・・え?・・・・迎え?・・・・あ、あぁ・・・わかった、俺が行くよ。」



話を終えた赤羽は困った顔をして蘭の方を向いた。


「・・・・悪い、毛利、俺、保育園に通ってる妹がいてさ、おふくろが迎え行けないらしくて・・・・代わりに行かなくちゃなんねーんだ。」



「私は大丈夫だよ、もう家もすぐそこだし・・・今日はありがとう。」



「いや、こちらこそ・・・・、今日は話せて良かった。毛利がよければ・・・これからもいい友達でいさせてくれよな?」



「うん、もちろんだよ!・・・ホラ早く行ってあげて?」



「サンキュ、じゃ、気をつけてな?」


「・・・・・・・・。」




赤羽を見送った蘭はふと考え込んでからポケットに手を入れた。



中から取り出したぐしゃぐしゃになったメモを見つめる。






「彼と私はあなたが思うような関係じゃないわよ。」



「確かめたい事があるなら全て彼に聞いてちょうだい。」





先程の志保とのやりとりが蘇る。


「・・・・・。」






知りたい。




本当のこと。




そして伝えたい。





私の気持ち。




今度こそ。








グッとメモを握りしめて蘭は家とは違う方向へと歩きだした。










:::



落ち葉がカサカサと音をたてながら風に踊らされる。


その画がなんだかとても冷たく写る。



方向音痴な蘭だが、幸いな事にメモに書かれた住所は蘭の近所だったので大体の場所はわかったため近くまで辿りつく事が出来た。





「えと・・・米花町・・・2丁目の・・・・・・・。」




ガサッ・・・




蘭がメモに目をおとしている後ろから風に流された枯れ葉の音とは違う音が聞こえてきた。


蘭はゆっくりと振り返る。



そこに佇む人物にただ驚く。







「柏村・・・先生・・・・?」




先程、学校で別れたはずの柏村が何故ここに?

蘭は不思議に思う。



「いけないなぁ、毛利さん・・・・今日は寄り道してはいけないって言われたよね?」


柏村は笑みを浮かべながらゆっくりと蘭に近付いてくる。



「ごっごめんなさい・・・ちょっと急用があって・・・・でも家はすぐ近くなので・・・・。」



「すぐ近くでも、いつどこで襲われるかわからないんだよ?」



「・・・・・・・・・先生?」




なんとなくいつもの柏村と違うと違和感を感じる蘭。

一歩柏村がこちらに近付くと、同時に蘭は一歩後ずさる。



「・・・そういえば聞いたよ?さっきまで一緒にいた彼の他に、中学生にまで手をかけているんだってね。」



「・・・・・え?」



「大人しそうな顔をしてやることがひどいなぁ・・・・だから一人暮らしなんてしてる女性は怖いんだよねぇ。」


「・・・・先生?」



「今ももしかして別の男の所に行こうとしてたのかな?」



すると柏村はいやらしく笑いだす。


その様子に蘭は全身に鳥肌が立った。



「好き放題に男を連れこんで・・・・何人もの男を騙してるんだよね。」




「人を騙しちゃいけないって学校で教わってるだろう?そんないけない子は先生が罰を下してあげよう。」



柏村が身体の後ろで組んでいた手を前に出すとー・・・




「・・・・な・・・。」





黒い手袋をした手が現れ、その手が持つのは鋭いナイフ。




そのまま柏村は蘭目がけて突進してくる。




「・・・・っ!!」



咄嗟になんとかかわすが治りかけていた足を今の衝撃でまた痛めてしまったようで思うように動けず倒れ込んだままの状態になってしまった。




「まさか・・・・先生が・・・・あの・・・通り魔?」



「ご明答!」




柏村はナイフの先を舌で舐め上げる。




「あめでとう、君は僕の記念すべき5人目の犠牲者だ。」




面白そうに笑って話す柏村にもはや人間味は感じられない。





「どうしようか?本当はちょっと痛めつけるだけにしてあげようとしていたんだけど・・・顔もみられちゃったからなぁ・・・・。」




腕を組みながら柏村が考え込む。




「きーめた。」




「・・・・・・・・。」




「殺してあげる。」




ゾクッ




見たこともない殺人鬼の目に全身が逆毛立ち震えが止まらない。





ー殺される!




一瞬そう脳裏に過る。




本当なら空手でどうにかするのに。



立たないと。



逃げないと。



けれど身体が言う事をきかない。





「ふはっ・・・ははは・・・お前みたいな女は俺が裁いてやる。」




「-・・・・っ!」







嫌だ。



こんなところで死にたくない。





私はまだ何も・・・・・





何も彼に伝えられていない。







「死ねぇー!!」






やられる!!







ザシュッ






「・・・・・・え?」




予想していたものとは違う感覚に目を開くとー・・・










飛び散る血が目に入ってきた。







「・・・・え!?」






目の前にある肩から流れる血に驚く。







どうして。




何故、ここに彼がいるの?







「・・・・・・・・新一君・・・どうして・・・・・。」








「・・・・・バーロ、こんなとこで何やってんだよ。」





私に背を向けて庇ってくれている。


その肩からは血が流れている。




「あ・・・・・。」




思いもしない事態にふと顔に近づけた手のひらを見ると赤い血がついていた。




そう、これは私の血じゃない。





私を庇おうとした彼の血・・・・・





私のせいで・・・・。



私の・・・・せい?







ドクン




脳内に何かがフラッシュバックする。






「・・・・・・さよならなんて嫌だよ。」



「約束だ。」



「俺達は同じー・・・・・に行く。」



「必ず、迎えに来るから。」




小さな小指と小指が混じり合う。




「お誕生日おめでとう。」


「このケーキ、私が作ったんだよ。」


「一緒に食べよう?」




大きな洋館。


その御庭にある大きな木。


お気に入りの帽子。


リボンが揺れる。




木の上に飛んだ帽子。



男の子がとってくれた。



けれどその男の子は足を踏み外して木からまっさかさまに落ちる。



リボンがまた揺れた。




目の前には頭から血を流して動かない男の子。



私はこの子を知っている。


その男の子が手にしているのは私の帽子。



私の手からは苺ののっていたケーキが落ちる。






ぐしゃっと潰れたケーキ。


苺が散らばる。


赤い血に混ざる。



彼に触れた自分の手についた血。





彼は私のせいでー・・・・。






私は知ってるんだ。


この男の子を。









「・・・・・ち・・・・しんいちぃ一ーーーーーーー!!」























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後書き:::



おおおおおおおおおおおおお待たせしました。



中々まとまらなかった12話。



やっと・・・・やっと出来ました。




でも時間かけたわりにまとまりが・・・・・なさすぎる。


しかも長すぎる。


また2話にわけるかもです・・・(表示されないかも・・・。)



なんか急いでまとめすぎた一話になってしまった気がしますが・・・。


とりあえず、全てがここで通じてきたのではない・・・だろうか?



しかし・・・ここまでかかって新一君の登場はこれだけ!

なんてことでしょう!!笑



もっと絡ませたかったのにストーリー上無理でした^^エヘ



13話追憶編です。


なんとなく一気にフラッシュバックした内容で大体の流れは明かされたと思うのですが・・・・。




おっきい新一の登場はもうちょっと先になるかも・・・笑



今回は赤羽君との決着という感じですね。


なんか書いててよくわかんなくなってっちゃったんですが・・・。



大丈夫かなぁ・・・・(いつもこんなんでごめんなさい)



あと、通り魔もここにつながってきました。

柏村先生はこの役でした。

ドンマイです。




では13話、書いてきます!




20012.09.09 kako