Strawberry Cake 8 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。



多分これほど幸せな事はないんだと思う。



けれど、その幸せを素直に受け止められる程私はまだ大人じゃない。




甘い、苺ののったケーキが大好き。



あなたの事も大好き。





でも、私は初めてあなたを怖いと思ってしまった。



そして何より、あなたに恐怖を感じた自分が一番怖くて悲しかった。






trawberry Cake 8






ドクン、ドクン


と大きく脈打つ心臓。



立っているのがやっとの事だった。






「・・・・なんだかめんどくさそうだから失礼するわ。」





最初に気まずい沈黙を破ったのはあの女の子、宮野さんだった。




「あん?あぁ、博士によろしくな。」



「えぇ・・・・・それじゃぁね。」





簡単なやりとりなのにそんな二人の姿に見惚れてしまった。



美男美女の二人はとても絵になっていて。

お似合いという言葉が一番に当てはまる。




そうか。



新一君の約束の女の子はこの子だったんだ。




"・・・・すっげー好きな子。"



それは他の誰でもない、この子へ向けた言葉だったんだ。




頭を大きなハンマーで殴られたような衝撃だった。





「蘭、・・・・・どちら様?」




二人の姿を見ているのが辛くて思わず俯くと新一君の低い声が耳に入ってきた。

はっとして顔を上げると、もうそこに宮野さんの姿はなかった。

その事実にどこかで安堵する自分がいる。

例え彼女がいないからといって約束の女の子が彼女ではないという事につながるわけでもないのに。



「あ、こちらクラスメイトの赤羽君。」



「ども、えーと・・・・。」


「理由あって居候させてもらってる工藤新一です。

蘭とは遠い親戚なんです。」



今までみた事のない作ったような笑顔の新一君は平気で堂々と嘘を口にした。

私達いつから親戚になったんだっけ?



「あ、そうなんだ。

その制服、帝丹中学だよね?

まだ中学生?タメ位かと思った。」



「・・・・・・で?なんでクラスメイトの赤羽さんが蘭と一緒に?」



赤羽君からの質問にただニコッと微笑むと質問に答える事なく今度は自分の質問を問いただす。

「あ、今日俺のせいで毛利に怪我させちまって・・・・」



「・・・怪我?」



「ちっ、違うの、怪我って言っても、元はといえば私の不注意が原因で・・・だから赤羽君は別に悪くないの。

それに接骨院に付き添ってくれたり今も自転車で送ってくれたりして逆にお世話になって・・・!」



必死に口を動かしてから頭のどこかで疑問になる。

どうして私はこんな言い訳のような事を言っているんだろう。

別に後ろめるようなことは何もないのに。




「そうだったんですか・・・・優しいんですね。」



これでもかという程の好青年スマイル。

この人は誰?と疑う程だ。

そしてその笑顔は少しだけ怖く感じた。


「じゃぁ、毛利、俺そろそろ・・・・あっ、明日朝迎えー・・・。」

「朝?」


赤羽君が帰ろうと口にした単語にすかさず反応する新一君。



「あ、しばらく足を安静にさせなくちゃいけないから心配して朝迎えにきてくれるって・・。」



「そうですか・・・でも結構です。」



「「え?」」



新一君の突然の発言に私と赤羽君の声が重なった。



「送迎なら僕が出来ますし・・・わざわざ迎えにきて頂くなんて申し訳ないですからね。

ですからお気になさらず・・・では、もう遅いですし、失礼します、蘭、いくぞ。」

「え、あ・・・・ちょっ・・・しっ新一君!?」



新一君はそう言い放つと私の背中と膝裏に手を回して横抱きにして私を持ち上げた。

まさかの行動に戸惑うとそのまま事務所につながる階段へと足を進め始めた。



「ちゃんと掴まってねーと、落ちっぞ?」


「でっでも・・・私歩けー・・・あっ赤羽君、今日は本当にありがとう!明日また学校で・・・おやすみなさい。」

「・・・・・・・・あ、おやすみ。」




もう頭の中は大パニックで、この状況が全く理解できず、ただただ身体中が熱くなっている事だけはわかった。





二人が階段を上り進み姿が見えなくなったのを確認した赤羽は、呆然とその場にたたずむ。




「いやいやいや・・・ちょっと待て。」



赤羽は頭を抱える。

そしてしばらくして自転車にまたがり、ペダルを一漕ぎした後口にした言葉は誰の耳にも届くことはなかった。




「・・・・・・なんだ、あのクソガキ。」







:::





階段を上り上がり玄関を開いた新一君は私をゆっくりと床に下ろす。

そしてそのまま私の靴を脱がせる。




「しっ新一君、私自分で出来るー・・・・。」


「・・・・・いいから・・・・。」



視線を合わせず低い声が返ってくる。

先程までの赤羽君とのやりとりの時のような明るさはそこにはなかった。

ただ黙ってされるがまま新一君が靴を脱がせてくれているのを見ていた。

何だかその行為が厭らしい事のように思えて恥ずかしさで身体中に緊張が走っていた。


「・・・捻挫?」


「あ・・・・うん。」


「どうなって怪我したんだよ?」


「ぼーっとしてた所に赤羽君の蹴ったボールが飛んできて・・・それは避けたんだけど、バランス崩してそのまま階段からまっさかさまに・・・・。」


「はぁ?頭は打ってねーのか?他にも怪我してんじゃねーの?」


「あ、それは大丈夫、咄嗟に頭は庇ったから打ってないし、全身に軽い打撲はあるけど、少し痣になってるだけだし。」


「それは大丈夫って言わねーんだよ。」



はぁ、っと大きくため息をつく新一君。



「で?アイツは蘭の何なんだよ。」



「アイツって?」



「だから赤羽っていうー・・・。」



「赤羽君?だからクラスメイトだよ?」



「・・・・ただの?」



「?・・・・・ただのクラスメイト。」



「あぁ、そう。」



赤羽君の事を聞く新一君はとにかく不機嫌。

何か怒ってる?

私何かした?


必死に思考を回転させていると目の前に大きな掌が差し出された。



「ほら、つかまれって。」



「あ・・・ありがとう。」




そして私はその手を取って新一君に支えられながら部屋へと向かった。






:::





着替えを終えて、夕飯を作ろうとキッチンへ向かうとそこにはエプロンを着た新一君が立っていた。




「え?・・・何してるの?」


「料理って結構身体動かすだろ?足に負担掛るだろうし今日位休んでろよ。」


「料理位出来るのに!」


「バーロ、それで悪化でもされたら俺が嫌なんだよ。」


「・・・・・・・・・でも。」


「・・・たまには大人しくしてて下さい。」


「・・・・ふふっ!ありがとう。」



玉ねぎの皮を剥きながら言われた言葉に思わず吹き出してしまった。

何で笑ってんだよ?と不貞腐れた声が返ってきたけれど、それさえも愛しく思えた。


いいなぁ、こういうの。


足を庇いながら座布団にゆっくりと腰を下ろす。

捻挫した足だけ真っすぐ伸ばす。



「・・・・・・・。」



好きな人に心配してもらえるってこんなに温かい気持ちになれるんだなぁ。



・・・・・・・ん?




好きな人?




「ーーーーーーーーーーっ!!」




そうだった。


私は今日、新一君を好きという気持ちを自覚したんだった。

落ち着いていた胸がまた激しく脈を打ち始める。


どんな顔を合わせればいいのかって不安だったけれど、足の怪我のおかげでいつもと変わらないでいられる気がする。



良かった。



ホッと胸を撫でおろしてからそっとキッチンで料理する新一君を盗み見る。


真剣な表情で手を動かしてる。

何作ってるのかな?

あっ、味見した。

首傾げてる。

味がしっくりこないのかな?

すると調味料の中に何か発見したようでちょっと満足そうに作っているものに味をたしていた。


何だかテキパキしてる・・・。

洗濯物もたためて・・・料理も出来ちゃうなんて・・・本当にすごいな。





「・・・・次は昨夜、米化公園付近で起きた連続通り魔事件のニュースです。」




テレビから聞こえてきたニュースにはっと反応する。

米化公園ってすぐ近くじゃない・・・やだな・・・・まだ犯人捕まらないのかな。



つい近所でのニュースに不安を感じる。



「この連続通り魔犯は、一人暮らしをしている若い女性ばかりを狙い、突然ナイフのような刃物で襲いかかり、刺し傷を追わせて逃走するというものでしたが、昨夜の事件の被害者は致命的な刺し傷を負い、死亡しました。

このことから警察は連続通り魔事件から連続通り魔殺人事件と改め引き続き捜査を行っているもようです。」



殺人事件という言葉に驚く。

まさかこんな近所でそんな恐ろしい大事件が起きているなんて。



「・・・・・犯人、まだ捕まってないんだな。」


「え?・・・・あ、うん。」



料理を終えたらしい新一君がお皿を二つ持ってこちらにやってきた。



「蘭も狙われる対象に当てはまってるから本当に注意しろよ?」


「うん・・・・でも私には空手があるし、大丈夫だよ!」


「あのなぁー・・・そういう事じゃねーんだよ・・・・ったく少しは女だって事自覚しろっつーんだよ。」


「え?何?」


「別に・・・・ホラ、出来たぞ、食べようぜ?」



新一君が何か言っていたけど、聞きとる事は出来なかった。

机に並べられたお皿に乗るものを見て思わず声が出た。



「うわー、美味しそう!」



それはとても綺麗な形をした、ふわふわ卵のオムライス。



「すごいすごい!オムライス~!新一君ってば料理まで上手なんだね。」


「いや、俺が出来るのはこれしかねーよ。」


「・・・そうなんだ?」


「母さん直伝のオムライスなんだけどさ、子どもが女の子だったら一緒に練習するのが夢だったらしくて・・・しょうがねーから俺で我慢するとかいってすんげー教え込まれた。」


「へぇ~・・・食べてもいい?」


「どうぞ、召し上がれ。」


「いただきます!」



一口、口に入れただけで感動した。

ふわふわでとろとろの卵に、中のチキンライスが絡み合って絶妙。

とにかくー・・・



「美味しい!」



ほっぺたが落ちそうってこういう事を言うんだろうな。

今まで食べたオムライスの中でも確実に一番に美味しかった。



「それは良かった。」



でも何でだろう。

初めて食べたはずなのに・・・どこか懐かしさを感じる味。



その時、誰か大人の女性らしき人が脳裏に浮かんだ。




ー・・・「・・・・んちゃん・・・蘭ちゃん・・・・美味しい?」



    「うん!とっても美味しい!」


    

    「良かった~!ね、蘭ちゃんがもう少し大きくなったらこのオムライスの作り方教えてあげる。」



    「本当!?」


    

    「もちろん、約束よ。」







「ー・・・ん・・・・蘭?」



「えっ!?」



「どうかしたのか?今意識どっかいってたぞ?」




我に変えると新一君が私の顔を覗きこんでいた。





「あっ・・・何か思い出しかけて・・・・・私・・・このオムライス・・・・昔食べた事あるかもしれない。」



「え?」



「誰か女の人が作ってくれて、大きくなったら作り方を教えてあげるって・・・・・・。」



「・・・・・・・。」





記憶はそこで途切れてしまってそれが誰なのかも、それがどこなのかも思い出せないけれど。

とにかくすごく懐かしい。

とても優しい記憶。






「そっか・・・・・もしかしたら、それ、俺の母さんかもな。」


「え?」


「ホラ、前に言ったろ?蘭の両親と俺の両親は友人だったって・・・・何度か遊んだ事もあったからその時に母さんが作ってくれたんじゃないか?」


「・・・・新一君の・・・・・お母さん?」




そう言われても思い出せるものは何もないのだけれど。

両親からも海外に友人がいるなんて事は聞いた事がなかったし。


けれど、それが事実だとしたら。

記憶が正しくて、それが新一君につながるものだとしたら。




それほど嬉しい事はそうないと思う。






「・・・・・・私達・・・子どもの頃会った事があるんだよね?」



「あ・・・あぁ。」



「私ね・・・・小さい頃の記憶だけないんだ。」



「え?」



「・・・お母さん達はちょっとした事故があったしか教えてくれなくて、本当に事故だったのかも今思えば信じられるかどうかなんだけれど・・・・それに、今までにその記憶を思い出すような事も本当になかったし・・・・ただ忘れているだけなのかもしれないんだけれど・・・・。」



「・・・・・・・・。」



「もし、その記憶の中に新一君との思い出があったのなら・・・思いだしたいな。」



「・・・・蘭。」



「ねぇ、私達どんな事して遊んでいたの?・・・初めて会ったのはいつ?」




こんな事を話したのは新一君が初めてだった。

ただ、目の前との人との思い出が欲しい一心で口にしていた。


けれど新一君は少し困ったように笑って、



「・・・・・前にも言ったけど、俺もあんまり覚えてねーんだ・・・・多分すっげーガキの頃だと思う。だから、もし、何か思い出した時は聞かせてやるよ。ホラ、オムライス冷めちまうぞ?」



と言ってはぐらかした。

前にもこんな事があった。


初めて会った時は自分から「覚えているか?」と聞いてきたのに、私が覚えてないと言った後からは何も知らなかったかのように返す。


どうして?



思いだしちゃ・・・いけないの?



普通にとらえればそんなに深く考えるような事じゃないのに、何故だか私には新一君のその行動がやけに印象に残った。




どこか沈んでしまった気持ちのせいか、先程の出来事が蘇ってくる。



赤みがかった茶髪の美少女。




そうだ。




結局、新一君の思い出に私が存在していたとしても、今の新一君が求めている思い出の女の子はあの子なんだ。



あの子は新一君との思い出をたくさん持っているのかな。



私みたいに新一君に聞かなくても、必死に思いだそうとしなくても、笑って話せる記憶があるのかな。





ねぇ、新一君。



あなたには彼女とのどんな思い出があるの?

二人はどんな約束をしたの?




彼女のこと・・・・どう思っているの?








絶対に聞けない。





だって、きっと落ち込む事しか出来ないから。






どうせ落ち込むなら新一君との思い出を思いだせないで悔やむ悲しさを感じるだけで十分だ。






胸はチクチクと痛むのに。





オムライスは美味しくて。






何だか泣きそうになる気持ちを必死に隠すことで精一杯だった。








:::




その日の夜。

私はまた夢を見た。





ー・・・「こうやって優しくかき混ぜるの、その時に食べて欲しい人のことを思い浮かべるの。」

    

    「そうするとどうなるの?」


    「その人への気持ちがぎゅーっとつまってもっともっと美味しくなるのよ。」


    「ほんとうに?じゃぁ、わたし、----のことかんがえる!」


    「ふふ、きっと----喜ぶわよぉ。」


    「そうかなぁ?」


    「もちろんよ、だって世界に一つだけの蘭ちゃんからのプレゼントなんだもの。」


    




すごく優しい女の人。

私はきっとこの人の事を知っている。


どこかで会った事がある気がする。



けれど、ぼやけていて顔がはっきりと見えない。



その後はどんな夢だったか覚えていない。


でもすごく温かくて、優しい夢だった気がする。





:::






キィー・・・



深夜の蘭の部屋がゆっくりと開く。



暗闇の中スースーと規則正しい微かな寝息がその訪問者の耳に届く。





パタン




静かにドアが閉まる。





閉められたカーテンから僅かに月の光が差し込み蘭を照らす。




ゆっくりと近付く。



そして蘭のすぐそばまで来た人物も光に照らされ、暗闇の中に顔が浮かび上がる。





それは同居人の新一のものだった。





新一は静かに腰をおろし、蘭の寝顔を見つめる。




「・・・・・・・ん。」




蘭から小さい声が漏れる。



それを確認すると新一はそっと蘭の額に手を伸ばした。




そして壊れ物を扱うかのように優しく触れた。




前髪を掻き分けると、綺麗な額が覗く。










「・・・・・・・・・・なんで、他の男なんか見てんだよ。」







小さい声ではあったがよく聞き取れる声だった。

しかし蘭は一向に目を覚ます気配はない。






新一は身体を起こし蘭に影をつくった。






そして額にそっと口付ける。





次に、目尻、頬、鼻、耳、首筋とキスの雨を降らしていく。






「・・・・・っん・・・・・・。」



蘭はそのくすぐったさを感じたのか寝返りをうち、新一に背を向ける。




するとパジャマが着崩れ、白いうなじが露わになった。






「・・・・っ早く・・・・。」





新一はそれを目にするとそのうなじへと唇を這わせた。









「早く・・・・俺だけのものになれよ・・・・。」








蘭の白い肌に赤い花びらが浮き上がったが蘭はそれに気付く事なく甘い夢の中を幸せそうに彷徨っていた。








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:::あとがき


連続更新!!奇跡!

連休パワー!いや、誕生日月間パワー?

っていうかこれほど更新に時間費やせるって、どれだけ暇してんだ、自分。

泣けてくるぜ。

でも明日くらいは出かけます。多分。


時間のあるうちにまた続きに手をだしておきたいです。


なんかGW中に完結させると言っていましたが・・・

この話の流れからして・・・あやしい・・・・

もう少し時間かかるかも。

でも今月の完結は間違いない。

やっぱり誕生日月間ってやる気でるぜ!!


急いでいるぶん、わけわらんです。

だって勝手に新一君が暴走するんですよ。

お姫様だっこって!どういうことだよ!

そして夢オチだった夜這い(?)事件が再び!?

今度は夢オチじゃないですよーていうか前のも夢だったのか、本当に!?

そのへんは今後明らかに・・・なるはず?


なんか折角考えていた話の展開もどんどんずれていくんですよね。

困ったなぁ。


ラストはこうしたいっていうのはちゃんとあるんですけど・・・

素直にそこにつながってくれるのか・・・。



不安です。



2011.05.05 kako