Moments | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。

oments






「はぁ・・・はぁ・・・!」




今、俺は走っている。


自分勝手な事を言って、


君の言い分も聞きもせず、無理矢理“別れ”を告げ


きっと、傷つけてしまった君に逢うために。



:::



“元の体に戻れる可能性は・・ほとんど“0”だわ。”





この、たった一言で俺は約束を取り消した。





こんな自分を、ただひたすら待たせる事が悲しくなった。


この一言が真実になるとは限らないというのに。


すんなりと約束を取り消したんだ。


本当は、後悔せずにはいられなかった。




君の気持ちを知っているという、一番の自信を持っているというのに。


“いつか・・・いつか必ず絶対に・・・死んでも戻って来るから・・・

それまで蘭に待ってて欲しいんだ・・・”



あの米化センタービルでは、とっさに出て来た言葉なのかもしれない。


けど不安だった。


どんなに自信があっても


自分の気持ちだけは、伝えたくても伝える事は出来ない・・・


その焦りが・・“約束”という形になって


結果的に君を縛る事になってしまった。


そんなの嫌だ。


それが約束を取り消した理由。




でも、それを後悔した時、それは所詮上辺でしか成り立たない、


偽善の言葉だという事に気付いた。




本当は忘れて欲しくない。


いつまでも待っていて欲しい。


自分だけを見ていて欲しい。







これが俺の気持ちの真実。




そんな中、組織との対決に決着が着いた。




今の俺の体はどうなっていると思う?




俺は無理を言って灰原に解毒剤を作ることを要求した。


始めは頑として受け付けてくれなかったが、ついに折れて、作ってくれる事になった。



「・・・本当に・・いいのね?」


「・・あぁ、駄目なら駄目で、それだけの人生だったって諦めるさ・・。」




なんてな・・・この時、俺は“駄目だ”なんて気持ちはさらさら無かった。


あるのは、絶対的自信。


どうして、あんなに不安だったのにあれ程自信があったのかは分からないけど。


薬を飲もうとした時・・・



「・・次に会う時は・・“工藤君”・・で・・・。」




そう言って灰原は微笑んだ。


少し辛そうではあったが、今までの中で一番素直な微笑みだっただろう。


いざ薬を飲むと、みるみるうちに体が熱くなって、


あの心臓の痛みが始まった。




今からが戦いだ。




さすがにこの、骨が溶けるような感覚、痛みが走った時・・暗闇も見えた。


けど・・・


けどアイツが・・・


アイツが俺の名前を呼んでてくれたんだ。




新一!!




その声を朦朧な意識のまま、頭に響かせながら、俺は気を失った。







:::









次に目が覚めた時、俺はずっとなりたかった体で、病院のベットの上にいた。









体は鉛の様に重く・・だるく・・生きている心地がしなかった。




けど・・・俺は生きている。





はっきりしない視界に腕に繋がる管がいくつも映る。




俺を阻むもの。





「・・・・・・っ。」





一度目を閉じて暗闇を手に入れる。




ー新一!



あの声とあの笑顔が俺を呼ぶ。






もう、何も迷うものはない。



今君のもとに飛び立とう。




俺は腕に伝う管を反対の手で掴んだ。




麻痺しているのか思うように動かない手。




けれどもう止まれるはずがない。






ブチッ




無理矢理管を抜き取る。




ピーピー



と警戒音が鳴り響くがそんなのどうでも良かった。





腕から赤い鮮血がポタポタと白い床に落ちる。





入口まで近付くと急にドアが開いた。





そこにいたのは俺が知ってるよりも大人びた顔を得た灰原だった。





「・・・・灰・・・原・・・・?」





「・・・くっ工藤君・・何してー・・・・・」





「ハハッ・・・・無事だったんだな・・・・良かった。」





元の身体を取り戻した彼女の姿を見て笑みがこぼれた。




「・・・・・・それより・・・早くベッドに戻りなさい!死にたいの!?」




「・・・・・っ。」




灰原は血相を変えて俺の肩を掴む。





だせぇ。



ドアから出ようとするだけでこんなにも息が切れてるのかよ。




「・・・・・俺・・・・生きてる・・・んだよな?」




「・・・・・死にかけてるわよ。」




「・・・バーロ・・・次に会う時って言ったのはおめーじゃねぇか。」




「・・・・・・っ。」




「俺は死なねーよ。」




グッと灰原を押しのけた。





「ちょっと・・・・本当にダメ・・・・もう少し我慢できないの?」




後ろから灰原の呆れたよな声が聞こえる。




「・・・・・俺は探偵だぜ?自分の今の状態位わかるさ。」



「だったらー・・・・。」



「・・・・・・絶対に大丈夫だよ。」



勝ち誇るような笑みを浮かべて。




それを見た灰原はふと息を一つはくと腕を組んでこう言ったんだ。





「勝手にしなさい。」




「・・・・サンキュー・・・相棒。」





そして俺はそのまま部屋を飛び出した。





:::












しかし情けない。




まだ、さほど走ってもいないのに、息がこんなにも上がっている。


信じられない程、体は重く、悲鳴を上げて、言う事を聞かない。


これ本当に俺の体か?


久しぶりだから、まだ馴染んでいないのか?







でもそんな事関係ない。







今はアイツしか・・アイツに逢う事しか頭にない。




速く・・・速く・・・




“別れ”の電話の後はずっと・・・




胸が痛かった。

キシキシと音を立てて俺の中を蝕んでいったんだ。


けれど、それは終わりなんかじゃない全ての始まりを意味していたんだ。


まだ小さくなる前までは、


探偵への憧れは、大きな夢だったけれど、それなりに少しずつ手が届き始めていた。


けど、まだ何か足りない様な・・・そんな夢だった。


そして、蘭との幼馴染という、もどかしい関係の距離を縮めたい・・

それは、果てしなく手が届かない夢で、だから、それへの未知なる期待と輝きで満ちていた。

でも、この夢達も本当に終わりで・・・始まりにするんだ。

小さな体になって・・というのも何となくしゃくにさわる気もするが、

探偵になるという夢の足りない部分を埋める事が出来た気がする。


一人の人間として大きく成長する事が出来た。


ただの好奇心で動くだけじゃなくて。


もっと先の事を考えて。


がむしゃらなだけでなく、余裕も知った。


そう、蘭に対する想いも。









蘭を傷つけた・・


その事実は鋭い刃物となって俺の胸を刺しつける。


忘れてはいけない痛みとして、刻まれ続けている。


でも君を傷つけた事が、この痛みを受ける事で、少しでも許されるというなら、


喜んで耐え抜こうと思った。





なぁ。

俺のせいで、これ以上にない絶望を味わった時。

君はどうしていた?

いつも俺を照らしてくれていたその純粋な想いをズタズタにした俺。

さすがにもう受け入れる事は出来ないかな?


ただの卑怯者。


成長したと言いながら結局どこかでは自分に言い訳していたんだと思う。



「待っていてほしい」と願ったくせに


「待たなくていい」と逃げた。



無理矢理君を突き放した俺。


君はそんな俺をどうする?


今度こそ俺は拒絶されるかな?


「今更何を言う」と怒るかな。


でも必ず俺はその傷を癒してみせるから。

それぐらい当然の報いだろう?






「・・・・・・っはぁ・・・・。」


後少しで俺の家。


その先をもう少し行けば・・・やっと君の家。







待ってろよ。







約束を取り消したのは自分のくせに自然とそう思っていた。














ぐらっ














丁度俺の家の前に着いたという時、急に眩暈がして、その場に倒れ込んだ。



「・・・・・・・っ!」





もう限界だとは思っていた。


でもこの先に何が待ってるとか、自分はどうなるとか。



もうどうでも良かった。




ただ。



ただ会いたい。




会いたいんだ。







「・・・・・・っくしょう!・・・あと・・・・・後少しなのに・・!」



力を入れいてるはずなのにまるで自分の身体ではないみたいに言う事をきかない。





頼む・・俺の体・・・言う事聞いてくれ!




今までに体験した事のない程の疲労感。


それでも俺は・・・君に逢いに行くんだ。


でも体は正直でやはり動こうとはしない。




「・・んでだよ・・何で・・頼むよ・・・。」




本当に自分はもうだめなのだろうか・・・。




再びそんな絶望感が蘇ってきた時ー・・・・・














「・・・し・・ん・・・いち?」














「・・・!?」









もし俺が花だとしたら。



他の花よりもぐんと美しく咲き乱れて。



必ず君を幸せにしよう。


笑顔にしよう。



そして・・・蘭が笑ってくれたのを見届けたら・・



静かに散ろう。



もう十分だ。




それでいいよ。



それでいいんだ。









「ー・・・新一・・。」




「・・・・・。」




目の前の蘭が本物だという事を理解するのに、どれだけ時間を必要とした事か。


けれど理解した時には、さっきまであんなに言う事をきかなかった体は嘘の様に、


素直に俺の指示に従って・・・





蘭を抱き締めていた。






でもそれで本当に力を使い果たしたのか、俺は蘭を抱き締めたまま、倒れ込んだ。




「しっ新一!?凄い汗だよ?どうしたの?」




蘭は突然倒れた俺を気遣う言葉を掛けてくれる。




何でだよ?


俺・・・お前を傷つけたんだぜ?


責めろよ・・・


「ふざけんな」って・・押し返せよ。




でも蘭はそんな様子一つも見せないで・・涙目で・・・今にも壊れそうな顔で精一杯、俺を心配してくれるんだ。




「・・・新一?だいじょー・・・」




「あいたかった・・・。」




俺を心配する言葉を遮って、そう一言だけ告げると、蘭は更に目に涙を溜めて・・・




「・・会ってくれていいの?

・・・・・・約束・・っ忘れなくていいの?」




俺はソレに微笑む事で答えてた。




そして・・・・・




そんな蘭の顔を両手で、そっと掴んで、


震える唇に自分のソレを重ねた。




感情が止められなくて・・・




ずっと言いたくても言えなかった、この気持ちを全て託すかの様に・・・


何度も何度も重ねた。












「ん・・・し・・んいち。」




途切れ途切れに聞こえる蘭の声が・・


とても・・弱く・・切なく・・繊細な音色の様に俺の胸に響いて・・・


だんだん消えて行ってしまいそうで・・・


いつのまにか・・本当にそうなってしまいそうで・・恐くなって・・


ゆっくり・・静かに唇を離した。


蘭の瞳を見つめて・・・


存在を確かめた。




「新一・・?」




目から一滴の涙が零れて、


唇は潤んで、


その声は・・震えてて・・・




どうして一度でもこの存在を手放すような真似をしたのだろうと、


深く反省した。




「蘭・・ごめん。俺・・嘘ついた。」




真っ直ぐ蘭の瞳を見つめ続けた。




「約束・・・本当は忘れて欲しくなんかなかった。

ずっと・・ずっと待ってて欲しかったんだ。」




俺は今最高に格好悪いだろうな。


けど、蘭にはそんな俺も隠したくない・・知っていて欲しいから。




「約束でもなきゃ・・・蘭が・・どっか、いっちまいそうで・・・。」


「・・・どこにも行かない・・どこにも行かないよ。

私は、ずっと・・新一といたいんだよ?」




蘭が俺の胸元に額を当てて囁いた。




「忘れたくても・・・忘れられないよ。」





もし俺が鳥になったとしたら。


大きな翼をはためかせて、君の元へ飛び立とう。


いつでも君のそばを離れず、その翼で守り抜こう。






もう一度君を抱きしめる腕に力を入れた。















「蘭・・・俺、蘭が好きなんだ・・・・・どうしようもないくらい・・・。」




「私も・・・好きだよ、新一。」






サラサラと優しい風が俺達を撫でる。


暑くほてった体を優しく癒してくれる。




もしも俺が風だとしたら。


いつも君を守ず風でいよう。


時に温かな風を。

時に冷たい風を。

そして時に優しい風を。


そうやって何もかも流してやろう。




蘭を抱きしめたまま月を見上げた。



まるであの時の散らばった花火の光を集めたように夜空に輝く。




ただ静かに、偉大に存在を主張して。



俺の想いを今ここに集めてくれたのだ。








もしこの月の様に輝けるのなら、蘭を照らし続けよう。


蘭の輝きを決っして絶やさない。



そしていつもこの溢れる想いを掲げよう。






もう一度、蘭を抱き締めて。




君がもう二度と


傷つかないのなら


悲しまないのなら


俺は何にでもなろう。




「・・・愛してる。」








Fin




:::後書き


2004.08.20. 作品でした。


まだ学生ですよ。


若かりし頃ですよ・・・。


いやー・・色々と恥ずかしい所がたくさん。


今回も修正&補完してみました。


今回も「Moments」をイメージさせていただいています。


この曲・・・すっげー好きだった。


この頃のあゆは私の中の神だったなー・・・


昔に書いたものなので告白シーンありです。



でも元に戻ったらやっぱりもう一回告白してほしいな。

そしてチューしちゃえばいいと思うんだよね。


ていうか・・・点滴の管とか色々抜き取ったまま行かせるって・・・灰原さんちょっといいの!?



と思ったけれどあそこで治療してから行かせるのは流れ的に盛り上げを薄れさせる気がしたので強行突破させました。



軽く流してやって下さいませ。



2011.06.12 kako


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