HANABI~episodeⅡ~ | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
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※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。



「何・・・ソレ・・。」


「言った通りだよ、・・・じゃぁ、急いでるから・・。」


「ちょっ・・・待ってよ!・・ねぇ、そんなの・・。」


ツーツーツー・・・


「・・・し・・んい・・ち?」






HANABI~episodeⅡ~





気付けばまた振り返ってる・・・

選んだ道は本当に正しかったのか・・・と。


きっかけはそう、あの日。


俺達(俺と灰原と阿笠博士)はついに黒ずくめのアジトを見つけ出し、今後どうやって組織を追い込むか、計画を練り続けている。

そんな緊迫した日々の中で、灰原から聞かされたこの一言ー・・・




「あなたが、元の体に戻れる可能性は・・・・ほとんど“0”だわ。」





一瞬、自分の耳を疑った。


「何言ってんだよ、・・・・・う・・・嘘だろ?」




顔を引きつりながら、笑って問いた。


灰原は目を瞑って、またゆっくりと開いて俺を真っ直ぐ見て・・・



「こんな嘘・・・・言う訳ないでしょ。」


「なっ・・何でだよ。」



俺はムキになって更に問う。



「・・・APTX4869、是ほど、体に負担の掛かるモノは無いわ。

だいち、元は人を殺すための薬・・・私達が生きているのは突然変異のお陰・・・

その突然変異をあなたは、何度も繰り返した。」



灰原が答えを中々返してこない事に痺れを切らし、


俺は正気ではない状態で、叫んでいた。



「そんな説明はいらねぇよ!!率直に・・」


「あなたの体はもうその突然変異に耐えられなくなっているのよ!!」



俺の叫び声を遮って、灰原が声を張り上げた。



「・・・もし、解毒剤を飲んで、また心臓に負担が掛かれば・・」


灰原は俯いてしまった。


その灰原の姿に俺は一気に現実を飲み込んだ。

切羽詰まった彼女を見るのはそう簡単に出来ることではないから。


ドクン・・ドクン・・



心臓が騒ぎ出す。



「何だよ・・・・掛かったら・・どうなるんだよ?」




俯いたまま俺に背を向けて・・・・一言だけ告げた。













「確実に・・・あなたは、死ぬわー・・・。」













一瞬の沈黙の後、俺は口を開いた。




「そ・・んなの、灰原の推測だろう?それが現実になるって決定的な証拠はないんだろう??」


「・・・そうかもしれない。けど、もし・・あなたが、そうなってしまったら・・

どうすればいいのよ・・・。」




一つ息をついて・・・




「何も知らない彼女は・・どうすればいいのよ?」




俺が必死に認めない態度で言っても、


灰原は小さな肩を震わせて、そう言っただけだった。




二人ともずっと黙っていると、灰原は背を向けたまま、地下室の方へ歩き出した。


「おっ・・おい。」


「・・・明日よく考えて、また来なさい。」



結局、何を考えるにも頭が上手く働かないので、心配そうな顔をしている阿笠博士に、帰宅する事を告げ阿笠邸を後にした。




:::




先程の灰原の言葉が蘇る・・。




“何も知らない彼女は・・どうすればいいのよ?”




カッとしていた自分のせいで気付かなかったが、改めて考えると、それは確かなものだった。



死ぬー・・・と認めた訳ではないけれど・・


あくまで・・“もしも”の話だが・・本当に・・本当にそうなってしまったら・・・




“待ってて欲しい・・・”といった約束を、今でも、純粋に待ち続けている彼女は・・・



蘭は・・・




「くそっ!!」




近くの横に佇んでいる電信柱に殴り掛かった。


ジンッと伝わってくる痛みが余計に俺を追い込んだ。




そして、そのまま其処へ座り込む。









何で、あの時、一人でアイツらを追った??


何で、警察に相談しなかった??


何で・・・っ



何で蘭を悲しませてる??


〝何で"



どうやって悔やむ事しか出来ない。


時間を巻き戻す事なんて出来やしない。



わかってる・・・わかってるんだ。






今更後悔しても遅いことくらい。




周りに“高校生探偵”などと言って囃したてられて調子に乗っていた自分に罰が当たったのか・・



しかし、真実を求めたいのは、決して嘘じゃなかった。



情けない話だ。


真実を求め続け、黒の組織を壊滅させて、自分の体を取り戻すと、あんなに意気込んでいたのに・・


灰原の話を聞いた途端、怖気づいたこんなに弱い自分がいる・・。


これが本当に工藤新一か??


「・・・・はは・・。」




思わず乾いた笑みが漏れた。





「・・・はははは!!」




そのまま夜空を見上げる。



静寂の中凛と存在を輝かせる月は黙って俺を見下ろす。





誰も答えはくれない。





ただのちっぽけな俺の過ち。





「ー・・・・・っ!」




頭を抱えて電信柱に寄りかかる。




どうか願いを叶えてくれるならあの日に戻してほしい。



まさかこんな神頼みをする時がくるなんて。





自分に心底落胆した。






















「ー・・・コナン君?」




急に呼ばれてハッとする。


目の前に立っているのは・・・


俺の一番大切な人・・・




「蘭・・・姉ちゃん。」




「もぉ~!!コナン君連絡もしないで、こんな遅くまで何処に居たのよ?」


随分、ご立腹のようだ。


「は・・博士の所に・・。」


「またぁ?ちゃんと連絡してよ。心配するじゃない。・・・あれ?」


腰に手を置いて怒っていた蘭が何かに気付いた。


「ちょっと!コナン君、手、どうしたの?血が出てるよ?」


蘭が俺の手に触れる。


俺の手には紅い紅い・・血。


そして触れた蘭の手は、とてもとても白く・・温かかった。



:::



事務所ではなく自宅まで行き着くと蘭は俺を座らせ、救急箱を手に取り俺の目の前に座った。


明るい所で見ると、更に傷の具合は生々しく目に写る。


蘭は、テキパキと手当てを進めて行く。




そんな蘭を、ずっと見つめていた。




「はい!!これで大丈夫かな・・血は止まったし。」


その蘭の声に気付くと、自分の手は包帯で巻かれていた。




「ごめんなさい。」




蘭はそれを聞くと、何も言わず苦笑した。


今のは何に向けた謝罪だったのだろうか・・。




自分でも分からない・・・。




「ねぇ・・・蘭姉ちゃん・・。」


「ん?」


深呼吸ー・・・




「・・・もし・・・もしこのまま、新一兄ちゃんが帰って来なかったら・・・どうするの?」





カチ・・・カチ・・・


部屋の時計の秒針の音がいやに耳に響く・・・。




「・・・帰ってくるよ。」




蘭は静かにそう言った。


どうしてそんな核心が得られるんだよ。



「だって・・約束したでしょう?」





「・・・・私は新一を信じてる。」





そう言ってはにかむ蘭。





“いつか・・・いつか必ず絶対に・・・死んでも戻って来るから・・・

それまで蘭に待ってて欲しいんだ・・・”



あぁ・・・そうだ。


今ので決心が着いた。




「蘭姉ちゃん。」


「なぁに?」


「明日、母さんが僕を迎えに来るんだ。」





:::





翌日ー・・・


ロスに居る母さんに無理を言って、最終夜行便に乗って日本に帰って来て貰った。


そして“江戸川文代”という偽りの姿で、事務所まで迎えに来てもらい、蘭達に別れを告げた。



「蘭姉ちゃん、小五郎おじさん、今まで本当にありがとうございました。」


「突然だったから、びっくりしたよ。お母さん達と仲良くね?」


おっちゃんは相変わらず無愛想だったが、一言・・・


「元気でな・・・。」と。


これが、おっちゃんの優しさなのだろう。







コナンという存在がなくなれば、蘭は更に孤独との戦いを要請されるだろう。


しかし、「新一兄ちゃんは、もうすぐ帰ってくるよ!」といった、励ましの言葉さえ・・


俺には、言ってやる事は出来ない・・。


そんな・・気休め程度の・・励ましなんて・・・


言ってはいけない。



「うん!!じゃぁ。」



母さんが、蘭とおっちゃんと適当に話をつけ、


車に乗り込み、アクセルを踏んだ。




瞬時に窓ガラスから見た蘭の顔は・・・寂しそうだった。




「・・・本当にこれでよかったの?新ちゃん・・。」


「あぁ・・・。」


「だって・・もしかしたら・・。」


「・・・悪かったな、母さん。急に日本に帰って来いだなんて・・。」


母さんが何を言いたいのか、分かっていたが、


無理矢理話を変えた。



:::




夜ー・・・


「コナン君!お風呂、沸いてるー・・・あ。もういないんだっけ。」


コナン一人いなくなっただけで、淋しい空間。

蘭は俯いてその場に佇む。






Brrrr・・・Brrrr・・・




突然、携帯が鳴った。


蘭が携帯のディスプレイを見ると、そこには・・・




“工藤新一”




落ち込んでいる時にここぞと連絡をくれる彼は本当にどこかで自分を見ているのでは疑ってしまう。



けれど今はそんなことを考えるよりも先に声が聞きたい。







「はい。新一?」


「蘭・・・か?」


「うん。どうしたの?」


「ちょっと、蘭に話があって・・・さ。」


「うん?」


「・・・あのさ・・・。」



駄目だ・・。


頭では分かっていても、いざ、蘭の声を聞くと、なかなか口が動かない。


「・・・?」


「そっそういえば、コナン・・帰ったんだって?」


馬鹿野郎・・・余計触れちゃいけねぇっつーのに・・。


「うん。知ってたんだ?」


「まぁな。」


「何か、コナン君て本当の弟みたいだったでしょ?

だから結構、存在大きかったみたいで・・・もういないのに、コナン君の名前呼んだりしちゃったよ。」


苦笑交じりに笑って話す蘭。


「あ・・・そういえば、連絡先聞いてない!!どうしよう・・。

新一知ってる?」


是以上、話をしていちゃいけない・・。


「・・・蘭。」


真剣に蘭を呼んだ。


「どうしたの?・・急に・・。」


その変化に気付いたのか、蘭が不思議そうな声をだす。




“だって・・・約束したでしょう?”




「もう・・約束の事は忘れていいから。」


“・・・私は新一を信じてる。”





「え・・・。」




「・・・待たなくていいから。」




「・・・・・。」




頭の中に今まで見続けて来た蘭の姿が浮かび上がってきた。


もうその愛くるしい顔が見れなくなるかもしれない。


そんな俺の事を待っていたら・・・蘭を余計に辛くさせるだろう。


あんな、約束で、蘭を縛っていちゃいけない。




「何・・・ソレ・・。」


新一!!


俺を呼ぶ蘭の声。


あの大きな瞳


優しい笑顔


気が強くて、力持ち・・・だけど涙もろくてお人好しな性格も全て・・・




忘れる。




「言った通りだよ、・・じゃぁ、急いでるから・・。」




いや、忘れなきゃいけないんだ。


けど・・・




本当は忘れたくない・・・。




「ちょっ・・・待ってよ!・・ねぇ、そんなの・・。」


いつか、またあの楽しかった日々に戻れたとしたら・・


聞かせて欲しい・・


蘭の口から・・




ツーツーツー・・・




幸せだよと・・・


今、自分は幸せだよと。


笑顔で聞かせて欲しい。




「・・・し・・んい・・ち?」




思い出は、心に残ったまま・・


静かに・・俺の中だけに・・とどめておこう。


どうなるかわからない奴の帰りを、ただ永遠と待たせているくらいなら、


いつかの幸せより、今の幸せを手に入れていて欲しい。


アイツには、確かな幸せを・・・









“・・・私は新一を信じてる。”




そう。


この一言で決心が着いた。


死んだって、戻ってくるさ。


でも、そうなってしまった時、約束は・・


蘭を縛るものになってしまう。


そんなのは、俺の願いでも何でもない。


約束なんかなくたって、俺が行き着く場所は・・必ず蘭なんだ。


だけど、その時君が俺を受け入れてくれる確証はないけど・・


いつか・・・あの楽しかった日々を取り戻してみせるから・・・


俺の勝手な決心で君を傷つけてしまった事を・・・今は許して欲しい。







ドォーン・・・







そんな時、花火が上がった。


あぁ・・今日は夏祭りだったな。


君と行かないのは初めてかもしれない・・。


今年は、君の手を、


“はぐれないように”という理由で繋ぐことは出来ない。




今だけ、君を忘れよう。


何よりも大切な君を忘れよう。


これから何があるかわからない。


正直なとこ、俺だって不安なんだ。







この想い忘れよう・・・今だけ。




そして花火のように空に打ち上がって。

花火のように散らばってくれ。




そうすれば忘れたこの想い・・




何処かに散らばって




君に届くかもしれない。




例え・・何があろうとも・・・。





NEXT >>



:::後書き


2004.08.19. の作品です。


今回のUPにともなって修正、補完させました。

浜崎あゆみさんのHANABI~~episodeⅡをイメージとして参考にさせていただいています。

この曲を聴きながら読んでもらえたら嬉しいです。


いつかこういう展開もありえるんじゃないだろうか・・・

そう思って書いた一作です。

こちらまだ続きます。


次は蘭sideです。


さすがにあんなに大きくなったり、小さくなってたりしたら色々問題があると思う。



2011.06.12 kako


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