teddy bear 前編 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。


これはただの悲しい物語。

ただの夢。

そう思いたかった。

ハッピーエンドじゃない主人公になんてなりたくない。



あの日。

あなたの言った言葉。

今も、これからもずっと忘れないよ。


あの言葉は、私に少しだけ勇気をくれて。

少しだけ・・・

私を哀しくさせる。





“次にお前が目覚めれば枕元にはステキなプレゼントが置いてあるよ。”





ねぇ・・・。

プレゼントなんかいらない。

だからもう一度・・・もう一度だけでいいから、

私の髪を・・・撫でて。



その大きくて優しい手で・・・。



teddy bear   前編





その日の新一は何となくいつもとは違っていた。
いつも何だかんだいって優しいけど。
その日はいつにも増して優しくて。
ううん優しすぎてた。

でもどこか曇った優しさ。


ねぇ、


何があったの?


:::




最近の新一は変。
急に黙り込んで、考え込んでいるみたいで。
私の事を全く見てない。

随分と新一とゆっくり話をしていない気がする。
学校が終わっても私を探偵事務所まで送ってくれるとすぐに「じゃぁな」って帰ってく。

いつもなら少し話したり・・・

キス・・・してくれてたのに。

学校でも授業中でもずっと考え事してるみたいで。

新一の目に私・・・写ってる??


新一に触れていない。


新一の温かさを感じてない。


でもそれは突然の出来事だった。




新一の様子が変になって三週間位した頃。
周りはすっかり冬に染まっていた。

街は赤と緑のクリスマスカラーで彩られていて。


今年のクリスマスは・・・“新一”と一緒に過ごせるかな。



新一は去年のクリスマスを“コナン君”として過ごしていた。



帰ってきた時、全てを教えて貰って正直驚いたけど。
何となくそんな気はしてたから。
私は新一を受け入れた。
それと同時に知れた新一の気持ち。
すごく嬉しくて・・・嬉しすぎて私泣いちゃったんだよね。

その時約束してくれた新一の一言。



“もう二度と一人にしない・・・ずっと傍にいる。”







「蘭。」

「え。」


新一から私の名を呼んで話し掛けられたのは何日振りだろう。


今日の新一も違うのね。



「今日、俺ん家、来れるか?」

「・・行けるけど。」

「そか。じゃ帰りな。」


新一は笑って言った。

でも違うの。

あれは作り笑い。

何年一緒にいたと思ってるの。

何で何も言ってくれないのよ。

それはクリスマスの前日。

12月24日、

クリスマス・イブ。




:::


「今日はさみぃな。」

「そうね。」

「雪降るかな。」

「そうね。」

「そういや昨日博士がさ。」

「そうね。」

「蘭?・・・俺まだ何も言ってないけど。」

「そうね。」

「何か、怒って・・る?」

「・・・・・・そうね。」


下校途中の会話。
今までの新一とは打って変わって口数がすごく多い。
急に調子の変わった新一にこっちも調子が狂う。


何となく・・・空元気?


「・・・・・機嫌・・・直せよ。」


新一がボソッと呟く。


「だって新一おかしいんだもん。」

「どんなトコが?」


そう聞いてきた新一の声は急に低くなった。

正直に聞いていいよね?

新一の家の前に着いてついに口にした。


「最近・・・・そっけなくて・・一人で考え込んだりしてて・・そしたら今日は急に元気な素振りしたり・・・
何考えてるのかわかんないよ。」


やだ。

視界が滲む。



どこかで予感していたの。



ねぇ、私は、もういらない?






新一は少し黙った後、目付きが変わった。


突然腕を掴まれて、ぐぃっと引っ張られて家の中に入れられた。

光の灯っていない家の中は薄暗くて、少しだけ夕闇が差し込んでた。

私が恐る恐る新一を見上げると、

新一はとても哀しい瞳をして・・・でも“男の人の瞳”をしてた。


「しんい・・・っん。」


新一の名を呼ぶと同時に口を塞がれた。


強引なキス。


でも久しぶりの口付けに私はどこかで喜んでいた。
新一の大きな両手に顔を掴まれて。
新一に触れられている事が嬉しかった。
けど新一のソレはだんだんエスカレートしていって。

息が乱れる。


「・・・っん・・しん・・・いち。」


だんだん苦しくなって新一の制服を掴む手の力を強くした。

いつものキスとは全然違う。

ねぇ新一・・・いったいどうしたの?

次の瞬間新一に抱き抱えられて。


「ちょっ・・・新一!?」


階段を昇って着いたのは新一の自室。
ベッドの上に降ろされた。
新一は大きな音を立ててドアを閉めた後、私の上に覆いかぶさった。


「新一?」

見つめる瞳はカーテンのしまった薄暗い部屋の中では輝きを失っていた。


新一は何も言わずにまた唇を重ねてきて
さっきより更に強引で・・・。
いつもの優しさがない。
ふと見た新一の瞳が全くの別人の様で恐くなった。


新一が・・・恐い?


息が苦しいのを訴えようと新一の胸を叩いたり押しても無駄だった。
その手は新一の両手に押さえられてしまう。
少し口が離れた時に「苦しい」、「止めて」と声をもらしても全く意味がない。
私が顔を振って新一から逃れると新一の唇は今度は首筋に降りてきた。

さすがに新一が自分に求めている事を察する。
すると更に恐怖は増した。
今までに一度も経験した事がない訳じゃないけど。
何も言ってくれないまま。
何もわからないまま。
こんな新一に、
身を委ねたくはなくて必死に抵抗した。


「やっ!止めて、放して!!」


口で。


手で。


出来る限りの抵抗を起こしてもその全ては新一に簡単に交わされる。


「お願い。」


泣いて頼んでも新一の手は止まる事は無かった。

気付けば新一の手が私の制服にかかって・・・。

ネクタイをしゅっと抜き取って。
ボタンを手荒に外されて。
その隙間から除く鎖骨に新一は口付けた。


「んんっ。」


もうこの人を止めるのは無理だと気付いた。
すると、ふ・・・っと力が抜けて。
そのまま新一にされるがまま。




これは新一が私に犯した“過ち”の一つ目。

ねぇ・・・

こんな事になるなら

もっとあなたを感じていれば良かった。

あの時抵抗した事は・・・

私にとっても“過ち”だった。



:::



どれほど時間が経ったんだろう。
重い瞼を開けて。
目に入ってきたのは皺のよったシーツ。
暗い見覚えのある部屋。

私、どうしたんだっけ。
体が怠い。
部屋には誰もいない。



新一は?



そうだ私、新一と・・・。
同時に嫌な予感がした。



「・・新一・・・新一?ねぇ・・・・新一!!」



何度も新一の名を呼んでいると、ドアが開いた。


「蘭?」

「新一・・・。」


ドアから中に入ってくる新一を見て安堵の溜息をつく。
良かった・・・。


またいなくなる。



なぜかそう頭に過って。
そうだよね。
もう新一はどこにも行かないんだよね。
新一はベッドに近づいて私の頭を撫でてベッドにきちんと入り込むように促した。


「雪降ってるぜ?」

「ホント?」


それを聞いて嬉しそうに起き上がろうとする私を新一は苦笑して宥めた。


「そんな格好で見に行くつもりか?今日は冷え込むから・・窓から見るだけに我慢しとけよ。」

「・・・・わかった。」


気付けば私はまだそのままの格好な訳で・・・。

部屋は暖房が効いてて暖かったから忘れてた。
シーツに包まってから窓に目線を移した。
新一が開けてくれたカーテンの下の窓から見えるのはしんしんと降る白い白い雪。
今日はクリスマス・イブだからホワイトクリスマス。
明日は積もるかな?
明日のクリスマスは新一と過ごせるかな?
私が雪を見ていろんな事を思考していると新一が口を開いた。


「ごめん・・・な?」

「え?・・何が?」


何で新一謝るの。


「・・・その・・・無理矢理だったから。」

「・・・・・。」


そう言う新一はいつもの新一だった。

目の前にいるのは自分の知っている新一だと思ったらさっきまで嫌がって拒み続けた事が馬鹿らしくなった。


「大丈夫だよ。」


そう私が微笑むと新一はベッドの上に乗って私を片手で抱き寄せた。


「・・・あったかい。」


新一がこの頃様子がおかしかった事なんかすっかり忘れてて。
新一の温かさをじっくりと感じてた。
抱き寄せられた腕から優しさを感じて。
私を気遣ってくれる新一にもっともっと優しさを感じて。

でも私は安心しすぎて気付かなかった。
新一が優しすぎる事。
曇った優しさだという事に。


「ねぇ、明日のクリスマスも一緒にいれる?」


新一を見上げると新一は何も言わずにまた優しく微笑んだ。
それがYESという返事だと思って私はそれ以上確認しなかった。
ただ好きな人の傍にいられる事が嬉しくて・・嬉しすぎて。
なんで気付かなかったんだろう。
あんなに新一がいつもと違うと思っていたのに。

その微笑みが少し辛そうだった事に。

安心した私はまた瞼が重くなってきて。
それに気付いた新一は腕を放して私を横にさせた。
ベッドに腰掛けて、そっと私の髪を撫でてくれた。


「蘭。」

「なぁに?」


眠い目を擦って尋ねた。





「次にお前が目覚めれば枕元にはステキなプレゼントが置いてあるよ。」





優しく優しく私の髪を撫でてあなたが言ったこの言葉。
その時の私はクリスマスプレゼントを新一が用意してくれたんだ・・と思ってまた嬉しさが込み上げてきて。


「おやすみ。」


新一はそう言って私の額に軽いキスを落として手を握ってくれてた。

私は期待に弾む胸を抱えて

そのまま眠りについたの。

あなたとの繋がれた手の温もりに安心しながら。

やがて訪れる夜明けを心待ちにして。

その時甘い夢に入り込んでいた私は全然気付かなかった。

新一が悔しそうな・・悲しそうな顔をして静かに部屋から出ていった事を。


:::



ふと目が覚めて枕元を見ると大きな黒い目と視線がぶつかった。

目を数回瞬かせてもう一度よく見るとそこには大きなクマのぬいぐるみ。

私はシーツを胸元に当てながら起き上がってぬいぐるみを抱き締めた。

微かに感じる・・・新一の匂い。

ステキな・・ステキなプレゼント。

あの人には似合わないそんなプレゼント。

でも・・・


「・・可愛い。」


ぎゅっと、ぎゅーっと抱き締める。


「ねぇ?あなたの・・・・・あな・・たの・・・。」


あなたの飼い主様はどこにいるの?

とぬいぐるみに問いかけようとした時。

私は何故か・・・何故か気付いたの。



このクマのぬいぐるみは・・・・



あなたの代わりだという事に。



確かめた訳でもないのに・・・・。

自然と込み上げてくるものは




終わりのない涙。




ねぇ・・・・なんで?


なんであんな言葉を残したの・・・





“次にお前が目覚めれば枕元にはステキなプレゼントが置いてあるよ。”





こんな・・・こんなプレゼントならいらないよ。


言ったじゃない。

もうどこにもいかないって・・・・。

なのに・・なのに・・・・。



こんな身代わりだけ置いて。

忘れられない言葉だけを残して。

他は何も言わずに







あなたはまた私の前から消えた。







あの微笑みはYESじゃなかったのね。


また・・・




あなたは私を一人にさせるのね。





「・・・・・・新一の・・ばかぁ・・。」





止めど無く流れ落ちる涙はクマのぬいぐるみに染みてゆく。


外は白く染まっていた。

この寒い街の中あなたは何をするために・・・・何のために歩いて行ったの?

クリスマスという日に。

あなたはまだ幸せになるのを許されないの?

ねぇ・・・・・私はいつになれば

ハッピーエンドの主人公になれるの?

もう嫌だよ。



それでも私はあなたを・・・・



待ち続ける。



あなたに似たあの少年はいないけれど。



あなたと引き換えとなったこのクマのぬいぐるみと。






後編






:::後書き

2004.12.13.作品です。

クリスマス小説として公開していました。

浜崎あゆみさんの「teddy bear」を参考にしています。


無理矢理新さんです。


大人的表現有りですみません。


まだ続きます。


さぁ、新一君は何故いなくなってしまったのか・・・


いや・・・しかし。

過去作品とはなんて恥ずかしいものでしょう。

でもネタがないので再録しました・・・^^



2010.12.25  kako




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