HAPPY ENDING 第6話 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。



第 6 話 違うもり





  ------×月○日PM6:00

  米化駅前に一人の少女が佇んでいた。

  少女の名前は蘭。



  :::



  浅田からメールが届いたあと蘭はすぐに携帯のリダイヤルを押していた。


  呼出し中のディスプレイには


  ------浅田隆司


  呼び出しのコールが3回もしないうちに蘭の耳には声が入ってきた。


  「毛利?」

  「・・・・あさ・・だ・・くん?・・・。」

  「どうした?」

  「やっぱり・・やっぱり新一は・・・しん・・いちは・・。」


  蘭の声は震えていた。
  それに気付く浅田。


  「泣いてる・・・のか?」

  「・・・・・・っ新一は私のことなんか・・・なんとも想ってないよ・・私なんか必要ないんだよ・・・。」

  「毛利?落ち着けって・・な?」


  泣いている蘭を小さな子供のようにあやそうとする浅田。
  また今まで蘭に抱いてた気持ちが疼めいてきている事に微かに気付きながら。



  「・・・もう一人にされたくないの・・・置いていかれたくないの・・・・・・・。」




  多分高2の頃を今の状況と重ねているのだろう。
  蘭の今の状態を中々正常に戻す事はできない。


  「私だって・・・女の子だよ?・・・・本当はよわ・・・弱いんだよ。」

  「うん。」

  「最近の新一・・・おかしいんだよ?ここ一ヶ月電話もくれないし・・ずっと事件に入り浸りだし・・。」

  「うん。」

  「ずっと一緒に登校してなければ下校もしてないし・・もちろん遊びにもいってない。
  手だって繋いでないし・・・・抱きしめてもくれなかった。」

  「・・・・・・。」

  「キスだって・・・・・・・・もう私のことなんか好きじゃないってことだよね?」


  浅田は迷った。
  ここで“そうだよ”と言って自分という存在をもう一度蘭に知って貰うか。
  それとも・・・励ましの言葉を掛けるべきなのか。



  「ねぇ・・・そうだよね?」



  いつもと違う弱々しい彼女の声を耳にして自分の気持ちを隠すなんて・・・

  到底無理だった。



  「そうかも・・・な。」



  そう言うと蘭の先ほどまでの空気が一気に変わった気がした。

  浅田は思う。

  自分はこんなにも欲しいモノを手に入れたいと思うヤツだったろうか?

  機械越しで話す彼女に心底惚れているんだろう。

  例え今弱って壊れかけている彼女に自分を想って貰おうとしてもきっと最終的には自分には

  手の届かない高嶺の花だとしても。


  今だけでも自分のモノにしたい。




  「・・・・もうあんなヤツのことなんか気にすんなよ。」


  新一がいないという事はこんなにも人の行動に変化を及ぼすのだろうか。



  「俺なら・・・いつでも毛利の傍にいるよ?」


  今の蘭にとって“傍にいる”という言葉は最高の逃げ道。

  どん底に陥りかけている蘭にこれ以上の優しい言葉は存在しない。


  「今日は毛利の話に付き合う・・だから・・メールでも言ったけど・・今日会わないか?」


  「・・・・・。」


  蘭は先ほどから何も言わない。
  浅田は一つの賭けに出てみることにした。


  「今日の午後6時米化駅に行くから・・・・俺に会う気があるならきてくれればいいから。」


  6時にした理由は考える時間をあげたかったから。
  きっと今すぐ会おうと言ったら彼女は何も考えずきてしまうだろう。
  なんとなくそれだけは避けたかった。
  ずるい気がした。


  「午後6時・・・待ってるよ。」


  それだけ言い残して浅田は電話を切った。

  今度こそこの恋の最後のチャンスだと自分に言い聞かせながら。




  蘭がくれば、もう一度彼女に想いを告げる。

  こないのならばちゃんと彼女を応援する。




  :::




  この淋しさから・・不安からの逃げ道を与えられた蘭に他の寄り所はなかった。

  きっと6時だろうと・・何時だろうと・・蘭はもう決めていたはず。




  もう逃げ道に転がり込むしか私には出来ない。

  その時は気付いてなかったんだよ。

  “逃げ道”に逃げるということは欲しいモノはソコにはないってことに。

  逃げ道で私に下される指令は偽りの仮面をはりつけることだということに。


  私に迷いは無かった。

  時計の針が午後6時を指す前に私はもう米化駅前に立っていた。


  結局今の今になっても新一からの連絡はひとつもない。


  今の私は何を求めているんだろう。


  ただ一つ佇んでいる私の頭の中にあったのは。


  “もう新一なんて・・・・”




  何度も何度も思う。


  工藤新一がいないという事はこんなにも人の行動に変化を与えてしまうんだろうか。


  6時になるとすぐ入り口の方から人影が見えた。


  「毛利!!」


  はっと顔を上げる私。
  どこかでまだ期待してる自分を見つけて頭を左右に振る。


  「・・・きてくれたんだな・・・。」


  私はただ小さく頷いた。


  「行こう!!」


  目の前に差し出された手の意図がわからない。


  「今日は毛利の誕生日だろう?嫌なことは忘れて楽しもうぜ!」


  ニカっと笑う彼に少しだけ胸が跳ねた。


  自分が今日誕生日だとういうことなんてすっかり忘れていた。


  きっとこのまま楽しめたら、このモヤモヤとした感情は何処かに消えてくれるかもしれない。



  そして私はゆっくり差し出された手に自分の手を伸ばしたの。



  優しい温もりを感じた。

  それでも“彼”の温もりとは全く違った。



  「どこに行くの?」

  「んーてか腹減ってねー?実は俺今日バイトでさ・・・朝飯以降何も食ってねーんだ。」

  「そうなの!?じゃぁ、何か食べよう。どこに行く?」








  「いらっしゃいませー!!」


  ここはとある牛丼屋。

  「大盛のつゆだく1つ・・・・毛利は・・並みでいいか?」

  「なんでもいいよ。」

  「じゃぁ並みのつゆだくも1つ。」


  腰掛けながら蘭は辺りを見渡す。


  「牛丼屋とか嫌だった?」

  「ううん。実は私牛丼屋さんとか初めてで・・・」

  「嘘?まぢで?じゃぁ、今日からここのファンになるよ、すんげーうまいんだ。」

  「へー楽しみ。」


  そんなこと言ってる間に目の前に牛丼が置かれる。


  「早いね・・・。」

  「だしょ?ほら、食ってみ!!」


  そう言いながら浅田から差し出された割り箸を手にとって一口含むと・・・


  「美味しい!!」

  「だろー??バイトの後とかよく来るんだ。」

  「バイトどこでしてるの?」

  「駅前のレストラン。」

  「えー?私よく行くけど浅田君見かけたことないよ?」

  「あー俺裏方だから・・・皿洗いとか料理の手伝いとか。」

  「料理も作るの!?」


  などと言ってるうちにところ変わってカラオケ。


  パーっと盛り上がるならやっぱりカラオケだろう。という浅田君の案。


  「浅田君歌上手だね。」

  「んなことねーって!!毛利こそうめーよな・・。」

  「そんなことないよ!!でもカラオケとか久しぶりだなぁ・・3ヶ月前位に園子と行ったきりだ。」

  「ホントにー?」

  「うん。それに新一音痴だからカラオケに行こうなんてもっての他だ・・・・し。」


  私ってば何言ってるんだろう。

  新一のこと今は忘れていたいんじゃないの?



  「ごめっ・・・何言ってるんだろーね私・・・・。」


  薄暗い部屋の中にいるからきっとしんみりしちゃうんだ。


  「別に気にすんなよ!!工藤の愚痴くらいいくらでも聞くし!!」


  浅田君はそう言ってくれたけど・・・
  新一っていう名前を出したとたんに頭の中に新一の事が浮かんできて。

  牛丼屋さんとかだって新一となんて行ったことないなぁーとか、
  新一はバイトなんてしたことないなとか、
  新一はカラオケとか絶対行かないなーとか、


  なんでも新一に繋げてしまう自分がいる。


  「カラオケ終了!!どっかでお茶でもしちゃうか?」


  浅田君のその言葉にはっとする。


  会計を済ませて外に出ると星がないことに気付いた。


  「なんか暗いな・・・夜だけど。・・・雨ふるのかな?」


  空を見上げながらそう呟いた浅田君に声をかける。


  「浅田君・・・ごめんね?」

  今思えばただの私のわがままにつき合わせてるようなモノだよね。


  「あやまるなって・・・・俺が勝手に誘ったんだし。」


  なんだろう・・・すごく胸が苦しい。


  「本当はさ・・・帰り際に渡そうと思ってたんだけど・・・ホラ。」


  「え?」


  差し出された手に持たれていたのはリボンのついた小さな袋。


  「・・・誕生日プレゼント・・・急いで選んだからいいもんじゃないけど・・よかったら貰ってやって。」


  「え・・・そんな・・悪いよ。」


  そのまま返そうとしたけど浅田君の手にまた返された。


  「いらないなら・・・捨てていいから・・今は一応受け取って。」


  そういう浅田君から何か真剣なモノを感じて素直に受け取ることに決めた。


  「ありがとう・・・・あけてもいい?」

  「いいよ。」


  リボンを解いて袋から出てきたのはネックレス。

  シルバーのシンプルなデザインの飾りがついていて何気ないけど可愛らしさを感じる。


  「誕生日おめでとう。」


  「ありがとう・・・すっごく嬉しい。」


  そう言うと優しく微笑んでる浅田君と目があった。


  もう・・すぐ・・・もうすぐそこに逃げ道の入り口が近付いていた。


  ポツ・・・ポツ・・・ポツポツ・・・・


  浅田君の言った通り雨が微かに降り始める。


  そして次第にその勢いは増す。


  ザァァァァァァ------・・・


  「うわっ・・・毛利傘持ってたりしないよな?」

  「ごめん・・今日天気予報みてこなかったから・・・」

  「だよな・・・この辺傘売ってるトコねーし・・・。」

  走りながら会話を交わしていると浅田君が何かに気付いて立ち止まった。



  「あのさ・・・俺んちこっからすぐなんだけど・・くる?」



  「えっ・・・・。」


  「多分通り雨だろうから・・毛利を濡れたまま帰らすわけにもいかねーし。」


  「あっ!!別に下心とかそんなんねーから!!」


  言い訳するように話す浅田君の言うことに少しだけ疑いを持ちながらもお邪魔することにした。


  行き着いた場所はひとつのアパート。
  中に入るとどう考えても一人暮しをしているように見える。


  「散らかってるけど入って。」

  「浅田君ご家族は?」

  「あ・・言ってなかったっけ。俺一人暮ししてんだ。」

  「え?」

  「高校入る前急に親の転勤が決まってさ・・高校決まってんのに今更転校なんてやってらんねーから
  一人だけこっちに残して貰うことにしたんだ。」

  「そうだったんだ・・・・じゃぁ一人で大変じゃない?」


  「んーでも高校出たら一人暮ししようって前から思ってたし・・平気。」


  自分のことを先までもう決めているトコロがなんだか新一と似ている気がした。


  「それより・・・毛利風呂入る?服濡れただろ?」

  「大丈夫・・そんなに濡れてないし・・浅田君の方が濡れてるよ?風邪引いちゃう。」

  「これくらいタオルでふいときゃ平気だよ。毛利、タオル。」


  「ありがとう。」  


  

  浅田君からタオルを受け取って髪の毛を拭く。


  「突然降ったからびっくりしたね。」


  「だな。」


  窓から外を見ると雨は相変わらず勢いをつけて降り続けている。
  沈黙の中にその音を感じる。


  「雨弱くなったら帰るね。傘借りてもいいかな?」


  私がそう言うとタオルを頭に掛けたまま浅田君が台所に移動した。


  「玄関のとこに何本かあるから好きなの使っていいよ。毛利なんか飲む?」

  「あっそんな気遣わなくていいよ。ゆっくりしてて。」

  「まーいいからいいから、じゃぁココアでいい?」

  「ごめん・・・ありがとう。」


  やがて台所からいい香りが漂ってきたと思と浅田君が両手にカップを持ってテーブルに

  ソレを置いた。


  「どーぞ。」

  「ありがとう・・・いただきます。」


  口に含んだココアはちょっとだけほろ苦くてでも甘くて・・温かい。


  「美味しい・・・。」


  暫し沈黙が続いた。

  微かに感じた緊張感が耐えられなくて私は口を開く。


  「浅田君・・・今日はありがとう。すっごく楽しかったよ。」


  私がそう言うと浅田君がカップをテーブルに置いてこちらを向いた。


  タオルに隠れていてその表情はわからない。


  「・・・浅田君?」


  近付く体に。
  この後何が待っているかどこかで気付いていたはずなのに。


  当然かのように行われる抱擁。


  強引なはずなのに嫌がる自分はいなかった。
  それどころかその抱擁に優しさを感じてる。


  「浅田・・くん?」




  次に近付いてきたのは顔・・・・。
  自分の一番愛する人ではないのに。
  私は静かに目を閉じていて。
  接触を待ち望んでいて。



  何してるのよ。


  これはあの人じゃないでしょう?


  蘭。


  あなた自分が何してるのか分かってる?





  「・・・ん。」





  気付けば二つの唇は重なって。

  角度を変えて繰り返されていて。

  いつもと違う温もりに。

  少し戸惑ってでも受け入れている自分がいて。


  自分自身もう何が何だかわからなかった。


  背に回されたあの人とは違う優しさを感じた。


  強引な抱擁の筈だったのに私もゆっくりとその優しい背に手を回しはじめた。


  「・・ん、やっ・・・・。」


  長い口付けはやがて唇から首筋まで移動してきた。





  わたし・・・
  何してるの?


  目の前の人は・・・・・





  新一じゃない。









  「や・・やだ!離して!」





  私は気付いたら浅田君の胸に手をついて押し退けていた。


  「・・・ごめっごめんなさい。」


  「毛利・・・。」



  “ごめんなさい”



  誰に向けて言ってるの?


  何度も何度も繰り返していたら浅田君は切なげに苦笑して。


  新一が重なった。



  そんな顔・・・しないで。



  「・・・俺も・・・無理に・・・悪ぃ。」



  「・・・・・。」


  「なぁ・・・俺待ってるよ。毛利の気持ち整理がついたら・・・俺んとここいよ。
  俺は・・・絶対毛利を一人にしたりしないから。」





  一人にしないから。


  あの人からも聞いたことがある。

  私はそれをずっと信じていた。

  同じ言葉。

  そのはずなのに。


  どうしてあの人に言われた時のほうが言葉には表せられない程嬉しかったんだろう。


  そんなの簡単だよね。


  「・・・・・・私は・・。」


  雨に隠れた星達がざわざわとせめぎあって私の胸を締め付ける。





  :::






  --------PM23:00毛利探偵事務所


  今日はすでに電気がついていないようで事務所の中は暗闇と化している。

  雨はまだ降り続けている。


  そこに辿りついた蘭は傘もささずに雨に濡れてびしょ濡れだった。


  ぼーっとしたまま歩いて階段のほうへ目線をやる。


  そこで目に入ってきたものに蘭は動きを失った。



  昨日までは会いたくて会いたくてしょうがなかった・・・・


  でも今日は一番会いたくない人。


  階段に佇んでいた人物が蘭に気付く。



  「・・・・・・・よぉ。」



  聞きたくてしょうがなかった声が今は嫌なモノに感じてしょうがない。



  「・・・・・・しん・・い・・ち。」




  気付けば雨は止んで星達が微かに輝きだそうとしていた。



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  :::後書き


  牛丼屋・・・って・・・・。

  チョイスミスだろ。

  
  5年前のkakoによるとこのラストの新ちゃん登場シーンから話が膨らんでいったそうです。

  ここまで随分長かったなぁ・・・。


  いやぁ・・・新蘭ファンの皆さまにとって今回は酷すぎる・・・。


  浅田・・・・お前やばいよ。



  2005.04.04 作品


  2010.05.18 kako



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