第2話 お安いご用?
結局あれから新一から連絡はなく一日が過ぎて、また一日が始まる。
学校に行く用意をしながら、新一を迎えに行くか悩む。
なんとなく顔を合わせたくなくて。
私が勝手に思い込んでるだけなのかもしれない。
けど、そう思わずにはいられない。
新一は私のことなんかもう好きじゃないんだ。
だって付き合ってから初めての私の誕生日だよ?
それなのに、何も言わずに事件の捜査になんて行くんでしょう?
せめて『ごめん』の一言でもあれば私は安心できるのに。
ただ忘れてるだけ・・・それは無い・・・と思う。
だって自分の誕生日は忘れるくせに私の誕生日だけはいつも忘れなかったもんね。
やっぱり、もう飽きちゃったって事かな?
それに最近は本当に一緒にいない。
先週も先々週もずっと事件事件って・・・
私といるの疲れたんだ、だから大好きな事件の方に行っちゃうんだ。
いつもならどこかでは新一を信じてるはずなのに。
今回はどうしても信じれない。
そんな疑問と不安が頭の中をぐるぐると回る。
だめだ、今日は迎えになんて行けないよ。
最近は事件続きで登校も下校も一緒じゃなくて。
事件のない日は私が迎えに行くはずで。
久しぶりに一緒に登校できるはずなのに・・・・。
もし迎えに行ったら、私変なこと言って新一困らせそう。
:::
「工藤。・・・工藤?工藤いないのかぁ?」
出欠確認。
新一の声が返ってこなくて先生が何度か繰り返す。
一つ空いてる座席。
そこの人物が休みである証拠。
「毛利ー工藤休みか?」
「知りません。」
そう知らない。
結局新一の家に足が向かず、私は一人で登校した。
私の返事にざわつく教室。
「蘭が知らないなんておかしいわよ!」
「ケンカでもしたんじゃねーの?」
「工藤何したんだよー。」
こそこそと耳に入るそんな言葉。
やめてよ。
ケンカなんてものじゃないわよ。
ガラっ
「すみません、遅刻しました。」
教室内のざわつきを一瞬で静めた一言。
少し機嫌の悪そうな新一がそう言いながら席についた。
一瞬こちらを見た気がしたけど、私は気付かないフリをする。
SHRが終わってから質問攻めが待ってるかと思ったら、新一のなんともいえないオーラがそれを拒んだ様で
誰も近づこうとしない。
もちろん私もいつもの習慣を破ったせいか新一に話し掛け様なんて思わなかった。
そのまま時間は過ぎていき昼休みになっていた。
朝からピンと張った緊張感が少しだけ緩やかになった気がする。
「蘭お昼食べよう。」
「うん。」
朝からきっと私たちの異変に一番に気付いてたはずの園子が私の元に寄ってきてお弁当を手前に差し出した。
どこで食べる?と園子が言い掛けた時私の肩が軽く引き寄せられた。
「悪いな園子、今日俺が蘭と約束してたんだよ。」
先ほどまでとは一転して、満面の笑みを浮かべて園子にそう告げた新一。
約束なんかしてないじゃない。
何よ、その笑顔は。
「・・っ私約束なんてしてないっ!」
そう言って肩の寄せられた手を振り払おうとしたその手を簡単にもう片方の手で抑えてきた。
「いいからこいよ。」
低い声でそう言われて強引に教室から引き出された。
園子が心配そうにこちらを見てた。
:::
「痛いっ痛いよ。放して!!」
何度私が痛みを訴えても新一は放そうとしなかった。
行き着いたのは屋上。
今日は風が強いせいか屋上で昼休みを過ごす生徒の姿は見えなかった。
フェンス越しまで歩いてやっと手が痛みから解放された。
新一はフェンス部分の出っ張ったコンクリートのところに腰掛け口を開いた。
「・・・なんで今日迎え来なかったんだよ?」
「・・・・いつもいつも私が迎えに行く必要ないでしょう?」
「習慣がいつもと違うとなんとなく一日のリズムが狂うんだよ、せめて連絡入れろよ。」
「・・・・。」
風に踊らされる私の髪が顔に纏わり付いてイライラする。
「何怒ってるんだよ?」
「別に怒ってなんかないよ。」
「そういう時に限って怒ってんだよ。はっきり言えよ。」
新一にそう言って睨まれて。
返す言葉が見つからなかった。
怒ってることを全部言いたいけど。
そんなこと言ったら余計に新一に嫌われると思って。
恐くて言えない。
この曖昧な態度も十分怒らせているはずなのに。
「・・・・・・俺、明日北海道出発するから。」
「え・・・だって来週って・・・。」
「急に予定変更になったんだ。」
だんまりを決めこんだ私に観念したのか新一は別の話題を持ち出した。
予定変更で早くなったって事は帰ってくるのももっと早くなる?
もしかして私の誕生日までに帰ってこれる?
「じゃぁ・・・・帰ってくるのもっと早くなる?」
「まぁ・・・休みに入る前には帰ってこれるんじゃねー?」
「本当!?」
「あ・・あぁ。」
例え覚えてないとしても誕生日に一緒にいれなくはないよね?
私単純かな?
今ので全部の疑問と不安が吹き飛んだ。
私が迎えに来なかったのを怒るって事はイコール私に迎えにきて欲しいってことだよね?
嫌いだったら迎えに来て欲しいなんて思わないよね?
新一はちゃんと私を想ってくれてるよね?
「・・・・・で?何怒ってたんだ?」
「ううん。何も怒ってないよ、ごめんね迎えに行かなくて。」
突然の私の豹変ぶりに新一は驚いてたけど「もういいよ。」と言って笑ってくれた。
よく考えたら新一とこんな風に話すのは久しぶりなんだよね。
昨日もゆっくり目を合わせて話せた訳じゃないし。
「ね。久しぶりだね、こんな風に2人で話すの。」
「・・・・そうか?」
「そうだよ。」
そう言って新一に笑いかけたら新一が私の腕を引いて抱き締めてくれた。
久しぶりに抱き締めてくれたね。
明日から1週間感じられない温もりをじっくりと感じる。
ふと新一の顔を見上げると優しい顔で微笑んでて。
私はゆっくりと目を閉じていき新一を待つ。
新一と私の唇が触れるか触れないかというところにきて・・・・・
新一が急に顔を後ろに下げた。
キーンコーンカーンコーン・・・・
同時になる予鈴。
「新一?」
「予鈴鳴ったし、教室戻ろうぜ?」
新一はそう言って立ち上がり私の腕を引いて屋上を後にした。
蘭達が屋上を出て行ったあと、屋上の入り口付近で一つの人影が。
「良い事きーいた♪」
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なんで?
なんでキスしてくれなかったの?
私のどこかにまた疑問と不安が渦めき始める。
最近新一から電話掛かってきた事あったっけ?
一緒に登校したっけ?
一緒に帰ったっけ?
手を繋いだっけ?
ゆっくり向き合って話したっけ?
・・・・・抱き締めて貰った・・・?
キス・・・・したっけ?
私最近のあなたとの想い出・・・全然ない?
塞がりかけた傷跡はまたゆっくりゆっくりとソレを広げ始める。
そしてその傷に気付かないまま、新一は北海道へと旅立った。
***
朝。
蘭は新一が出発の日だということで早くに目が覚めてしまいいつもより大分早い時間から登校していた。
本当は見送りに行くつもりだったが新一に学校だから来るなと言われてしまったのだ。
「今日から1週間は会えないんだよ?」
「見送りくらいいいじゃない。」
机に寝そべって一人言を零す。
ガラっ
「・・・・・あれ?毛利じゃん、今日はえーな。」
ドアを開けたのは蘭と新一のクラスメートで浅田隆司(アサタ゛リューシ゛)。
「浅田君こそ・・・いつも早いの?」
「まぁね、毛利は珍しいよな?」
「うん、ちょっと今日は目が冴えちゃって・・・・・。」
笑いながら蘭がそういうと、隆司は顔付きが変わって微かに微笑みながらこう言った。
「・・・・・工藤がいないから?」
「・・・え?」
「工藤今日から北海道なんだろ?」
「何で知ってるの・・・・?」
「毛利には悪いけど、実は昨日俺も屋上にいてさ・・・聞いちゃったんだ。」
「嘘!?」
蘭は隆司から聞かされることに驚きが隠させない。
「大丈夫別に誰にも言わないし・・・それに聞かれて困る程のもんじゃねーじゃん?」
まぁ、よくよく考えればそんなに驚くほどでもない・・・・けど・・・・
触れてはいないがもしかしたらキスシーンをクラスメートに見られたのかと思うと恥ずかしさが増す。
「あっ、ラブシーンについては困るか?」
「みっ見てたの!?」
「ばっちりvv」
「あ・・・浅田君!絶対みんなには言わないでね?」
顔を真っ赤ににして訴える蘭。
隆司はソレを見ると笑いだした。
「そんなに恥ずかしがるなよ・・・こっちまで照れるじゃん?ククっ。」
「浅田君~!!」
「わかったよ・・・絶対言わないから安心しろって!!でもそこで一つ条件がある。」
「条件?」
蘭が小首を傾げると。
「ケー番教えて。」
にっこりと笑って言われたことに蘭は拍子抜けする。
「それくいらいお安いご用だよ。」
蘭はほっと一息ついてから鞄から携帯電話を取り出す。
「・・・・本当にお安いご用?」
「え?」
隆司の声のトーンが変わったことを不思議がりながら蘭が隆司の顔を見る。
「俺が毛利のこと好きだって言っても?」
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:::後書き
オリキャラ登場!!浅田です。
あーあ。新ちゃん北海道行っちゃった・・・
なぜ彼はキスを拒んだのか。
3話で少し明らかに?
2005.03.09 作品
2010.05.16 kako
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