HAPPY ENDING 第3話 | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。

第 3 話 いんです。




  「工藤君!」


  何ヶ国語ものアナウンスが耳に入る空港のホール。
  聞き慣れた日本語で自分の名が呼ばれはっとして振り向くとその声の主は高木刑事だった。


  「高木刑事、おはようございます。」

  「おはよう、悪いね工藤君。学生の君を事件の捜査のために北海道まで同行させることになって・・・。」


  申し訳なさそうに話す高木刑事に苦笑して言ってみせる。


  「いいんですよ。それにこの事件の結末を東京で黙って待っているのも性に合わないですし。」


  それを聞くと君らしいな。と笑う高木刑事。


  今回の北海道への移動は高木刑事と二人でだ。
  目暮警部や、他の捜査員達はすでに北海道へ向かい北海道の警察と合同捜査準備に取り


  かかっている。
  高木刑事は新一を連れてくる役目を任され今こうして新一と二人で北海道へ向かう訳だ。

  機内に入り離陸を待つ。
  新一は窓際ではなく通路側を希望してシートに座る。
  新一はその間に事件の調査表に目をやる。
  今回の事件は東京で発生。
  しかしその容疑者として挙げられている人物が北海道にいるという情報を得た。

  その事件の内容はこうだ。
  まず一番大きな事件は銀行強盗。
  犯人は3人。
  その手口はなかなか巧妙なものであった。
  幸いその事件で犠牲者は出なかったが日本中を騒がす事件であったことは間違いない。
  その3人の内2人は捕まった・・・というか見つかったという表現の方が正しいのだろうか。
  逃走中だった犯人に途中、警察の目は簡単にまかれてしまう事態が起きた。
  しかしその直後ある通路で先ほどまで追っていた車を発見。
  その車の中にいたのは2人。
  黒い服で身を纏っていた。


  そして2人の息は止まっていたのだ。


  車にわざとかのように残されていた免許証や身分証明書から作為的なものを感じた。
  そして結局見つからないのは残された1人の犯人。
  おそらく残りの1人にこの2人は殺されたとみて間違いはないだろう。
  しかし自分と繋がりが解ってしまうような他の2人の身分証明書をやすやすと置いていく

  ものだろうか?
  もちろんこの2人の身元から1人の繋がりを持った人物をすぐ弾き出した。
  が、あの巧妙な計画を立てていた強盗犯がこんなミスを犯すだろうか?
  新一の脳裏に浮かんだ結論は、


  警察への挑戦状。


  間違いなく残りの1人によってこの強盗計画は実行されたはずだ。
  そうこれはソイツからの挑戦状、挑発だ。
  すぐに残された1人の犯人の身元を捜査したがもうその姿はどこにもない。
  しかしつい3日前にその1人を北海道で見たという証言が。
  警察はすぐさま北海道での捜査を決定。
  そして知能犯への対策として名を挙げられたのがこの世界を騒がす平成のシャーロック・ホームズ

  こと日本警察の救世主、高校生探偵工藤新一だ。




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  「・・・そういえば、蘭さんは元気かい?」


  「え・・・?」


  事件の調査表と睨み合いをしていた新一に一気にその緊張感を解く言葉が掛けられる。


  「最近会っていないから・・・・仲良くしてる?」


  これから日本を騒がせた知能犯を捕まえにいくというのにこんな話を持ち込まれるとは微塵にも

  思わなかった。


  「・・・・・まぁ・・・。」

  「そうか。でも今回は1週間位会えなくなるかもしれないし・・・大丈夫なのかい?」


  その言葉を聞いて頭にあの愛しい優しい顔が浮かぶ。
  新一はふと笑っていいのけた。


  「・・・アイツにはなんの音沙汰なしの俺を1年近く待っていてくれた実績がありますからね。」


  ハハと笑う声が高木刑事から返ってくると思った新一は次の高木刑事の言葉に耳を疑った。



  「そうだね・・・でも正直淋しいんじゃないかな?それに何より・・・・」




  高木刑事が何か言いかけた時離陸準備が整いシートベルトの着用が義務付けられた。
  機体がゆっくりと動きだす。
  滑走路へこの大きな鉄の塊を移動していく。
  スピードが加速し機内が少し騒がしくなる。
  ゴォォォォという音が耳に入り込み気圧に押される感覚がする。
  フと機体に軽い感覚がした時新一は気になった高木刑事の言葉を再度聞き出そうと試みる。


  「高木刑事・・・それに何より・・・・なんですか?」

  「え・・・・あぁ・・。」


  機体の傾きが正常に戻りゆったりとした感覚が今空を飛んでいるという事を機内の人々に伝えた。



  「それに何より・・・工藤君が辛いんじゃないかい?」



  それを聞いて新一は思考が鈍った。
  誰にも気付かれない様に、蘭にさえ悟られない様にしていたことをこうも簡単に見抜かれてしまった。



  新一は軽く笑みを零して初めて口にした。



  「最近・・・どんな嫌な事があっても蘭に会えば吹き飛ぶんです。」



  新一のその言葉に高木刑事は笑って、


  「・・・素敵なことじゃないか?」

  「・・・でもそれはただの甘えだって気付いたんです。」

  「甘え?」

  「はい。」


  新一の言う事に高木刑事は不思議そうな顔をする。


  「どんなに辛くて痛くて苦い思いをしたとしても蘭に会えば大丈夫だって頼り過ぎてるんです。
  アイツ優しいから・・・受けとめてくれるって安心しきってて、
  本当はアイツにまで辛い思いを感じさせる事したくないのに。」

  「・・・・。」


  初めて弱みを見せた目の前の少年に驚きが隠せない高木刑事。
  


  忘れていた。

  

  どんなに推理が出来たって
  どんなに豊富な知識を持っていたって
  どんなに完璧に見えたって
  どんなに大人に感じたって

  目の前の少年は

  まだ自分を知らないただの不器用な1人の少年なのだ。


  「自分が弱い事を思い知らされる気がして。」



  「いや・・違うか・・・思い知らされるんじゃんなくて・・・、」




  「弱いんです。」




  なんて切なげに笑うんだろう。



  「いいじゃないか。」


  「え?」


  「男が甘えちゃいけないかい?男が好きな人に頼りたくなるのはおかしいかい?

  弱くちゃいけないかい?」


  高木刑事が少年へ真剣な瞳で問い掛けてくる。


  「女性だってね、男となんらかわりはないよ。僕も最初は工藤君と同じ考えを持っていたときも

  あったけど、だんだん分かってきたんだ。女性だって甘えて欲しい、頼って欲しい・・・・・蘭さん

  だって同じだよ。」



  新一は何も口に出来なかった。


  ただ気付いたのは隣に座る大人は本当に大人で、自分は大人にみせかけているただの少年

  だということ。


  一人でかっこつけていた自分がとてつもなく惨めに思った。
  そして昨日までの最近の自分の行動を振り返る。
  蘭という一番大切な存在に頼り切っている自分が恥ずかしくて、かっこ悪くて。
  昨日屋上で交わした言葉を思い出す。
  今思えば昨日の蘭の行動は全て自分の勝手な思い込みのせいだ。
  蘭は口にはしなかったがきっと最近の俺の態度に淋しさを覚えていたんだろう。
  今になって自分が蘭にとった態度が最低なものに思えてくる。


  最近はずっと蘭に会えば頼ってしまうと思って出来るだけ一緒にいないように事件の捜査へ

  加わっていた。


  随分と自分から蘭に電話をしていなかった。

  きっと声を聞けば自分が弱くなると思ったから。

  一緒に登校したか?

  一緒に帰ったか?

  手を繋いだか?

  ゆっくり向き合って話をしたか?



  ・・・・・抱き締めたか?


  キス・・・・したか?


  これらの行為をすればきっと俺は蘭を求めてまた気付くんだ。

  自分がどれほど蘭に頼っている弱い男なのか。





  新一は自分の馬鹿さ加減に呆れる。
  別に悪い事なんかじゃなかったんだ。

  今更気付くなんてなんて馬鹿なんだろう。

  一度この北海道での捜査で頭を冷やそう。



  そしてちゃんと自分の弱さも甘えも全部ひっくるめて受け止めて貰おう。

  きっとアイツはちゃんと受け止めてくれるはずだから。



  「高木刑事。」


  「なんだい?」





  「来週の土曜までには絶対に東京へ戻れますよね?」


  「・・・あぁ多分、何か用事でもあるのかい?」





  「えぇ・・とっても大事な日なんです。」





  その時新一は全く気付いていなかった。
  自分が蘭にとった態度がどれだけ蘭を追い詰めていたか、
  どれだけ傷つけていたか。


  そして運命の土曜日。


  最悪の結末が待っていることに。



  NEXT >>





  :::後書き 


  第3話です。
  

  私が言いたいのは・・・新ちゃんは蘭ちゃんの誕生日は忘れてないよ!ってこと。

  そして男すぎてしまった故のすれ違いなんです。

  かっこつけすぎてた自分に気付いた新ちゃん。

  蘭ちゃんに伝えられるのでしょうか。

  

  でも・・・・・・遅い。




  2005.03.24 作品

  

  2010.05.17 kako



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