【書評】鈴木宣利の気になるマイ本459冊目「スティーブ・ジョブズ Ⅱ」 | 【ビジカン!】鈴木宣利のビジネス感性研究所

【書評】鈴木宣利の気になるマイ本459冊目「スティーブ・ジョブズ Ⅱ」


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「スティーブ・ジョブズ Ⅱ 」
The Exclusive Biography

著者:ウォルター・アイザックソン
訳者:井口 耕二
発行:講談社


今日、本屋に立ち寄ってみたら、
スティーブ・ジョブズ祭りとなっていた。
関連本が目白押しで、よくまあこれだけ集めたものだ。

今が旬ということで、売れるチャンスを
見逃したくないのだろう。

その中でも、やはり読むべき本がこの
「スティーブ・ジョブズ Ⅱ」下巻である。

上巻は、彼の生い立ちとアップル創業の歴史、
そして、どちらかというとパーソナリティがメインなので
面白いのであるが、劇的な変化に乏しいようだ。

しかし、下巻になるといよいよアップルへの復帰、
そして現在の製品につながる大躍進、旅立ちという
クライマックスになるので、まるでハリウッドストーリー
を読んでいるようで断然面白い。
そういった点で、まずは下巻からスタートしても
いいのかも知れない。

今回は、心残った点は多く、3つ選定するのは
迷うのであるが、早速みてみよう。


○40代の優れたイノベーター

20代~30代の過ごし方や残した実績が、40代からの人生を
つくることになる。だから若い時代にしっかり実績を残し、
認められるようになるべきだと。

確かに一理あるが、また真実でもない。
ケンタッキーフライドのおじさんは、定年後の事業だし、
またこのジョブズの場合も、40代でアップルに復帰した後の
人生の方が、優れたイノベーターになれることを証明した。

ジョブズの場合は、ラリー・エリソンのように物欲でもなく、
ビル・ゲイツのように慈善事業でもないという。

唯一、人から“すごい思われるモノをつくる”ということのみに
人生を捧げたようなのだ。己のうちから沸き上がる衝動を
実現させていったのだ。

今、MacBook Airを使っているが、ディスプレイを閉じたときの薄さや
曲線を多様した四隅の処理のしかた。
さらには、底板を止める小さな特殊ネジなど、微細な調整が
施されており、モノづくりの真髄をみているようだ。

また彼は、性格の極端さから、白から黒かを判断する二元論になり
やすかったようだ。つくった試作は、驚異かゴミかということになってしまう。
そして、驚異に振り子が触れたことで、IT業界をリードする
iPhone、iPadという新しいマーケットが生み出されたのだ。

妥協を許さない精神は、人としても見習いたいものだ。



○歴史的なプロモーション「シンク・ディファレント」

広告界に残るすばらしいキャンペーンがある。
それが、アップルの「シンク・ディファレント」という
キャンペーンだ。

リー・クロウというクリエイティブ・ディレクターがすばらい
アイデアを持ってきた。すでのアップルは、トップ5に入る
魅了するブランド力を誇っていたが、何が、どう特別なのか、
今ひとつ理解されていなかった。

そこで、やるべきことは、製品広告ではなく、パソコンを使って
どんなクリエイティブなことができるか?
創造性をイメージさせることが必要だと感じたのだ。

「think different」というコピーとともに、
背景に登場する偉人たち。

ピカソ、アインシュタイン、ガンジー、エジソン、
チャップリン、キングなど一目でわかる人たちだ。

あのラリー・エリソンも、「テクノロジー業界で唯一
ライフスタイルブランドを生み出したのがスティーブなんだ」
と証言している。

モノづくりの奇才と同時にマーケティングの天才でも
あった。

★Think Different Japanese 日本語
http://youtu.be/Nbsi2I0GXPk


○芸術を愛する心が、iPodを勝利に導いた

音楽業界を巻き込んだiPodの成功は、今やアップルを
押し上げる原動力となったが、どうして著作権管理に
うるさい業界を説き伏せることができたのだろうか。

詳しい話しは読んでいただくとして、ここでは
彼の、アップル設計者の情熱が業界を動かしていったと
だけ言っておこう。

彼は年とってから、モチベーションが大事だと思うように
なったという。

なぜならば、マイクロソフトが開発した
ズーンというiPodに対抗するデジタル音楽デバイスが
あるのだが、それを逆に批判したことで自分たちの
価値がわかったようだ。

つまり、マイクロソフトの人たちは、アップルと違って
本当に音楽や芸術を愛していないと感じたという。

iPodの勝利は、自分たち一人ひとりが自分のために、
友人や家族のためにつくりたいという一心で作ったので、
当然、妥協の産物はでてこなかったのだ。


さて、いかがでしたでしょうか。

最近、アップルの会長に、アーサー・レビンソン氏を
選んだという発表があった。さらに、昨日、グーグルは、
インターネットで音楽配信を始めるとの発表もしている。
米アップルの「アイ・チューンズストア」に挑戦することに
なるようだ。

ジョブズ亡き後も、めまぐるしく市場環境は変わって
いくと予想できるが、アップルの先手を打って、自らの
事業形態をゼロベースで発想し、素早く構築することはすでに
実証済みであり、ジョブズの残したDNAは、これからも
輝き続けることだろう。

アップル製品のユーザーは、開発秘話などから深く理解、
共感できると思うが、それ以外の方でも、もちろん
企業のあり方やイノベーションのつくり方など参考になるに
違いない。ぜひ、読んでみてください。

それでは、またスズセンでした。


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編集後記
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14日に、会計検査院は、日本原子力研究開発機構
(原子力機構)が建設や維持管理などに約830億円を
かけた高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の施設が、
2000年から中断したまま無駄になっているとようやく指摘したようだ。

びっくりするのが、10年度末までのもんじゅ総事業費が、
原子力機構のこれまでの公表額より1500億円以上多い
約1兆810億円になるというから驚きだ。

血税をいつまで垂れ流しするのでしょうか?
これで、増税を国民に求めても、納得しがたい状況なのでは?

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