【書評】鈴木宣利の気になるマイ本401冊「減速して生きるダウンシフターズ」 | 【ビジカン!】鈴木宣利のビジネス感性研究所

【書評】鈴木宣利の気になるマイ本401冊「減速して生きるダウンシフターズ」


【ビジカン!】鈴木宣利のビジネス感性研究所-ダウンシフターズ

★「減速して生きるダウンシフターズ」

著者:高坂 勝
発行:幻冬舎

資本主義社会は、すべての基準が成長、拡大する
ための努力なら良しとする社会だ。

需要が拡大することで、消費が増え、
それに伴うモノやサービスの生産量が拡大し、
新たな資本が会社に集まる。その資本で
給料が支払われ、また消費に向かう。

実は、このような大量消費社会を続けていくことで、
世界はすごいことになってきている。

平均的なアメリカ人は、ひとりあたり平均250万リットル
の水を消費し、1000本の木を使い、2万1000トンのガソリン、
を消費するという。このような生活を世界の人々が
追い求めることで、なんと、地球が5個分必要に
なる未来の世界が待っているのだ。

そもそも、これほどまでに拡大することが良い
ことなのであろうか。幸福とは、モノやおカネだけでは
図れない、心の充足感、満足度であるはずだ。

そうであれば、今あるものでも充分に幸せになれて
も不思議ではない。かと言って、いきなり
そのような心境になれない方も多いだろう。

今までの消費生活をストップしてしまうことは
難しいが、少しづつ減速した生活をすることで、
自分らしさを取り戻した人々がいる。

減速することで、自分の時間が増え、
好きなことをすることで、心の豊かさを
取り戻すことができるのだ。

今日は、そんな生活を実践している著者の体験記と
なった本を紹介しよう。

○減速生活で自分らしい生き方、自由を得る

著者は、東京池袋の片隅の6.6坪ほどの小さな飲食店
を営んでいるという。お店の名前は、
「たまにはTSUKIでも眺めましょう」という洒落た
名前のバーだ。

店舗コンセプトとして、肥大化し過すぎた
経済へのアンチテーゼとして、小さく、ゆっくり、
ムダでいい、がんばらない、好きにいきる、大儲けしない
などのルールをつくり、お客との顔の見える関係性を
大事にし、開店から5年以上になるという。

そもそも、このようなBARを開店した目的は3つあるという。

1)家族とのコミュニケーションの時間を大事にする。
2)夢の時間をつくり、好きなことをする。
3)社会を「がんばりすぎない」「働きすぎない」
  世界にする。

このような生活を6年続け、持ち出し(赤字)になる時は
ないというのだからたいしたものだ。
それというのも、きちんと収入と経費のバランスを計算
しているようで、最低1日5人のお客さまが来店して
くれれば成り立つビジネスを想定したという。

また予定よりも儲かってしまった場合は、適性売り上げに
減らす努力をするというのだからびっくりする。

持続可能なライフスタイルは、必要以上に稼ぐことより、
稼がない自由を選択しているからなのだそうだ。


○コードを外す生活が豊かさを生み出す

著者は、流通関係のサラリーマンであったわけですが、
退社を決めた日から余分なモノをどんどん処分したり、
譲ったりしていったそうだ。
また併せて様々な契約も解約していった。

すると、モノを手放していくほど気持ちよく
なってきたという。つまり、自分の身体が様々な
コードに繋がれていて、身動きが取れなかった
ということだ。

契約というコード、支払いというコード、
周囲の期待に答えなければならないコード。

コードを外すたびに、自分が解放されて、
どんどん自由になれることに目覚めていったそうだ。

確かに、モノが増えるたびに支出や時間が取れられる
構造になっている。自動車には駐車場代や保険が
必要になるし、パソコンを使いはじめれば、WEBの
閲覧やメール確認で時間が取られる。
私たちは、意識的に賢くモノを選択していかなければ
ならないのかもしれませんね。


○ミニマム主義でいこう

スモールメリットを意識した考え方、暮らし方、経営の
あり方を「ミニマム主義」というそうだ。

日本一小さい農家である、通称源さんとの出会いの中で、
「スモールメリット」を活かす哲学を広めていくことを
約束したようだ。

確かに、ミニマムであれば、必要最低限のコストで
済むし、生産性の低い時間も生まれないだろう。

例えば、大きい庭付きの家に住みたいと思ったと
しよう。大きい家に住むことで、毎週の掃除
や庭の草むしりはかかせないし、冬になれば
暖房費もかかる。さらに、大きいために
4人程度の核家族では、すべての部屋を活かす
ことはできないだろう。

つまり、必要以上に拡大、大型、拡張を意識した
行動は、効率がでないばかりか、デメリットになる
場合があるのだ。

さて、いかがでしたでしょうか。

ひとり一人が、「大きいことはいいことだ!」
という思想を、もう一度「本当にそうか?」と
振り返り、出来ることからダウンサイジング
することで、個人個人が分かちあうことのできる
新たな社会構造のカケラが生まれてくるのでは
ないだろうか?

今までの生活レベルを意識的に減速することで、
本当の幸せを実感できる生き方に気づくことが
できるかもしれない。

この本では、新たなライスタイル、働き方の変革を
促す提案をしている。

私も、いくつかこの中の提案は、ぜひチャレンジして
みたいと思った。ぜひ、読んでみてください。
それではまた、スズセンでした。

====================
編集後記
===================

長い休みが重なって、まとまった時間が
あったので、シリーズもののビデオ鑑賞を
していたら、だんだん体力が衰えてきて
しまったようだ。
(体力もそうだが、頭の筋力ダウン)

そう、人間は、インプットが多い、受け身
ばかりの頭の使い方をしていると、頭の回転も
鈍くなってくるのではないだろうか。

漫画、テレビ、ネットゲームなど受け身の
楽しみは要注意かもしれませんね。

====================