USB扇風機を調速する(USBファンコントローラー)
友人から「USB扇風機をコントロールしたい」という要望がありました。
確かに市販のUSB扇風機の多くはONかOFF、
一部に強弱2段階を備えるものがありますが
自由にコントロール機能を備えるものはあまりないと思われます。
日頃、FAN PARTY(産業用ファンを使う、うちわなしのBBQ)で
+24Vのファンを自由にぶん回す姿を見ていれば
そういう相談が来るのもの頷けます(笑)
○開発目標
・なるべくゆっくり~定格近辺まで、無段階で調整可能なこと
・モデルを特定せず、なるべく汎用的に使えること
具体的には、3~5Vの電圧制御が出来ればよいでしょう。
○どのような方法で行うか
詳細を書くと長くなるので、箇条書きのみで。
(a)可変抵抗を直列に接続してコントロール
○構造がもっとも簡単
○元の5Vを出力することが可能
×電力ロスが大きい
×入手しやすい市販品(~1W)のボリュームでは定格電力が足りないケースあり
×コントロール度合いが種類によってさまざま(消費電流次第)
×制限時、うまく起動できない可能性がある(ラッシュ電流供給不足)
(b)可変ドロッパーレギュレーター(三端子のIC317など)でコントロール
○構造が比較的簡単
○電圧制御なので扇風機の対応モデルが広い
×電力ロスが大きい
×元の5Vを出すことができない(~4.7V以下になる)
(c)降圧型スイッチングDC-DCコンバータでコントロール
○高効率 (ただし定格付近でも一定の変換ロスあり)
○電圧制御なので扇風機の対応モデルが広い
×材料費が若干高い
×元の5Vを出すことができない(制御IC次第だがよくても4.8V以下になる)
(d)昇降圧型のスイッチングDC-DCコンバータでコントロール
○やや高効率 ((c)より変換ロスが大きい)
○電圧制御なので扇風機の対応モデルが広い
○元の5Vを出力することが可能(5V+αも出せる)
×材料費が高い
…(d)が一番メリットが大きいように見えます。
ただ、とりあえず市販品のコンバータを搭載するという目線で考えると
aitendoで売られている昇降圧コンバータ、
「DC/DC昇降圧モジュール [DSN6000AUD]」が税別680円。
結構高いのです。
(c)も検討したのですが(同店の「DC/DC降圧モジュール[M2307]」、税別350円)、
制御電圧を絞ると入力電圧が+1V以上ないとNGであることが判明。
やむを得ず、(d)よりもイニシャルコストが安く、(d)と同等の制御ができる
(e)昇圧型コンバータ+降圧型コンバータを用いる
という、2コンバータで行うことにしました。
賢い方法とはいえませんが、
それでも4V程度で制御しているときはドロッパーよりも高効率と思われます。
○改造
モジュール「M2653」は小型なのが特徴で、
そのまま使うと0.9~17V程度まで制御できる見込み
(降圧型なので、+5VのUSBラインで使う分には、+5V-αが上限)。
※写真真ん中がモジュール。かなりコンパクト。
さて、今回使いたい電圧は3~5Vの範囲。
そのままですとコントロールしたい幅が全体からみると狭く、使いづらいです
(しかもここに搭載されている小型の半固定抵抗は特に操作しづらい(苦笑))。
そこでBBQ用ファンコントローラーで行っている手法と同じく、
半固定抵抗をボリューム+固定抵抗に付け替えて
操作をしやすく&制御範囲そのものを3~5V程度に絞り込む改造をします。
制御ICのM2653はFB端子が0.925Vtyp.の仕様で、
本コンバータのFB-GND間には8.2kΩが接続されています。
最低電圧を約3V、最高電圧を約5V強に設定するなら、
最低電圧時は約18.4kΩ、最高電圧時は約36.1kΩ程度が目標値。
実際に近い値で選定するとすれば、
固定抵抗は18kΩ、ボリューム20kΩといったところでしょうか
(2.96~5.21Vの範囲で調整できる計算、ただし入力電圧>出力電圧+1V)。
今回は前段に昇圧コンバータ(大電流出力可変DC/DCコンバータ[M3608]、税別195円)で
7Vを作ることで、USBながら+5V(USB規格上限に近い5.21V)までフルカバーします。
こちらは固定値のままで運用するので、無改造で7Vに調整しておきます。
入力は片側がTypeAのオスになっている適当なUSBケーブル。
(今回はAオス-miniBオスケーブルの、miniBコネクタ切り落とし)
今回は適当に入手したジャンク品を使用(50円くらいだったかな?)。
なお、ケーブルサポーターはaitendoで50円で売られているものを使いました。
サイズがジャストすぎて、入れるのに大変難儀しました(苦笑)
出力ポートはUSB TypeAのメス。
コネクタは先日の35台目PC用のフロントUSBポートと同じ垂直タイプで30円。
仕組みも同じで、基板を使ってケースに固定します。
基板はこの前使った余り部分を使っています。
今回データ線はまったく使わないはずなので、オープンとします。
固定に関しては可能なら長さ12mm程度の六角スペーサーを使いますが、
そんなに高頻度に挿抜を繰り返すわけでもない、ということで
aitendoの安価なプラスチックタイプを使いました
(長さ10mm(20本で120円)+2mm厚のナット)。
ケースは以前千石電商で売られていた無保証40円のニチフ製のもの。
ちょっと厚みがあり加工しづらかったのですが(^^;)
○とりあえず完成
というわけで、完成品はこちら。
出力電圧はUSB扇風機を回した状態で約3V弱~5.2V弱といった感じ。
※3.17Vは「USB Charger Doctor」の表示下限でとめたもの。
実際にはもっと下がります。
接続の都合上無負荷での確認ですが、以下の範囲となりました。
ぴったり計算どおり。
写真のUSB扇風機は最下限でぎりぎり回転な雰囲気。
ちょうどよい制御範囲となりました。
○注意とお約束
・当然ながらメーカー想定外の使い方です。
本回路を参考に作成したものを使ってUSB扇風機が故障しても責は負いかねます。
・こういった工作には必要に応じて保護回路を追加してください。
・汎用のUSBポート形状は、他のUSB機器を誤接続する恐れがあるのでご注意ください。
こういったアイテムはUSB規格に則ったものではありません。
いかんせんUSBでは(Power Deliveryを除き)電源電圧を出力端で4.75~5.25Vと規定しています。
これをわざと逸脱させるアイテムですから
本来USBを名乗ることも、マークを付けることもできません。
案外便利そうでいて市販されないのは、こういった事情もあるかもしれません
(Groovyの「BIGFAN」用のファンコンスイッチが市販されている程度)。