「うつ病と躁うつ病」  の続き


■観察

 

診断に入ります。新患の例で話してみましょう。新患の患者さんが来ますと、私は必ず廊下に出て、「新患の誰とかさぁん」と呼びます。そうすると向こうから患者さんがこられます。


そのときに、そこがDSMと全然違うんですが、その歩いて来る患者さんが、病院という新しい環境ですから、いろんな初めての人がいますし、私の呼びかけも新しい刺激ですが、そうした馴染みのない状況に、どのように同調しようかと工夫しながら、つまりコミュニケーションのすり合わせをしようというような、たとえば怖い人だったら卑屈にするとか、親しそうな人だったら自分も少し心をオープンにしようとか、そういう自分の態度を決めるために、情報収集のための観察行動をしながら、こちらに近づいて来ている感じがあれば、この人はひょっとしたら双極性障害ではないだろうかと考えます。


そのときはまだ主訴も何にも聞いてません。だからDSMと全然違います。何も聞かないうちに診断が始まっているのです。




(つづく)