前作Teen Dreamが大絶賛を受けた、ボルティモア出身男女デュオBeach Houseの通算4作目。夏のけだるい午後を感じさせるような、ドリーミーなポップを奏でる彼らであるが、今作もプロデューサーに前作と同じクリス・コーディを起用。前作で培ったものをさらに洗練させたような、質の高いポップソングが並んでいる。
ポップソングとは言っても、決して明るいものではなく、ヴィクトリアのややアンニュイな歌声とがっちりリンクするような幽玄性を持ったものだ。メロディーの質もすばらしい。ソローテンポでテイストが似た曲が並んでいるが、アルバムのコンセプトが明確な分、あまり飽きがこない。
そして個人的にはサウンドプロダクションを一番評価している。レイヤーサウンドのデザインセンスが抜群。ギターノイズの歪み、ピアノやドラムの響き、残響音の拡がりなど、かなり緻密に計算されて作られたような感がある。そして、徹底してモノクロームな世界を描くことに見事に成功していると思う。
オープニングのMythのイントロが鳴った瞬間に聴き手のメランコリーにじんわりと侵入し、外界の余計な一切から目を閉じさせ、Lazuriで手を取りダンスに誘い、The Hoursで夜道をあてもなくドライブし、Ireneのアウトロに酔いしれながら、再び覚醒させられる。夢のロードームービーのサウンドトラック、そんな佇まいがこのアルバムにはある。それはもちろん、彼らの真骨頂の世界観でもある。
忙しくて、休みが取れない。でもどこかに行きたい、なんて思っている人は、これを聴いて1時間ちょっとの旅に出るのはどうですか?
★★★★☆(09/08/12)