Odd Blood/Yeasayer | Surf’s-Up

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Surf’s-Up 「またブルックリンかよ!」っていうくらい、最近NY周辺のシーンの充実ぶりは半端無い。おそらく今一番の激戦区であり、それ故にアニマル・コレクティヴ、ヴァンパイア・ウィークエンドやMGMTなどのバンドに共通して感じられるのは、知性の裏側に叩き上げの「タフさ」が見え隠れしているところである。ただの頭でっかちではなく、底なしの想像力とそれを音像化できる知識と技量を彼らは兼ね備えている。

 このYeasayerもまさにその流れにいるバンドの一つだと言えると思う。この「Odd Blood」は彼らのセカンドアルバム。ファーストはもっとアコースティックで美しいハーモニーを生かした作品だったそうだが、セカンドではふんだんにエレクトロを取り入れたリズム・ポップを展開している。


 リードトラックである「Ambling Alp」はアニコレ的万華鏡サウンドの中で、歌ものとして完成度の高いメロディーが鳴っている。サウンド的にはトライバル・ポップなんだけど、とてもエモーショナルに聞こえるという不思議な魅力を持った曲だ。


 また、メンバーが80年代のポストパンクやニューウェーヴに強い影響を受けているそうで、このアルバムでもその志向が随所に見られる。Madder Redでほのかに香る耽美性や、Mondegreenのつんのめり気味のビート感など、まんま再現するのではなくて、一旦自分たちのフィルターを通してから還元している。ただ、もう一つのリードトラックといえるO.N.Eでは、.あっけらかんとしたシンセ・ポップを奏でている。このビート感がなんだかとても懐かしい感じ。若干浮いているように見えるが、これがまたMGMT級の「時代を射抜いている」雰囲気を持った曲となっている。


 音を幾層にも塗り重ねたレイヤーサウンドは、ブルックリンのバンドとしては特に目新しいわけではない。ただ、Yeasayerはエスニックの要素と、きらびやかなシンセなど極めてポピュラーな素材とを上手くレイヤーさせている。なので、一見トライバル・ビートのワールドミュージックかと思うのだけど、サビは明快なポップミュージックだったりする。この辺のさじ加減が実に上手い。アートワークやスタイルから際物のように映るかもしれないが、普遍的な魅力も併せ持った好盤。


おすすめ度★★★★☆(20/06/10)