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【前書き】
連載・ＳＳ仙台泉店物語は、当店をご利用いただいているお客様と、まだご利用いただいていない方にも当店のルーツを知っていただきたく連載を開始しました。不定期ですが、過去から現在までの歩みを物語にして連載を続けてまいります。多くの方に読んでいただければ幸いです。
阿部
スーパースカルプ発毛センター仙台泉店物語
＜過去掲載＞第一章「母の言葉」
第二章「激動」
25歳になった阿部は自己負担額の少ない会社の寮で暮らしながら残業代をタンス貯金し、車界のキャバ嬢と呼ばれる「PTクルーザー」というアメ車を購入するなど、やや羽振りの良い生活を送っていた。しかし・・・ちょうどその頃、行きつけの美容室できつめのパーマをかけた辺りから、前髪が薄くなり、おでこが広くなっている事を気にするようになっていった。その時の阿部には10年後、まさか自分が発毛サロンの店長になっていることなど、夢にも想像することは出来なかった。
順調に見えた歩みだったが、2008年に起きたリーマンショックを機に阿部が務める工場も不況の波にさらされることになる。次第に仕事が減り、毎日午後三時からは床磨き。生活の頼りだった残業代もついには０円。社宅も追い出され、一般のアパートに住まざるを得なくなり、まさに生活が破たんした。そんな時、いつもそばにいてくれたのが結婚することになる彼女だった。貯金も無かった阿部は車界のキャバ嬢と呼ばれるアメ車を手放し「ネイキッド」という中古の軽自動車に乗り換えた。1Ｋのアパートに二人で住み、そして入籍。１日500円以下の食費におさえ、この局面を二人で苦しくも楽しく乗り越えていった。
平成22年年冬。阿部が仙台に越してきてから10年が経過。やがて少し広いアパートに念願の引越しを果たし、そこで長男が誕生した。会社も徐々に復調し、生活もどん底から抜け出していよいよ順風満帆な生活を送って行けると思っていた矢先、あの東日本大震災が発生した。
今まで経験したことのない揺れだった。晴れ間は一瞬で消え暗雲が空を覆い、不穏を告げる季節外れの雪が降ってきた。会社は火事になり怪我人もでた。ラジオから「沿岸部の津波16メール」というニュースが流れたが、その規模と被害を工場の駐車場に避難していた誰もが想像できなかった。実際は阿部の故郷の女川町は17メートル以上の津波に町全体が流され、壊滅状態になった。一方で当時２ヶ月だった長男はお腹も空くはずなのに、なぜか奇跡的に発災翌日まで母親の腕の中でスヤスヤ眠っていた。実家は津波で流され、残った思い出は唯一、何度も踏んだ玄関のタイル。地元の女川町の甚大な被害を目の当たりにし、もはや阿部には自分が被災者という感覚は微塵もなかった。避難所に物資を届け、かたし隊という浸水したお宅のヘドロ掃除のボランティア活動をした。
津波でたくさんの尊い命が失われたが、そこにいる方々決しては負けていなかった。女川の津波で九死に一生を得た阿部の叔父の博は震災をきっかけに蘇生といっても過言ではないほど、輝きを取り戻した。博は女川町で寿司屋をしていたが、経営不振から閉店と離婚。以来10年間もの間、職に就かず母親の年金を頼りに生活していた。そんな中で東日本大震災の津波、80歳になる母親をおんぶし、金網をよじ登ったが、津波の勢いにのまれて母親を離してしまい亡くした。博も腕を縫う怪我をした。発災直後避難所は段ボールの家。避難生活が5日過ぎると、博は次第に誰よりも早く起床して山に沢水をくみに行き、皆の味噌汁を作り、コーヒーを振舞うことを始めた。寿司屋の腕前を発揮して魚をさばき、あら汁をつくり振る舞った。その時の博は甥っ子の阿部の目から見ても、母親の年金をたより働かずにいた時よりも、目が輝き全身が生き生きして見えた。その後、人脈からか鳴子温泉の某有名温泉旅館の料理長として再就職を果たし、いまも腕をふるっている。その姿は昔の「寿司屋のおんちゃん」そのものだった。
自然災害は誰にでも降りかかる可能性があり、自分の力ではコントロールできないものだが、それに屈せずに立ち上がる姿に阿部は底知れぬ勇気をもらっていた。叔父や父親の他人に尽くす姿から「自分も何があっても負けない強さを身に付けたい。」そう強く感じていた。そして「もっと直接人と接し、直接人に喜んでもらえる仕事がしたい」という思いが強くなっていった。
<実家跡玄関のタイルの上にて>
第三章「遺言」
つづく
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自ら発毛の発毛技能士：阿部 正樹
スーパースカルプ発毛センター仙台泉店
【住所】仙台市泉区泉中央1丁目17-5ビルドスマイルⅡ601
【営業時間】10：00～20：00（最終受付18:30)
【定休日】毎週金曜日
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