院政のはじまり 白川法皇
今年の大河ドラマ『平清盛』を盛り上げようと
NHKではあの手この手を使ってはいるけれど
イマイチ成果が上がってないように思う。
この時代、普通でもものすごく面白いのに、
ドラマはそれを生かしきれていないのがなんとも残念。
前半の見どころは、
なんといっても保元の乱・平治の乱なんだけど、
この背景がいかに人間模様のドロドロだったかを
本当に知るにはドラマでは無理かもしれない。
というのも『院政期』は、『男色女色』のオンパレード、
ドラマの女の戦いなんて小さい、小さい。
ホントに怖いのは男の戦い、
というか、いかに法皇のお気に入りになるかなんだ。
そのための切り札が『尻力』なんだね。
かつて北面の武士で文武両道にたけたかの西行法師も確かではないが、
このような傾向があったという。
いえいえ、この時代は男、女の区別はそれほどなく、
出世のために自分の器量をフルに利用するのはごく当たり前だったのよ。
西行法師の歌にはかなり恋愛の歌があって、
尋常な愛の歌ではないのも数多くあるけれど、
男が男を愛するというのは、普通にあったことなので、
今の時代のようにタブー視せずに自然に受けてもらいたい。
さて、保元の乱の発端は以下の対立が一挙に表面化したことからだけど
崇徳上皇VS後白河天皇
摂関家VS関白
武家の対立
この対立に乗じて、頭角を現すのが、後の信西こと藤原通憲。
阿部サダオが演じているが、ちょっとイメージが違うんだな。
藤原通憲は、貴族としては身分が低く
到底出世はできないはずなのに、その才知で鳥羽上皇に気に入られ、
保元の乱では、長らくなかった死刑制度を復活させたが、
貴族にはお咎めなしで、加担した武士だけに死刑執行をしたものだから、
武士たちの恨みを後々まで残すことになったんだ。
つまり、自分より身分の低い者たちのへの配慮に欠けていたことが
後の信西の敗因につながることになるんだね。
親が子を討ち、兄が弟を討つと骨肉の争いになったのもこの男の仕業なんだ。
藤原頼長 別名 悪左府
ちなみに保元の乱で敗北した左大臣 藤原頼長も男色で有名な御仁で、
彼が書き残した『台記』には、自分の色恋の相手の名前や情交の有様などを
克明に記している、非常に貴重な文字通り珍古典になっている。読みたい!
ところが、これほど権勢を振るった信西も
次の平治の乱では、その生首を六条河原にさらすとは思わなかったろう。
彼の才覚も後白川法皇の寵愛を受けた藤原信頼の『尻力』に敗北する。
彼は頭ではなく、尻に負けたのだ。
げに恐ろしいきは尻力なり。
この時の信西の気持ちはいかばかりだったろう。
自分より頭も悪いし、愚鈍だし、
ただ器量だけが数倍優れているというだけで、
彼が長年かけて積み上げきた努力を
木っ端微塵に粉砕されたのだから、
憎さもひとしおだったろう。
清盛もいいけれど、院政期のドロドロは見逃せない。
次回は狭い朝廷内での人間模様を見ていきましょう。