『私の恋人』(上田岳弘著)を読みました。 | ARTS&WORDS

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この記事は2015年3月25日に投稿された記事に加筆・修正を加えたものです。

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こんばんわ。
連休、楽しんでますか?


さて、私は『私の恋人』を読みました。
新潮4月号に掲載されている上田岳弘さんの小説です。


またもすごいスケールで時間が動いています。
冒頭、『あなた方人類』という記述で、宇宙人が出てくるのかと思いましたが、
そうではありませんでした。
主人公である『私』は3回目の人生を生きている日本人です。
1回目はネアンデルタール人、2回目はドイツの収容所で死んだユダヤ人。
前世の記憶が残っているなんて、しかもその前世の記憶も覚えていて、
かつそれぞれが克明がことが不気味です。
そこまでの人なら、周りの人間をずいぶん別人種のように感じるのでしょう。

ずば抜けて頭がよかった、1人目の私は遠い未来の出来事を予見して、洞窟に書き付けます。
彼は人類の未来をみるだけでなく、自分が出会うはずの恋人の姿をも思い描きます。
1人目の私は出会うことがなく、2人目の私も出会うことがなく、
3人目の私になって初めて、もしかしたら、と思える女性に巡り合う。
ここまで書くと、とても濃厚なラブストーリーを想像してしまうけど、そうでもありません。
ちょっと恋愛を匂わせるのは結末くらいです。

この小説は、幸田露伴の『プラクリチ』に似ているのかもしれない。
自分の考えをわかりやすく伝えるために、小説という形態をとる。
この作者が語りたいのは、人類がこれまで歩いてきた過去と、
これから向かう未来の一つの方向性。
小説にしても十分小難しいのだけれど、論文にしてしまうよりはきっとわかりやすい。
この作者は小説家というより、思想家なのかも。
そんなことを読後に考えてしまいました。



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詳細はこちら。
新潮 2015年 04 月号 [雑誌]
私の恋人

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引き続き楽しい連休をお過ごしくださいね。

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