『太陽』(上田岳弘著)を読みました。 | ARTS&WORDS

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この記事は2014年5月28日に投稿された記事に加筆・修正を加えたものです。

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こんばんわ。
今日も1日お疲れ様でした。


さて、私は『太陽』を読みました。
第45回新潮新人賞受賞作です。
本当は単行本になってから記事にしよう、と思ってましたが、
いつになっても出ないので、もういいことにしました。

主人公はどんな人か、というのを書くとわかりやすいのですが、
それが全く書けません。
全ての登場人物が同じくらいのバランスで書かれているような印象です。
しかも、視点がころころと変わります。
ある登場人物が誰かとすれ違う時に、視点はそこでバトンタッチされて
次の登場人物から見た世界や思考を描いていきます。
群像劇、といえばいいのでしょうか?
それもなんとなく当てはまらないような気がします。
もう一つ面白いのは時間軸も安定していないところ。
その登場人物のずっと先の未来を書いたかと思えば、さっきまで見ていた今に戻ってくる。
その登場人物の何代も先に生まれてくる世代の登場人物を時折挟み込んで、
未来の世界を描いている。
要するにごちゃごちゃしている作品です。
それでも、読めてしまうんだから、なお面白い。

冒頭、太陽について書かれます。
太陽のエネルギーは膨大だけど、金を作り出すには至らない。
へぇ、とは思うのだけど、それがどうしてここに書かれたのかがわからない。
しかも、太陽と金がどうしていっしょに書かれているかの意図もわからない。
わからないまま読んでいくと、のちのちの大実験が説明されてくる部分になってきて、
ようやくだから書かなければならなかったのか、とわかります。
それだけじゃなくて、太陽を意識させることで、太陽系の惑星を連想させているような気もします。
出てくる登場人物たちは、
太陽の回りを自分の好き勝手に集まっている惑星のような存在なのかもしれません。
この物語における太陽は、金。
利益とか、欲望とか、そういう言葉でもいいのかもしれない。
そうなってくると、大実験の結果もたらされる結末はとても悲惨。

小難しい部分もありますが、いろいろな示唆を含んでいていい作品だと思いました。



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詳細はこちら。
新潮 2013年 11月号 [雑誌]

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明日もいい日になりますように。

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